ラノベブログDA王

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一千年間引き篭もり男・第05章・53話

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愚かな英雄

「デイフォボスさん……貴方まで、操られているんですか」

 黒いサブスタンサーは、黒いバケツの様な兜に、漆黒のプレイトメイルといった出で立ちで、巨大な盾を持っている。
各所に金色のエングレービングが施され、小惑星パトロクロスの領主に相応しい、荘厳な機体だった。

「フッ、まあ似たようなモノだな。わたしはイーピゲネイアさまに、忠誠を誓ったのだ」
 ランスを構えると、その先端から螺旋状のドリルのような光が発生する。

「ど、どう言う……」
「行くぞ、古(いにしえ)の少年!」
 黒き英雄は、ただ一直線にゼーレシオン目掛けて突っ込んで来た。

「パパ、油断しちゃダメだって」
「狙撃が、跳ね返されちゃう!?」
「パパ、避けてェ!」

 ウィッチレイダーたちの狙撃は、螺旋状の光によって跳ね返され、突進の勢いは止まらない。

「ぐわああああぁぁぁlッ!?」
 ボクは咄嗟に盾を構えて防御するものの、巨大な質量の高速での突進は、ゼーレシオンを遥か後方へと跳ね飛ばした。

「この『ヘクト・ライアー』の突進を耐えるとは……だが、次は粉砕してくれようぞ」
 黒いサブスタンサーがランスを手に、再び突進の構えを見せる。
するとその背後に、アルティミア・カリストーが立った。

「お待ちさない、デイフォボス。どうして貴方は、わたくしの味方をするのです?」
 狩りの女神は、新たな光の弓を構え娘たちをけん制しつつも、問いかける。

「わわ、予備の弓を持ってたぁ」
「でも、なんか揉めてるみたい」
「ど、どうする、パパ」

「迂闊には飛び込むなよ、お前たち。しばらく様子を見るんだ」
 街の地面に叩き付けられた巨体を引き起こし、ボクは娘たちの元へと急いだ。

「わたくしは、貴方を殺そうとしたのですよ。あなたは純粋なる人間であり、反乱を起こしたアークテクターとは、敵対関係にあるハズ。貴方の行動は、理解に苦しみます」

「それは、亡きアガメムノン会長より仰せつかった、わたしの使命だからです」
「アガメムノンなどと……あの男は、わたくしを停止させようとしたのですよ」

「ええ、ですが会長は、こうも言っておられました」
「あの男が……一体、何を?」

「もし、わたしに何かあった時は、イーピゲネイアを頼む……と」

「な、何を言っているのです。あの男が、その様な台詞を言うハズが……」
「恐らくは、自分が殺される可能性をも、考えられていたのでしょう」

 2機のサブスタンサーの間で、何かやり取りがあるのは見て取れた。
けれども会話の内容までは、ゼーレシオンの触覚ですら感知できない。

「何故です。人間は、アーキテクターを道具としか見ない、愚かでエゴの塊のような生き物のハズ」
「その通りですよ。だから知らない大勢の人間が死んでも涙も流さない会長が、身近なアーキテクターは愛でて止まなかったのでしょう」

「そんな……そんなコトが。どこまで愚かなのです。人間と言う生き物は」
 狩りの女神の弓が、下に降ろされる。

「パパ、アイツ油断してます」
「今のうちに、やっつけちゃお」

 中距離攻撃機のストローティカと、遠距離狙撃型機のソーダティカの、24機の全ての砲門が発射体制に入った……その時。

「やらせはせん!」
「我らアマゾネスは、イーピゲネイアさまをお護りする!」
 立ちはだかったのは、26機の小型のサブスタンサーだった。

「わああ、何なの、コイツら」
「アマゾネスって、パパたちが倒したんじゃなかったの?」

「そのハズだが、身体を換えてリスポーンしたってところじゃないかな、ペンテシレイアさん」
「大した状況分析能力だ。確かに人間にしては、優れている」
 アマゾネスの1機から聞こえたのは、ペンテシレイアさんの幼い声であった。

「アレ。なんだか声が、子供っぽいって言うか?」
「まだ育成過程の身体を、無理やり引っ張り出して来たのでな。だが、これで反撃委くらいはできる」

 この時代のアーキテクターは、身体が失われても、記憶を新たな身体に完全に移行できるらしい。
宇宙の藻屑と化したハズの26人のアマゾネスたちは、スペックダウンはしているものの、新たな身体を得たのだ。

「これで、新たなるトロイア戦争の役者は揃ったな、古の少年」

「戦争の、フィナーレと行きましょうか……」
 ボクは、フラガラッハを身構えた。

 

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