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ある意味勇者の魔王征伐~第12章・26話

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敵の真意

「バ、バルガ王……どうして、わたしなどを!?」
 ジャイロスは、自分を助け起こしている相手の顔を、驚きの眼差しで見上げた。

「相手が、強すぎる。貴重な戦力は、戦力は失いたくないんでな」
 バルガ王は、サバジオス騎士団の団長を助け起こすと、剣を構えて間合いを取る。

「ジャイロス団長、これを」
「レーマリア女王より、騎士団長に渡すよう仰(おお)せつかりました」
「聖なる盾・エルスター・シャーレにございます」

 アルーシェ、ビルー二ェ、レオーチェの3人の少女騎士は、かつて所属していた騎士団の団長に、3つの盾を手渡した。

「女王陛下……かたじけない。拾ったこの命、王の盾として使わせていただこう」
 初老の騎士は、3つの盾を合わせて1つの巨大な盾とする。

「ゴメンなさい、ジャイロスさん。わたしが、死に急いだせいで……」
「赤毛の英雄が、死んだのだ。そう簡単に、傷は癒えまいて」

 カーデリアは、自らを庇ったジャイロスに謝罪した。
ジャイロスは、一同の最前列に立って巨大な盾を身構える。

「そう言えば、名前を聞いていなかったな」
 質問をすると同時にバルガ王は、団長の椅子に座った男に向け、黄金の長剣を一閃した。

「名はケイダン。大した名では、無いがな」
 男は切れ長の眼を閉じ、バクウ・プラナティスを振り上げる。

「ヤレヤレだぜ。剣撃自体が、異空間に飲み込まれちまったッ!」
「バルガ王、気を付けて。相手は、ソイツだけじゃないわ」
 冷静さを取り戻したカーデリアが、切り裂かれた空間から現れたトカゲ少女たちを狙撃した。

「ヒギャッ!」「アギャアッ!」
 矢を受け、痛みに悶えるトカゲ少女たち。

 それに乗じ、部屋に居たトカゲ少女たちも、王を襲おうとする。
けれどもその前に、側近2人が立ちはだかった。

「流石は、カーデリアさん。でもコイツらの目を見るだけで、石にされちまうってか!?」
「だが、戦い方は素人だ。石化能力にさえ気を付ければ、どうと言うことは無い!」
 真っ赤な重鎧を着た少女の、湾曲した2つの刀身を持った剣が、トカゲ少女たちを薙ぎ払う。

「きゃああッ!」「うぎゃあ!?」
 トカゲ少女たちの腕や脚が床に落ち、切り口から赤い血液が流れ出た。

「キティの言う通り、マジでこりゃ素人だぜ。戦い自体に、興味が無いみてぇだ」
「油断するな、ベリュトス。まだ相手の手の内が、解らないからな」
 王の側近2人は、互いに警戒し合いながら背中を合わせる。

「ソイツらは、元はしがない村の孤児でな。戦いに関しては、ただの素人だ……」
 団長の椅子に坐したままのケイダンは、再びバクウ・プラナティスを振るった。

「また、トカゲ娘を召喚するつもり。芸がないわね?」
「フッ、期待に応えてやる義務は無いが、新たな芸を見せてやろう」

 ほくそ笑む、ケイダン。
すると椅子の背後の空間が歪み、2振りの剣が出現する。

「な、なんだ。あの剣はッ!?」
「瓜二つの形を、しているが……」
「我々を、刺し貫くつもりか!?」

 剣は2振りとも、禍々しい目の模様が連なるデザインで、色以外は同じに見えた。

「お前たち、我が盾の後ろに隠れよ!」
 ジャイロスの命令で、聖なる盾に身を隠す3人の少女騎士。

「ア、アレは……シェリーの魔眼剣『エギドゥ・メドゥーサス』。それに……!?」
 異空間から顔を覗かせた剣に、カーデリアは見覚えがあった。
2振りの剣は、彼女の顔の真横を突き抜けて、少女たちを差し貫く。

「ギャアアアアッ!?」
「グエエエェェッ!!」
 えげつない悲鳴を上げて、のたうち回る少女たち。

「オ、オイオイ、キティ。どう言うコトだ。なんで、味方のハズの少女たちを!?」
「知るか、こっちが聞きたいわ」
 2人の側近の前で、トカゲ少女たちが剣に貫かれていた。

「カーデリア・アルメイダ。オアシスの戦いに立ち会ったお前は、知っていたな。もう1振りは、『エギドゥ・エウリュアレース』。これで、オレの目的が解っただろう?」

「ええ、理解したわ。アナタの目的が、『天下七剣(セブン・タスクス)』ってコトをね」

 バニッシング・アーチャーは、敵の真意を理解した。

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