ラノベブログDA王

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キング・オブ・サッカー・第五章・EP027

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四天王+1

「ナイス采配だぜ、監督。コイツらの実力は、ユースのチームメイトとしてオレが保証しますよ。実戦経験こそ足りねーが、将来の狩里矢の中盤はコイツらのハズですからね」

 新壬さんが、監督に向かって胸を張った。

「お前に保証されたところで、なんの安心感も得られねえんだが?」
 腕を組んで、ため息を吐き出す監督。

「まあ、そう言いなさんなって、監督。コイツには後半、ハットトリックを決めさせてやっからよ」
 後半、交代で試合に出ることになった4人のウチの1人が、豪快な口調で言った。
彼の全身は、鋼の様な筋肉で覆われている。

「随分と頼もしい台詞だな、忍塚。だが、それでは最低限だな」
 口ひげを撫でながら、他のメンバーに目を移した。

「ボクたちにも、点を取れってコトですね。わかりましたよ、監督。ほら、よしよし」
 栗色の髪の少年が、秋田犬をもモフモフと撫でながら返事を返す。

「よしよしじゃねーよ、旗。何でグランドに、犬連れてきてんだよ!」
「獅牙丸は小っちゃい頃からの、ボクの練習相手っだったんですよ。ホラ、ドリブルも上手いでしょ」
「うお、確かに犬にしちゃあ……って、そう言う話じゃなくてだなあ!」

「フウ、朝っぱらから、そんなに大きな声で怒鳴らないで下さいよ」
 背の高い細身の男が、精気の無い目をしながら気だるそうに言った。
肌は青白く、黒髪が長く伸びている。

「あ、何言ってんだ、湯楽。もう昼時だぞ?」
「日が出てるウチは、朝です。ま、試合に出られるんなら働きますケドね」
「何だか、やる気の無いヤツだなあ。大丈夫か、お前?」

「心配ねーっスよ、監督。湯楽は昔から、極度の低血圧で朝が苦手なだけです。夜には、鬱陶しいきらいに元気になるんで」
「どこが心配無いなんだ。夜に覚醒しても、意味無いわ!」

「監督。兄上の言われるコトは、正しいと思います」
 ダークブラウンの、おぼっちゃまカットの少年が監督に盾突く。

「兄って、新壬のコトか。だがお前は、湧矢だろう?」
「はい。ボクと兄上は、両親が離婚してしまった為に、別の姓を名乗っているのです」
「初耳だな。複雑な、家庭の事情ってヤツか」

「ボクは裕福な母親の実家で暮らせてますが、アルコールに溺れた父に引き取られた兄上は、それはもう苦労されて」
「イヤ、たまに酔っぱらって暴れるが、そこまでじゃねーよ。ま、上にはのし上がらないとだがな」

「なんだかやけに、個性的な奴らが揃ったな」
「でも、実力は確かっスよ。九龍、忍塚、旗、湯楽は四天王なんて呼ばれてますからね」

「誰も呼んでねーだろうがよ、新壬!」
「勝手に呼んでるの、キミだけですよね」
「フウ、恥ずかしいから止めてね、絶対」

 忍塚さん、旗さん、湯楽さんに全否定される、新壬さん。

「恥ずかしくねーって、カッコイイだろ!」
「オイ、後半始まるぞ。さっさと来い!」
「待てよ、九龍。なんか、怒ってないか?」

 練習用の試合場に、両チーム合わせて22人のメンバーが戻る。
スコアボードには、4-2の数字が並んでいた。

「オイ、見ろよ。相手は4人も、メンバー交代して来てるぜ」
「中盤、総とっかえかよ。それで、ゲーム作れんのかあ?」
「こりゃお相手はん、練習試合と割り切っての交代やないか?」

 黒浪さん、紅華さん、金刺さんは、そう予測した。
……果たして、本当にそうなんだろうか?

「なあ、新壬。こっから狙ってみても、構わねえか?」
「ああ、忍塚。度肝を抜いてやれ」
 ホイッスルが響き、後半戦が始まる。

 センターサークルで、新壬さんが1メートルくらい右にボールを出した。
そこに、後半入ったばかりの選手の一人が、走り込む。

「うおおりゃ、喰らいやがれェ!」
 全身の筋肉が、ボールを蹴る為だけに機能する。
軸足を、ボールのかなり前に踏み込んで、大きく右足でインパクトした。

 ……この蹴り方、前に倉崎さんがやっていたヤツだ。
ボクや杜都さんが、スライディングでシュートを防ごうと脚を伸ばす。

 けれども長い時間インパクトされたボールは、高速でグランドを突き抜けゴール左側に決まっていた。

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