ラノベブログDA王

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萌え茶道部の文貴くん。第六章・第ニ話

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醍醐寺 草庵

 その日集まった来客達は、学校の体育館に通された。

「あれ。椅子と机が用意されてるぞ?」「舞台を見て! スクリーンまであるわ」
 体育館には、茶道部の長机と同じタイプの机が横に六列、縦で三列並べられている。
壇上にはスクリーンと、映像を映し出すプロジェクターが置かれていた。

「しっかし阿曇っち。よくプロジェクターまで持ってたな~?」
「『電気ウナギ発電・エコの会』をなめるで無いわ、橋元。電気ウナギのボルタくんの、エコ発電を提案して行くにあたっての、最強武器じゃわい! 中古じゃがな……」

 すると、体育館の天井からぶら下がっていた照明が落とされ、辺りは薄暗闇となる。
巫女・美娘ダンシング部の天原 礼於奈と、未知との遭遇部の愛澤 柚葉の声が、体育館に響き渡った。

「本日は、わたしたち旧部室棟で活動をしている十の部活の、存続をかけた会議にお集まりいただき、ホントにありがとうございます」
 オワコン部は、全ての部活が部活として認められる、規定の人数である五人しか居ない。

「今日は、皆んさんにわたしたちの部の魅力を、存分に味わっていただけるよう、皆で頑張って準備してきました」
 そのメンバーたちが、会場の設営から案内、アナウンス、照明までを手分けして行った。

 『恐竜なりきる部』の小柄な五人の少女たちも、幼稚園児が騒がないようにあやしている。
「……しっかしのォ、橋元よ。よく見ると、あヤツらの被ってる帽子、首長竜・翼竜・魚竜・恐竜型爬虫類・でかいカメ(アーケロンなど)がモチーフの様じゃぞ?」

「それがどうしたんだ?」「厳密に言えば、恐竜が一匹もおらん」
「恐竜なりきる部なのにかよ!?」橋元は、呆れるしか無かった。

「とこれで阿曇っちは、こんなところでのんびりしていて大丈夫なのか?」
「こりゃ、阿曇先輩と言え! お主より年上なのじゃぞ。まあ、わしら『電気ウナギ発電・エコの会』の出番は、もっと後じゃからのォ」

「そいやあ渡辺のヤツが、やらかしたって聞いたけど?」
「そうなのじゃ!? ヤツが撮った映像の殆どは、おなごの『尻』ばかり映っておっての。あんなの上映したら、逆効果どころか、ひんしゅくを買って即刻廃部じゃわい!!」

(わかる……わかるぞ~渡辺!)橋元は同じ男として、心の奥底で同情する。
「……おや、いよいよ敵さんのお出ましじゃぞい?」
 橋元が、鯰尾 阿曇の指し示す方向を見ると、一人の男が体育館に入って来ていた。

 男は一見秘書にも見える、経営コンサルタントの女を従えている。
「ガキと思って侮っていたが、随分と観客を集めたものだな? 大勢の証人を確保したつもりだろうが、逆にこの場がお前たちの最後の晴れ舞台となるのだ……」

 男は小さく呟くと、不機嫌な表情で周りを見渡した。
「……ご心配には及びません、醍醐寺社長。所詮は子供の浅知恵。悪足掻きに他なりません……」
 女は頭を垂れたまま、切れ長の目だけを上に向けて答える。

 男は内心、女の目や態度を不気味に思った。
(この女がわたしの元に来てから、誰もわたしを『出来の悪い二代目』などと、罵らなくなった。陰口を叩いていたヤツ等は、すでに会社には存在しない……がな)

 だが、ビジネス面での能力の高さから、それらを全て不問に伏していた。
「お前はわたしに、決断する楽しさを教えてくれた……感謝しているよ」
 女は、男と同様のうすら笑いを浮かべ、頭を垂れた。

「身に余るお言葉……全ては醍醐寺 草庵社長の御為に……」
「うむ……」男は、壇上に設けられた席に座った。

 けれども、そこから見降ろした景色が、男を再び不機嫌にさせる。
「しかし五月のヤツ、出来の悪い生徒共に体育館まで使わせるとは……そんなコトだから、生徒が増長するのだ!?」

 女の座る席も用意されていたが、女は男の傍らに立つ。
「それは、御もっともな意見にございます。せん越ながら奥方様は、無駄を切り捨てる……という決断が出来ないのです。それでは、『現代の経営者』としては失格です」

「……切り捨てる……か? あいつとも、そろそろ……」男は腕を組み、脚をも組んだ。
 男の独り言に、後ろに立っている女はほくそえむ。

(人間とは、なんと愚かな生き物なのであろうか? コヤツ等の世界は、結局のところ『金』というただの紙切れによって支配されている。どんなにキレイ事を並べたところで、金の無いヤツは搾取され、金の有るヤツがすべてを支配するのが人間の世界のことわりよ)

「……提案がございます。奥方様には、そろそろ学園長の座から引退していただいた方が、醍醐寺グループや、この学校の為になるかと思われます……」

「ウム……わたしも同意見だ」
 男は壇上から、集まっている生徒や観客を見下した。
「……少子化のご時世に、わざわざ学校の経営など……フフッ」

 

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