ラノベブログDA王

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一千年間引き篭もり男・第05章・23話

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開戦理由

「宇宙斗艦長。まずは詳しい戦況を、お伝えしましょう」

 ボクの元から離れたイーピゲネイアは、重力の小さくなった指令室を舞う。

「敵の艦隊は、4個艦隊。うち2個艦隊が、パトロクロスの宇宙港を攻撃し破壊しました」
 最初に会った時とは異なり、古代ギリシャの女神像が着ていそうなデザインの黒い衣装を着た彼女。
まるで、演劇の一場面を再現しているかの様だ。

「対する我が方は、パトロクロスに2個艦隊、衛星のメノイティオスに1個艦隊が首都防衛の為に配備していますが、駐留していたのは1個艦隊のみです」
 自らの席に降り立った女神は、自身を椅子に固定させる。


「その1個艦隊すら、宇宙港が攻撃されたコトで、完全に展開できていないのですが……」
 デイフォブス=プリアモスは、歯切れの悪い物言いをする男では無かったが、今回は違った。

「なにか、腑に落ちない点でも?」
「え、ええ、そうですな。どうも、敵艦隊の動きが、鈍いのです」
「……と、仰いますと?」

「現在、交戦中の1個艦隊の被害が、まったく出ていないのです」
「それって、良いコトじゃないんですか?」
 イーピゲネイアに倣い、椅子に身体を固定させたセノンが聞く。

「状況だけ考えればそうなんだケドよ。相手は4個艦隊なんだぜ」
「それに対し、こっちは1個艦隊にすら満たない……」
「戦術的に見れば、どう考えても向こうが圧倒するハズだよね?」

「確かに、真央たちの意見は正しい」
「ふえ、そうなんですか」
「兵は詭道なり……っていうケド、殆どの場合は数が多い方が圧倒するからね」

「残り2個艦隊は、どうしてるんでしょうか?」
「パトロクロスの存在する宙域を、パトロールしていたのです」
「こちらに向かってはいるのですが、何分広大な領域でしてな」

「言われてみれば、木星の公転軌道の一部を切り取った領域ですからね」
 言葉では他愛なく聞こえるが、実際には地球から太陽までの距離(1AU)の何倍もの領域を、企業国家トロイア・クラシック社は支配している。

「問題は、どうして我が艦隊の被害が、皆無なのかと言う点ですが」
「相手の狙いは、艦隊の壊滅ではないのか?」
 ……だとすれば、一体なにが狙いなんだ?

「グリーク・インフレイム社からの、宣戦布告や通信などは入っていないのですか」
「元々ヤツ等とは、交戦状態にありましたからな」
「アキレウス=アイアコスからも、何の通達もありません」

「小惑星パトロクロスを、無傷で手に入れたいんじゃないのか?」
「いや、こっちの2個艦隊が到着すれば、相手の数的優位は崩れるコトになる。早目に決着をつけるのが、ベストな戦略に思えるが」

 ボクは、高校生の素人意見に過ぎないと思い、デイフォブス代表の顔色を伺う。

「わたしも、艦長と同意見でしてな。このパトロクロスと、衛星メノイティオスにも、光子砲台やミサイルなどの、強力な防衛網があります。ワープで攻められない限りは、不落の要塞と言っていいでしょう」

「相手からすれば、要塞と来援艦隊の挟撃に遭う可能性すらあるのに、どうして……」
「そ、それじゃあワープで爆弾とか送り付けて来て、内側からドカーンとされちゃうんでしょうか?」
「だったら艦隊なんてワープさせて来ずに、最初っからそうすれば良かったんだ」

「考えれば考える程、謎は深まるばかりですな。結局のところ、敵艦隊で攻撃参加しているのは2個艦隊のみであり、被害も宇宙港周辺にとどまっておるのです」

「攻撃を受けているのは……宇宙港だけ?」
 宇宙港には、クロノ・カイロスが停泊している。
そこにヒントがあった。

「敵の目的は、クロノ・カイロスだけだったんじゃ!?」
 愚かなボクは、やっと敵の狙いに気付いた。

 

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