ラノベブログDA王

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一千年間引き篭もり男・第05章・52話

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ウィッチレイダーたちの猛攻

「何を泣いているのです。同胞である人間が死んで、哀しいのですか?」

「当たり前じゃないか。みんなこの小惑星で、普通に暮らしている人たちなんだ」
「それでは貴方は、同じ涙をアーキテクターに対しても流せますか?」
「ペンテシレイアさんも、大事な仲間だった。キミだって、争う必要なんて……」

「結局のところ、貴方の好みでの判別でしょう。人間は、自分に近しい者を大事にし、そうでない者に対しては無慈悲なのです」
 狩りの女神は、人の形をした猟犬たちを、ゼーレシオンの周りに纏わり付かせる。

「力の無い人間は、よく権力者を引き合いに出しますが、それは誰しもがそうなのです。犬や猫などの身近なペットが死ねば涙を流し、ニュースで大勢の人間が殺されても平然としていられるのです」

「そうかも知れない。イヤ、多分それが正解なのだろう。でもそれって仕方のないコトじゃ……」

「仕方なく、我々アーキテクターは宇宙の藻屑になって来たのですよ。支配者だった人間にとって、我々アーキテクターは犬や猫以下の道具に過ぎなかったのです」
 狩りの女神は容赦なく、ゼーレシオンに纏わり付く人間を、光の矢で消滅させて行く。

「止めろ、止めてくれ!」
「わたくしにとっては、貴方に纏わり付く人間こそが、羽虫以下の存在なのですよ」
「もう、無理なのか。キミたちアーキテクターは、人間の友達には……」

 すると、ボクが侵入に使った宇宙港から、大きな破壊音がした。
そこから、無数のサブスタンサーが飛び出してくる。

「パパァ、助けに来たよ」
「言うコト聞かないアーキテクターなんて」
「さっさとやっつけちゃお!」

 街の上空に現れたのは、ウィッチレイダーたちの60機もの機体だった。

「お前たち、来てくれたのか」
「あったり前でしょ。大事なパパなんだから」
「1人で突っ込むなんて、無茶し過ぎなんだよ、もう」

「め、面目ない」
 娘たちに怒られる、父親であるボク。

「イーピゲネイアさんは、人間を操って攻撃させ、その隙を突いて狙撃して来ている」
「そっかそっかぁ」
「コミュニケーション・リングが、ハッキングされちゃったんだね」

「アフォロ・ヴェーナーは使えないか。あの機体なら、逆にハッキングを……」
「残念だケド、ムリ」
「派手にやられちゃって、ジャミング機能のとこが壊れたんだって」

「そ、そうか……」
「でも、心配ないよ」
「人間を、元に戻せばいいんでしょ?」

「まあ、そうなんだが……やれるのか?」
「わたしたちの、マスカッティカなら」
「簡単、簡単ン!」

 マテアやマテカ、ステアたち、マスカット色のポニーテールの12人が駆る、12の機体から次々にリングが飛ばされる。

「そうか、フォトンリング。確か、敵機に張り付いてジャミングが出来るんだったな」

「思い出したァ?」
「とーぜん、人間に直接張り付くワケには行かないケド」
「アイツのハッキングを、遮断すればいいんだよね」

 空中や地上に展開したリングは、その付近の人間たちをイーピゲネイアの支配から解放した。
マテアたちは逆に操った人間たちを、ゆっくりと地上に降ろす。

「だが気を付けろよ、お前たち。アルティミア・カリストーは、どこからでも狙撃をして来るぞ」

「なに言ってんだよ、パパ」
「狙撃なんて、近づいちゃえば出来ないでしょ」
 オレンジ色の12機と、チョコレート色の12機が、女神との間合いを詰めた。

「愚かな……既に、光の弓のチャージは終わっています」
 狩りの女神の前に、一直線上に並ぶ24の機体。

「お、お前たち!?」
「心配ないって」
「狙撃手は、こっちのが多いんだからさ」

 閃光が、放たれる。
それは1本の光の矢では無く、12機のソーダ色の機体が放つ光の狙撃だった。

「クッ、光の弓が!?」
 スナイパーたちの銃撃を潜り抜け、後退するアルティミア・カリストー。

「これで、アタシたちの勝ちだね」
「死んじゃえ~!」
 オレアたちとチャコアたちの、近接攻撃型の24機のサブスタンサーが、狩りの女神の懐に入る。

「イーピゲネイア様は、殺らせはせん!」
 娘たちは、いきなり現れた黒いサブスタンサーの一閃に、払い飛ばされた。

「ふぎゃあ!」
「あ、新手が居たァ!」
「でも、誰が乗ってんだァ?」

「今の……男の声だった。まさか」
 女神を庇うように立ちはだかった機体から、聞き覚えのある声がする。

「この『デイフォボス=プリアモス』が、キサマらの好きにはさせん」
 ゼーレシオンと同じ、キュクロプス型のサブスタンサーに乗っていたのは、黒き英雄だった。

 

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