ラノベブログDA王

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王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

一千年間引き篭もり男・第09章・06話

現実味の無い世界

 火星にて観艦式を終えた途端、時の魔女による襲撃を受けた、クーヴァルヴァリア。
曲線を多く用いた真っ白な船体は、艦名の由来となった少女のように、気品と優雅さを漂わせていた。

「クーリア。今のキミは、時の魔女に操られてはいないのか?」
 ゼーレシオンとの1体化を解除したボクは、クーヴァルヴァリア・カルデシア・デルカーダに改めて確認する。

「解りません。今のわたくしが、時の魔女に操られているのかどうか……。いいえ、あの火星の惨劇の当時のわたくしも、本当に時の魔女に操られていたのかどうか……」
 クーリアは、金色の豪奢(ごうしゃ)なヘルメットを外しながら言った。

 長い真珠色の髪が溢れ、頭の左右から伸びたドリル上のピンク色の髪も、覆っていた光のフィルムから解放される。

「操られていたに、決まっているさ。キミは、あんなコトが出来る女の子じゃない」
 ボクは、クーリアの瞳を見ながら断言した。

「それは、わたくしが大財閥・カルデシア財団の令嬢だからですか?」
「違う。そんな肩書きなんて、関係ない。キミが、気高く優しい女性だからだ」
 まるでアニメやゲームのヒーローのような台詞を吐く、ボクの口。

「ゴメンなさい。今のわたくしには、火星の惨劇が現実とは思えないのです。まるで、夢か幻覚だったかのような……アレが現実だと言うコトは、頭では理解しているのですが」
 クーリアが、整った顔を背けた。

「それは、ボクも同じかな」
「……え?」

「正直に話すと、1000年前のボクは英雄なんかじゃなかった。それとは真逆の、目の前の現実から、逃げまくるような男だったんだ」
「宇宙斗艦長が……ですか?」

「うん。当時のボクは、自分の家の布団の中で丸まって、学校にも行かず引き籠っていてさ。でもとある女の子が、ボクを外の世界へと連れ出してくれたんだ」

「その女の子……と言うのは?」
 クーリアの顔が、再びボクに向けられている。

「時澤 黒乃と言う、キミと同じクワトロテールの女の子でね」
「トキサワ……クロノ……」

「同じ学校の同級生で、彼女は自分で冷凍睡眠カプセルまで造って、未来に思いを馳せた……イヤ、正直彼女が、未来に何を望んだのかは、今となっては解らないな」

「その方は、この時代には来られなかったのですね……」
 顔を伏せる、クーリア。

「1000年後の宇宙でボクは、ゼーレシオンと言う高性能ロボットに乗り、目の前には美しい悲劇のヒロインまで居る。こんなのって、当時のボクからしたら、まったく現実味の無い話だろ?」

「ウフフ……そうですね」
 クーリアは、再会してから始めて笑顔を見せた。

 それからボクたちは、ゼーレシオンを降りてクーヴァルヴァリアの内部格納庫に、自身の脚を付ける。
格納庫には、宇宙で確認したピンクと薄紫色の機体が並んでいた。

「あの機体は、キミのお付のコたちのモノかな?」
「ええ。アタ・ランティと言う名で、わたくしの護衛をしていただいておりますの」

 格納庫から出る通路には、機体と同じ配色の宇宙服を着た11人の少女たちが待ち構えており、小さく頭を下げてボクたちを出迎える。
フレイアさんやシルヴィアさんら、懐かしい顔が並ぶ中をボクたちは通り抜けた。

「それにしても、広い船だな。キミのお義姉さんである、セミラミスさんの船も広かったケド」
「義姉の船は、観光用の豪華客船でもありましたから。この艦は、アレよりは小さいですのよ」

 白く輝く通路には、金色のアンティーク調のライトが程よく配置され、両脇には時おり高そうな木製のドアが出現する。
しばらく歩くと、通路の突き当りにさらに豪華なドアが見えて来た。

「こ、これは!?」
 両開きの扉を開ける、ボク。
ルネッサンス期のパーティー会場のような部屋が、ボクの視界に飛び込んで来た。

 大理石の白い柱に、ピンク色の天井からは煌びやかなシャンデリアが幾つも吊るされている。
部屋の中央には長いテーブルがあって、美味しそうな料理がたくさん並んでいた。

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