パテラ
「パレアナ……と呼んでイイのか解らないケド、キミはボクの言うコトしか聞かないのか?」
舞人は、幼馴染みソックリの重機構天使(メタリエル)に問いかける。
『はい。わたしの役目は、アト・ラティアの血に連なるモノの役に立つコト。一般の人間や他種族の命令など、聞く必要もありません』
栗色の髪の少女は、顔色1つ変えなかった。
「ヤレヤレじゃの。それでは妾たちからの質問は、ご主人サマを介してしなくてはならんのかぇ」
「なんだか、面倒くさい話だね。パレアナって、こんな感じのコなの、シェリー?」
「いいや、もっと明るくて面倒見の良い娘じゃよ、スプラ」
漆黒の髪の少女と、黄緑色のショートヘアの少女は、同時にパレアナを見る。
そこには、人形のように硬直した少女の顔があった。
「な、なあ、ラ・サ。なんだかその顔だと、違和感アリアリなんだケド、他の姿は取れないのか?」
『ご要望とあらば』
舞人のリクエストに、パレアナの栗色の髪の毛が、漆黒へと変化して行く。
「なんと、妾になりおったぞ!?」
冷静な顔と、驚きの顔、2つのルーシェリアが見つめ合ってる。
「うわあ、今度はボクになったよ、このコ!」
アワアワした口のスプラが、自分と瓜二つな顔を覗き込んでいる。
「他のコと同じにしか、できないの。例えば、パレアナの髪の色や形を変えるとか?」
『可能です。どんな髪を、ご所望でしょうか?』
いつの間にやら、流暢(りゅうちょう)な言葉で喋るラ・サが、舞人に問い掛けた。
「そうだなあ。パレアナの髪を後ろ1本のお下げにして、髪色は白にしてみたらどうだろう」
『こんな感じですか?』
髪の毛だけが流体金属に戻り、純白色の三つ編みが背中に垂れる。
「ウム、かなり印象が変わったの。瞳の色も変えるのも、有りじゃと思うぞ」
「そうだね。瞳の色って、変えられるかな。紫色とか?」
『了解です』
ラ・サの瞳が、グリーンからパープルへと変化して行く。
「髪が白ならさ。肌は、ココア色とか良いんじゃない?」
「ココア色の肌か。どう、出来る?」
『問題ありません』
パレアナのキメの細かい肌が、綺麗なココア色へと変化した。
純白のお下げを背中に垂らし、ココア色の肌に紫色の瞳をした少女が完成する。
「こうして見ると、もうパレアナとは別人だね」
「そうじゃな。して、名前はなんとする?」
「ここまで変っちゃうと、パレアナでもラ・サでも無いかも」
「じゃあ、パテラでいいかな?」
「ご主人サマは、相変わらずテキトーに決めるのォ」
「ダーリン、もう少し考えた方が……」
『わかりました。この姿のときは、パテラと名乗ります』
ルーシェリアとスプラの心配をよそに、パテラはあっさりと納得する。
「ちなみにパテラは、重機構天使(メタリエル)と呼ばれる種族じゃったの。天使と言うのであれば、羽根はあるのかえ?」
「どうだろ。パテラ、キミに羽根ってある?」
『もちろん、ございます』
パテラは、背中から2枚の金属の翼を出した。
「アレ、2枚なんだね。トゥーラ・ンは、6枚だったのに」
『わたしは、トゥーラ・ン様に従属する者。羽根は、2枚との制約がございます』
「なるホド。天使って言っても、色々と階級があるんだな」
舞人は、腕を組んで納得する。
「ところでパテラって、強いのかな?」
「どうじゃろうな。ご主人サマよ、聞いてはくれぬか?」
「わかったよ。キミって、戦えるの。もし戦えるなら、どれくらい強いのかな?」
『わたくしは、サポートタイプのメタリエルですが、戦闘もある程度はこなせます。少なくとも、メガトン・ギガンティックスよりは強いかと』
「メガトン・ギガンティックスとは、もしや……」
「アト・ラティアの宮殿地下に居た、大きな巨人のコトなんじゃない?」
「そ、そうなの?」
『はい、その通りです』
純白の髪の少女は、ゆっくりと頷いた。
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