ラノベブログDA王

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キング・オブ・サッカー・第一章・EP017

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もう一枚の名刺

 うう……なんか気マズイ。

 フードコートの席に、紅華さんと向かい合って座る。
ボクは袋から、ツナパンと炭酸水を取り出し食べ始めた。

「湿気たメシ、喰ってんな。ま、オレも似たようなモンだがよ……」

 アレ、そうなのか?
ボクはいつも、ツナかタマゴサンド、たまに塩おむすびも食べる。
飲み物は、炭酸水か2リットルで100円の水が多い。

 でも紅華さん、コンビニでバイトしようとしてたよな。
やっぱ高校生だから、お小遣いが少ないのかも?

「なんで、バイトしようとしてたかって?」
 ウゲッ、心を読まれたぁ!?

「ま、そりゃ気になるわな」
 紅華さんの言葉に、ボクはコクリと頷いた。

「ウチは三年前に親父が死んで、それからはお袋一人で美容院をやってんだ」

 そ、そうなんだ。
ウチは両親もいて、奈央もいて、恵まれてる気がする。

「姉貴を専門学校にやるだけでも、大変だったのに、オレも高校生になったからな」
 義務教育でない高校生になれば、お金がかかるのか。
だから紅華さんは、バイトを始めようと……。

「お前は知らんだろうが、個人経営の美容院なんてのは、どこも経営が厳しくてよ」
 ボクの炭酸水を、勝手にグビグビ飲む紅華さん。
「繁華街の方に、次々に新しい美容院が出来たお陰で、客足は遠のく一方なんだわ」

 ……それって鳴弦さんのお店も、含まれてるんじゃ?

「ま、お前に愚痴ったところで、なにも変わらんか」
 ペットボトルを置き、ピンク色の髪を手櫛で梳かしながら立ち上がる。

「オレはサッカーなんてやってるヒマはねーの、解かった?」
 紅華さんはそう言うと、コンビニを出て行った。

 紅華さんは学費や、実家のお店を助ける為にバイトをしようとしてるのか?
お姉さんだって母親を助けるために、必死に美容師になる努力をしている……。

 ボクも、直ぐに後を追った。

 このままじゃ、ダメだ……ちゃんと伝えないと!

 走り込んで、紅華さんの前に回り込む。
あえてその行く手を塞いだ。

「なんだよマジでしつこいな。オレはサッカーなんか……」

「……お金……払う……」
 緊張して引きつる顔の筋肉を、なんとか動かす。

「あ? お前、なに言って……」
「ウチのクラブ……給料……出る!」

 言葉の意味が解らなかったのか、紅華さんはしばらくその場で固まった。

「な……マジか、金が出るって?」
 ボクは、コクコクと頷く。

「だけど、ただのサッカークラブだろ?」
「プロ……サッカー……クラブ!」

「プロサッカークラブが、お前みたいに無口な高校生を、スカウトに使うとも思えんが?」

 それもそうだ。
正論だし、言い返せない。

「熱意は解かるが、冗談に付き合ってるヒマはねえの」
 ボクの言葉を、ウソだと思った紅華さん。
軽くフェイントを入れ、易々とボクをかわす。

 流石は、倉崎さんが見込んだドリブラーだ。
体の動き一つで、ボクはバランスを崩してしまった。

 紅華さんは、バス停の方に歩いて行ってしまう。
向こうから、バスもやって来た。

 ど、どうしよう。
このままじゃ、紅華さんが行っちゃう。
でも説得を続けたところで、納得するだろうか?

 諦めかけたその時、脳裏に倉崎さんのスーパープレイが浮かんだ。

 新人として鮮烈なデビューを飾り、名古屋のサポーターのみならず、全国のサッカーファンの度肝を抜いた試合。

 そうだ、ボクにはもう一枚、名刺がある!

 自分の財布に仕舞っていた、もう一枚の名刺の存在を思い出す。
それは、サッカー部に入部できなかった日の帰り道、倉崎さんがズボンのポケットに投げ入れた名刺だった。

 ボクは、もう一度走り出して、紅華さんの前に回り込んだ。

「オイ、どけよ。丁度バスが来てんだ」
 紅華さんはフェイントを入れるが、ボクも必死に喰らいつく。

「これ……名刺……」
 ボクは、倉崎さんの名刺を差し出した。

「お前の名刺なんて、要ら……ん?」
 紅華さんは、払い除けようとした名刺を手に取る。

「く、倉崎……世叛だとォ!?」
 紅華さんは、目を丸くして驚いた。

 

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