ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

キング・オブ・サッカー・第五章・EP028

f:id:eitihinomoto:20191113233812p:plain

狩里矢の猛攻

「……っしゃあ。ナイスゴール、忍塚!」
 新壬さんが、ロングシュートを決めた選手に駆け寄った。

「ふうんッ!!」
 背中を向け、筋肉をアピールする……シノズカさん?

「だ、誰だよ、あの筋肉ダルマは!?」
「後半から出てきて、いきなりとんでもないシュートを決めちまったぞ」
 紅華さんも黒浪さんも、驚いている。

「彼は、忍塚 繁浩(しのずか しげひろ)。狩里矢ユースの選手で、学年は1つ上になるな。ちなみにあのポーズは、バックダブルバイセップスと言うらしい」

「誰もそこまで、解説求めてね~よ、雪峰」
「しかし、これで1点差だ。何とか流れを変えねば……」

「ま、あの筋肉量だ。横の動きには、弱いんじゃねェのか?」
 センターサークルにセットされたボールが、足元に来ると同時に仕掛ける紅華さん。
左サイドに出て、右に入った忍塚さんと対峙する。

「チャラついたピンク頭が、骨ごと砕いてくれるわ!」
「はあ? 筋肉ダルマにオレが負けるハズね~だろ」
 華麗なダブルタッチが、忍塚さんを瞬時にかわした。

 紅華さんが言った通り、自慢の筋肉が災いして横の動きに弱い忍塚さん。

「雪峰の言う通り、後半早々に1点差だ。ここで決めて、突き放さね~とヤバいぜ」
「フウ、残念だケド、ここは通させない……」
 紅華さんの前に、後半から入った大柄の選手が立ちはだかる。

「彼は、湯楽 伴茂(ゆら ともしげ)。やはりユース上がりで、ボランチとの情報しか無いが……」
 雪峰さんの頭脳のデータベースと言えど、完全では無い。

「はあ? うすらデカいだけのヤツが、オレのドリブルを止められるかっての!」
 今度は、エラシコで相手を抜きにかかる、紅華さん。

「メンドクサイなあ……」
 紅華さんが相手を大きく振り切って、左横を抜けようとした瞬間。

「なにィ!?」
 長い脚が、紅華さんからボールを絡め捕った。

「ピンク頭が、ボールを取られたァ!?」
 前線でボールを待ってた黒浪さんが、慌てて戻る。

「見れば、あのリーチの長さ。手も脚も、かなりのスパンでありますな」
「そうだね、油断せず行こう!」
 杜都さんと柴芭さんが、湯楽さんの出方を伺った。

「後は任せたよ、旗」
「へ?」
 けれども湯楽さんは直ぐに、隣に居た選手にボールを叩く。

「オイオイ、湯楽。自分で攻め上がってもいいんだよ」
「イヤだ。あんま動きたくない。旗に任せる……」
「相変わらず、仕方のない人ですね。あなたに普通の運動量さえあれば、かなり優秀なボランチに……」

「あんな、油断し過ぎちゃうかぁ?」
 ボールを渡された旗さんに、金刺さんがスライディングタックルを仕掛けた。

「うおっとぉ、危なッ!?」
 寸でのところで、ボールを脚で挟んで上げてかわす、旗さん。

「そう言えば今は、試合中でしたね。九龍!」
 旗さんも、九龍さんにボールを預けた。

「なんや、自分だって人に……うあ、もう走っとるでェ!?」
 金刺さんが、チームに注意を促す。
九龍さんは、ダイレクトで旗さんにパスを折り返した。

「マズい、ワンツーで抜く気……」
「間に合わな……」
 右のスペースに出されたボールは、2人のボランチを置き去りにする。

「センターバック、新壬にマークだ!」
 雪峰キャプテンの指示が飛び、龍丸さんと野洲田さんの2枚が、エースストライカーの新壬さんに張り付いた。

 雪峰さんはそのまま、九龍さんのマークに着く。
ボールを持ってる旗さんには、ボクが行くしか無い!

「マークが来る前に、クロスです」
 ボクのチェイシングより早く、クロスが上がってしまう。

「よし、ペナルティエリアから逃げてく、マイナスのボールだぜ!」
「ナイス、プレッシャーだ、一馬。後は、任せろ」
 雪峰さんと九龍さん、両チームのキャプテンが激しくヘディングを競り合った。

「フフッ、ナイスクロスだ、旗!」
「……なッ!?」
 けれどもボールは、2人の上を越えてしまう。

「疲れるケド……これで同点だよ」
 手も脚も長い選手が、その高い長身で大きくジャンプした。

「ふわぁあああ!?」
 海馬コーチが慌てて反応するものの、山なりのヘディングシュートはゴール左隅に決まってしまった。

 前へ   目次   次へ