ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第13章・98話

神槍と魔銃

 紺碧の大海原にて、艦隊の旗艦同士が衝突し、激しい甲板戦が繰り広げられていた。
荒々しい海の男たちのカトラスが、互いに斬り結び火花を散らす。

「アドゥル。お前の槍は、まさか!?」
 マストにかかるロープを片手で握りながら、イアンが言った。

「我が手にある神槍アスク・ラピアは、キサマも知っている、アスク・レ・ピオの槍だ!」
 再びイアンに槍を向け、突進するアドゥル。

「アスクの神槍を、お前が引き継いだのか!」
 イアン・ソーンは、帆の落ちたマストを蹴って、ロープでアドゥルの背後に着地した。
同時に2挺の銃を、アドゥルの背中目掛けて発射する。

「大海の7将の1人でもあり、神医と呼ばれたアスクは、キサマやオレにとっても盟友だった。キサマが王を裏切った真の理由も、アスクが関係しているのだろう?」
 銃弾が、アスクの背中から零(こぼ)れ落ちた。

「そこまで解ってんなら、話は早い。アドゥル、オレと共に来い!」
「断る。アスクが死んだのは、自然の摂理を冒したからだ」
 イアンとアドゥル、2つの艦隊司令官同士が銃と槍を交えながら、舌戦をも繰り広げる。

「アスクは、王の息子を蘇らせた。その結果が、死を賜(たまわ)るコトだったのかよ!」
「違う。アレは、ミノ・リス王の所業では無い。アスクは、雷に討たれ死んだ」

「ケッ! そんな話、誰が信じる?」
 イアンの2挺の銃から、再び複数の銃弾が発射された。
弾は不自然な軌道を飛んで、アドゥルの手に命中する。

「ムダだ。神槍アスク・ラピアを前にしては、キサマの銃など無意味よ」
「ソイツは、どうだかな?」
「……なに?」

「オレのクリス・マーロウ・ドゥレスは、魔銃だぜ」
 2挺の銃を掲げる、イアン。

 銃は、ガンメタル色の銃身が縦に2つ並んでいて、黄金のリボルバーとグリップを持っていた。
グリップには、黄金の羊が装飾されている。

「グワッ!?」
 アドゥルの槍を持った手が、内部から炸裂し弾け飛んだ。
神槍が、アスクの手から甲板へと落ちる。

「これで、お前は不死身では無くなった。悪く、思うなよ」
 クリス・マーロウ・ドゥレスが、再び火を吹いた。
異常なカーブを描いた銃弾が、アドゥル・メートの心臓や眉間に向け跳ぶ。

「我が主(マスター)を、やらせはせぬ!」
 けれども弾丸はすべて、アドゥルの前に立ちはだかった男によって防がれた。

「バ、バカな。オレの弾丸を、全て生身の身体で弾きやがった!?」
 慌てて後退し、距離を取るイアン。

「我が名は、アー・ポリオ。アドゥル・メート様が、下僕(しもべ)よ」
 名乗りを挙げた男は、筋肉に覆われた理想的な体形をしている。
カールのかかった金髪に、碧眼でイアンを睨(にら)み付けていた。

「この女は、キサマのモノであろう。返してやろう」
 男は、後ろに倒れていた女の髪を掴み、イアンに向って投げつけた。

「グッ!?」
 猛スピードで飛ばされた女を、抱きとめるイアン。

「メリィ・ディアー。だ、大丈夫か!?」
 イアンが抱き止めた女は、瀕死の重傷を負っていた。
美しい化粧で彩られた顔も、大量の血が滲(にじ)んでいる。

「イ、イアン……あの男、ヤバいよ……逃げ……」
 それだけ告げると、メリィは気を失ってしまった。

「アドゥル・メート様、槍を……」
「スマンな、アー・ポリオ」
 アー・ポリオが槍を手渡すと、アドゥルの消し飛んだ手先が、見る見る回復する。

「あの男の相手は、わたしが致しましょう」
 そう告げると、下僕の男は再びイアンの方を向いた。

「悪ィが、これくらいで退散させて貰うぜ。アドゥル、お前の船は放って置いても沈む」
 メリィを小麦袋のように肩に抱え、船の縁(へり)へと移動していたイアン。

「野郎ども、退却だ。さっさと愛しのアル・ゴゥース号に、飛び移れ!」
 艦隊司令官の号令と共に、海の男たちは沈み行く船を離れ、自分の船へと飛び移って行った。

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