ラノベブログDA王

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一千年間引き篭もり男・第05章・55話

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ブリューナク

「な、何なのです、アレは!?」
 人工太陽の浮かぶ、小惑星パトロクロスの内側に作られた街の空。

「わ、解りません。ですが……」
「とてつもない高エネルギー体であるコトは、間違い無いかと」
 そこに出現した、もう一つの光の球に皆が驚愕する。

「そんなコトは、解かっています」
 幼い身体となった2人のアマゾネ女王の答えに、不満を見せる狩りの女神。

「アレが……『時の魔女』の兵器だと言うのですか」
「思えば、アーキテクターの生み出した艦隊やサブスタンサーに、対抗しうる兵器の数々」
「一体、時の魔女とは何者なのでしょうか?」

「確かにもっとそこに、留意して置くべきでした」
 後悔の念を吐露する、アーキテクターの首領。
その間にも光の球は、大きさを増していた。

「これが……『ブリューナク』だッ!!!」
 ボクは、ゼーレシオンの左腕の盾が生み出した光の球を、敵に向かって放つ。

「うわああッ!?」
「ひ、光の球が追って……来るだと!」
 最初に餌食になったのは、娘たちと交戦中のアマゾネスたちだった。

「グッ、グオ!?」
「きゃああああーーーーッ!!」
 激しい光の渦に薙ぎ払われ、次々に破壊される無人の機体たち(マリオネッター)。

「やったぁ、パパ!」
「スゴイ、スゴ~イ」
「敵がドンドン壊れてくよ」

 光の球は、敵を一通り片付けると、再びボクの真上へと戻ってくる。

「バ、バカな……!?」
「アレほどの威力のある高エネルギー体でありながら、制御されていると言うのか!?」

 驚きを隠せない、ヒュッポリュテーとペンテシレイア。
光の球は、盾から伸びるプラズマのスパークによって、コントロールされていた。

「悪いがこれで、終わらせてもらう」
 ボクは、再び神の雷(いかずち)を振り下ろす。

「終わりなど、しません!!」
 アルティミア・カリストーが、光の球の強襲を阻止しようと光の弓を放った。
けれども光の矢は、ブリューナクにあっさりと飲み込まれてしまう。

「マ、マズい。このままでは、イーピゲネイア様が……」
「我らが女神を、お護りせねば!!」
 光の球の前に身を晒す、アマゾネス女王のマリオネッター。

「グッ……グワアアッ!?」
「きゃああああーーーッ!!」
 その忠孝も虚しく、ブリューナクは容赦なく2機を破壊し消滅させる。

「こ、こんな……コトがッ!?」
 猛威を振るう光の球は、狩りの女神へと差し迫った。

「わたくしの野望も……ここまでですか……」
 光に飲まれる、アルティミア・カリストー。
女性的なフォルムの美しい機体が、白い光に消えて行く。

 戦争は、終わった。
創造主である人間に対する反乱を起こした、アーキテクターたちのトロイア戦争は、ここに終結する。

 ゼーレシオンの元へと戻って来た光の球は、徐々にエネルギーを拡散させやがて消滅した。

「パパ、やったね」
「勝った勝ったァ」
 無邪気な声は、触角を失ったゼーレシオンでも捉えるコトができた。

「ねえ、おじいちゃん。聞える?」
「ああ、聞えるよ、セノン」
 彼女の柔らかい声を聞いて、平和が戻ったコトに少しだけ安堵する。

『艦長、パトロクロスの中枢システムの、制圧を完了致しました』
「そうか、ヴェル。イーピゲネイアさんは、どうなった?」
 ボクは、MVSクロノ・カイロスが誇る優秀なフォログラムに問いかけた。

『中枢システム及び、管理システム。あらゆるネットワークから、彼女の痕跡を完全に排除致しました』
「イーピゲネイアさんは……完全に、消滅してしまったのか……」

 彼女は純粋に、人間のエゴによって破壊されるアーキテクターを哀れみ、創造主に怒りをぶつけるかたちで反乱を起こす。
そんな彼女の想いを、ボクは否定するコトなど出来なかった。

『お気をつけ下さい、艦長。まだ、敵機の反応がございます』
「な、なんだって……!?」
 ヴェルダンディの言葉を受け、ボクは周囲を確認する。

 倒壊したビルに破壊された道路、あちこちから立ち昇る黒煙の柱。
それらの中から、宇宙港へと続いてしまった巨大な穴の付近に、ヘクト・ライアーの姿があった。

「ア……アレは?」
 ズタボロとなった黒き英雄のサブスタンサーは、狩りの女神の残骸を大事そうに抱えていた。

 

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