ラノベブログDA王

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キング・オブ・サッカー・第六章・EP037

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鉄壁の黒蜘蛛

「すまない、千葉。お前にパスを送ろうとも、考えたんだが……」
 ゴールを決めた桃井さんが、千葉委員長となにやら話してる。

「イヤ、まずはチームの勝利を優先すべきだ。お前の判断は、正しい」
「相変わらず、生真面目なヤツだな。だがお前は先パイたちに、後半だけでハットトリックを決めると豪語したんだ。無得点じゃ、終われんだろう?」

「もちろん、終わるつもりは無いさ。相手のキーパーは、伊庭に比べればかなり劣る。ボールさえ入れてくれれば、決めて見せる」
「そうか。ならばボクも、全力でお前にボールを送ろう」

 2人の1年生プレーヤーは、それぞれのポジションに向かって走り出した。

「クッソ……スマンな。オレが、PKを止められたばかりに、カウンターになっちまって……」
「いえ、あのコースを止められたのですから、相手キーパーを褒めるべきでしょう」
 落ち込む紅華さんを、勇気付ける柴芭さん。

「しっかし控えキーパーのクセに、凄まじい反応スピードだったよな?」
「そうでありますな、黒浪隊員。前半の小柄なキーパーも、かなりの反応スピードでしたが、後半のキーパーはそれに加え、手足が長く背も高いであります」

「ですが、出来る限り早く彼を攻略しないコトには、ウチが勝つ術はありません」
「まあな、柴芭。こっちのキーパーは、メタボコーチだからなァ。何点取られるか判ったモンじゃない。こりゃ、骨が折れるぜ」

 ため息を吐く、紅華さん。
中盤にいるハズの雪峰キャプテンが、議論に加わらなかったコトもあり、デッドエンド・ボーイズは大した結論も出さずに、試合を再開した。

 今日、何度目かのホイッスルが鳴り響く。

「やっぱカズマは、ポジションチェンジを伝えてないね。なんで雪峰が、最終ライン下がってるよ?」
 ベンチでは、セルディオス監督が倉崎さんに、怒りをぶつけていた。

「アイツは喋るの、苦手ですからね。ですが今後、こんなシチュエーションの試合もあるかも知れません。アイツらの、対応力に期待しましょう」

「今度は、オレが仕掛ける。行くぜ!」
 ピンク色の長い髪を振り乱し、技巧派ドリブラーが敵陣に斬り込む。

「紅華、キミの進入は許さない。ボランチのボクが止める!」
 桃井さんが、ピンク色の髪を揺らしながら進路を塞いだ。

「そうかよ、ンじゃ抜くの止めるわ」
 紅華さんは直ぐに、桃井さんとの勝負を放棄してボールを左に叩く。

「オッシャ、もっかいワイが、決めたるでェ!」
 左のサイドライン際でボールを受けた金刺さんは、再び相手の右サイドバックを抜く。
今度は中には入らずに、ライン際を切れ込んだ。

「倉崎、相手はあのモモノイってボランチが抜かれると、厳しいみたいね?」
「岡田と1年のツートップは言うに及ばず、仲邨も守備しませんからね。他の中盤の選手も弱いし、彼にかかる負担はかなりのモノですよ」

「倉崎、彼らはそれに気付くと思うね?」
「気付いているからこその、紅華のプレーだと思いますよ」
 メタボ監督の質問に、剣道の面を被った少女が押す車椅子に乗った、倉崎さんが答える。

「なるホド、彼は相手の弱点付くセンスあるね」
 結局のところ、ボクたちがチャンスを作れているのも、紅華さんが相手のウィークポイントを上手く利用しているからだった。

「ほな、センタリングや!」
 金刺さんが、マイナス気味のクロスを上げる。
ゴール前には、紅華さんと黒浪さんが飛び込んでいた。

「……あ!?」
 けれども、上ったボールはあっさりと、伊庭さんにキャッチされてしまう。

「あの高さを、届いちまうのかよ!」
「このキーパーやっぱ、守備力ハンパ無いぞ!」
 ボールを受けれなかった2人のドリブラーが、互いに顔を見合わせ嘆いた。

「来い、伊庭!」
 前線で、千葉委員長が手をあげた。

「マ、マズイで、またカウンターや!?」
「こんな弱点の無いキーパー相手に、これ以上得点されたら……」
「グダグダ言って無ェで、いいから戻れ、駄犬!」

 今度は金刺さんも、黒浪さんも、紅華さんも、必死に自陣に向って走っている。

「ウス……!」
 黒蜘蛛キーパーのパントキックが、大きく空へと舞い上がった。

「ア、アレ……?」
 荒れたグランドの隣に併設された、立派な野球場の方を見る黒浪さん。

 伊庭さんの蹴ったボールは真横に跳び、並木道を超えて野球場の方へと転がって行った。

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