ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第12章・16話

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1万年のタイムトラベル

 舞人たちは、カル・タギアの政治中枢として機能し始めた、御殿に赴(おもむ)いていた。
パテラと名付けられたラ・サを、シドンやギスコーネに紹介する為だ。

「何とも、興味深い話だな。この娘が、アト・ラティアが生み出した重機構天使(メタリエル)と呼ばれる、超兵器とはな……」
 若き海洋生物学者であるシドンは、褐色の肌に白い髪の少女をマジマジと観察する。

「だが話を聞けば、敵とも味方とも付かない中立的な立ち位置の重機構天使の、部下なのだろう?」
 バルガ王の実弟であるギスコーネが、パレアナとそっくりな少女に疑念を抱いた。

「懸念を持つのは、解るがの。戦力になるのであれば、それに越したコトはないのじゃ。悪いがご主人サマよ。その辺りのコトを、詳しく聞いてはくれぬか?」

「わかったよ、ルーシェリア。パテラ、キミはボクたちの味方なのか?」
 ルーシェリアの提案通り、パテラに問い掛ける舞人。

『わたしは、トゥーラ・ン様にお仕えする従者。トゥーラ・ン様のご命令によって、アナタにアト・ラティアの知識を与える役割を得ました』

「つまり、トゥーラ・ンって重機構天使の命令が解除されれば、ボクの元を去るってコト?」
『その通りです』

「じゃあ、命令が解除されるまでの間は、ボクたちの味方で居てくれるのかな?」
『わたしは、舞人さまの危機は救うつもりですが、他の者たちの生命を守る義務は負っておりません』
 パテラは、悪びれもせずに答える。

「ボクたちがピンチになっても、助けてはくれないのか」
「フムゥ、残念じゃが仕方あるまいの」
 スプラとルーシェリアは、ため息を付く。

「やはり、戦力としては到底考えられないな」
「イヤ、そうでもありませんよ、ギスコーネ」
「なに、どう言うコトだ、シドン?」

 海底遺跡では敵対していたシドンとギスコーネも、カル・タギアの内政財務をこなすウチに、気の知れた仲となっていた。

「端的に言えば、因幡 舞人と組ませれば、戦力に成りうると言うコトだ」
「なるホドな。しかしこの少年が、重機構天使とやらを遣いこなせるのか?」
 ギスコーネの訝しげな瞳に、蒼い髪の少年が映る。

「この者の実力は、アナタも知っているでしょう。我々が無事に天空都市から帰還できたのも、彼の力に寄るところが大きい」
「確かにな。これは、失礼をした」

「い、いえ……」
 ギスコーネに謝罪された舞人は、恐縮した。

「それよりも、わたしとしてはパテラの持つ、アト・ラティアの知識の方に興味を持っている」
「流石は、学者と云ったところじゃの」
「ねえ、ダーリン。代わりに、聞いてあげたら?」

「そ、そうだね。じゃあパテラ。アト・ラティアについて、教えてくれるかな?」

『解りました。ですが、知識を授けるのはアナタだけとなります』
 そう告げると、パテラは舞人の首筋辺りを右手で触る。

「うわ、なんだ……これ!?」
 舞人の脳裏に、かつてのアト・ラティアの情景が浮かび上がった。

 海原に浮かぶ宮殿を中心に、同心円状に広がる海洋都市。
広大な領域には、均整の取れた白い建物が立ち並ぶ。

「こ、ここは……もしかしてボクは、宙に浮かんでいる!?」
 舞人の意識は、街の上空に浮かんでいた。
自分の手足を見ると、薄っすらと透けている。

『はい。ここは、1万年前のアト・ラティアの街です』
 声のする報を見ると、パテラも宙に浮かんでいた。

「やはり、そうか。1万年も前なのに、ここまで国が発展しているなんて……」

 街の海に近いエリアには、白い風車が羽を回している。
街の中心には、天を突くような巨大な建物が、まるで世界樹のように聳(そびえ)えていた。

『まだ平和だった頃の、繁栄を謳歌している時代のアト・ラティアです』
 重機構天使の慈愛の瞳が、下界の様子を伺う。

 街の通りを、元気に走り回る子供たち。
飲食店では、女性たちが井戸端会議に花を咲かせている。

「まるで、理想郷じゃないか……」
 古びた教会に育った舞人は、本音を吐き出した。

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