ラノベブログDA王

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一千年間引き篭もり男・第07章・09話

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イーリ・ワーズ

「艦長、お久しぶりですね。我が艦、『イーリ・ワーズ』にようこそ』
 サファイア色の髪をした女の子が、スペースランチから降りたボクを出迎える。

「艦に、名前を付けたのか。この艦は確か、トロイア・クラッシック社の標準旗艦だったよな」
 ランチから見た艦は、蒼く曲線的な美しい艦だった。

「はい。あった方が、戦事にさいし有利かと思いましたもので」
「アマゾネスの女王らしい、理由だな」

「アクロポリスの街の防衛線では、間に合わずに申し訳ありません」
 ボクの冗談にも、少女は顔を伏せる。
彼女は中学生くらいの体躯で、名をペンテシレイアと言った。

「ヴェル……イヤ、ウルズから聞いたよ。キミたちの艦隊は、タルシス3山に飛来した、時の魔女の手先と戦っていたんだろ」
 Q・vic(キュー・ビック)が飛来したのは、アクロポリスだけでは無かったのだ。

「わたくしの、判断ミスです。軍の基地施設が主なタルシス3山よりも、民間人が多く暮らすアクロポリスを優先すべきでした」

「キミは、目の前の人を助けたかったのだろう」
「……はい。目の前で焼かれる兵士たちを、見殺しには出来ませんでした」
「ボクも、同じ過ちを犯した。キミを、責められないよ」

 スペースランチを降りると、ランチの後部ペイロードベイになんとか収めた、前屈状態のゼーレシオンを起動させる。

「ゼーレシオンを、使われるのですか?」
「万が一の、ときのためだよ。使わないんなら、それに越したコトはないさ」
 ゼーレシオンをハンガーに直立させた後、ボクは機体を降りた。

 イーリ・ワーズは、MVSクロノ・カイロスのような張り出した艦橋は無く、艦の中央内部が閉鎖型の艦橋になっている。

「ここが艦橋か。クロノ・カイロスとは、ずいぶんと感じが違うな」
 足を踏み入れると、少女の姿となった12人のアマゾネスたちが、オペレーターとして働いていた。
彼女たちは、見た目こそ人間の少女だが、正体は生体アーキテクターだ。

「では、艦隊の指揮はお任せ致します」
 そう言ったのは、12人の少女たちの上官であるペンテシレイアである。

 パトロクロス宙域の戦いで、彼女たちはボクたちに敗れ、妖艶な大人の女性の身体を失ってしまう。
まだ調整中だった少女の身体に移って、それでもイーピゲネイアさんの為に戦ったのだ。

「イヤ。キミには引き続き、この艦隊の指揮を頼みたい。ボクは艦隊運用や戦術を学んでもいなければ、ヴェルみたいな高度なAIでも無いワケだからね」
「了解致しました。ですが、この艦隊を2つに編成されるのですよね?」

「そうだな。半個艦隊を編成して、例のサブスタンサーを追尾したいんだ。誰か指揮を任せられる適任者は、居ないかな?」

「では、わたくしの妹をお使い下さい。アンティオペー、オリティア、メラニッペーと申す者たちです」
 すると艦橋後部の扉が開き、3人の少女が入って来た。

「キミたちは確か、トロイルスで……」
 トロヤ群の主星パトロクロスにおいて発生した、イーピゲネイアさんを首謀者とする、アーキテクターたちの叛乱は、主星のみに留まらずトロヤ群全域に波及する。

「はい。あのときは、叛乱を鎮圧していただき、ありがとうございました」
「わたし達は、ペンテシレイアの妹なのです」
「半個艦隊の指揮は、わたし達にお任せください」

 紹介された3人の少女は、ボクの前に来て会釈する。
叛乱は、パトロクロスの衛星であるメノイティオスや、星自体が工業プラントに改造されたトロイルスにまで及んでいた。

「幸いにも、トロイルスのAIが聞き分けが良くて助かったよ」
 トロイルスの防衛隊に属していた彼女たち3人は、駐留艦隊の暴動によって、姉たち同様に身体を失ってしまうものの、やはり予備(リペア)の幼い身体を得て、生き永らえる。

「そうですね。アレに暴走されていれば、わたし達も助からなかったでしょう」
「製造途中だった艦艇やコンバット・バトルテクターも、ほぼ無傷でした」
「わたし達の機体も、このイーリ・ワーズに搭載されております」

「アンティオペー、お前に我が艦と同型の艦を授ける。オリティアとメラニッペーを副官とし、宇宙斗艦長を助けよ」
 ペンテシレイアさんが、3人の妹たちに命令を降す。

「はい、お姉さま……じゃなかった、司令官」
 意外にコケティッシュな、アンティオペー。

「大丈夫か。少し、心配になって来たぞ」
「大丈夫です。お姉さまは直ぐに、わたしを子供扱いされるのですから……」
「公事と私事の区別もつかんようでは……なあ」

「心配性だな、ペンテシレイアは。やはり、実の妹ともなると可愛いモノか」
「そ、そう言うコトでは、ありません。任務に適しているかどうか、見定めるのも……」

「部下を信頼するのも、上官の役目だよな」
「ま、まあ、そうですが」
 困り顔のペンテシレイアの背後で、3人の少女がほくそ笑んでいる。

「それじゃあ、行こうか。これ以上、女性(レディ)を待たせるのも失礼だからな」
 ボクは3人の少女たちを引き連れ、再び格納庫へと向かった。

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