ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第13章・97話

甲板戦

 大海原で衝突した、2隻の艦隊旗艦。
甲板戦の準備にとカトラスを抜く、互いの艦の乗組員たち。

「メリィ・ディアー。キミは船倉にでも隠れていろ。ここからは、血生臭い乱戦が始まる」
 日焼した、海の男が言った。
彼は黒い艦隊の司令官で、旗艦アル・ゴゥース号の艦長でもある。

「冗談では無くてよ、イアン・ソーン。これでも、落ちぶれた家を建て直すために、多くの修羅場をくぐって来たんだから。砲撃戦は指をくわえて見てるしか無かったケド、乱戦なら暴れられるわ」

 メリィは、アル・ゴゥース号の甲板から舳先(へさき)を駆け抜け、横腹に穴を開けられた敵旗艦へと、真っ先に斬り込んだ。

「なんだ、女が1人で斬り込んで来やがったぞ!?」
「ふざけやがって。ここは、男の戦場だ!」
 彼女の周囲を、直ぐに荒くれた船員たちが取り囲む。

「舐めない方が、良くてよ。アタシは、女を見降す男の血を見るのが、大好きなのさ」
 メリィは、左の腰に下げたサーベルを抜いた。

「グワッ!?」「ゴフッ!!」
 腹を裂かれた男が数人、海へと堕ちて行く。

「海の男ってんならさ。海に還れて、本望よね」
 紫色のアイシャドーで彩られた猫のような瞳が、取り囲んだ男たちの怯えた顔を映した。

「……こ、この女、強いぞ!?」
「弱気に、なってんじゃ無ェ!」
「こちとら、自慢の船に穴開けられてんだぜ!」

 海の男たちは、今度はカトラスを腹の前に構えて斬りかかる。

「文句なら、あの日焼した船長に言ってくれるかしら」
 メリィは1人の男を踏み台にして、ヒラリと宙に舞った。

「ガハッ!?」「グフッ!!」
 男たちの背後に着地し、背中から数人を斬り伏せる。

「この女、舐めやがって!」
 ひと際大柄な男が、巨大なカトラスでメリィを背後から襲った。

「ヒハァッ!」
 男のハゲた頭に、風穴が空く。
男はそのまま、仰向けになって倒れた。

「余計なお世話だったかな、メリィ?」
 蒼いロングコートの内に、ガンフォルダーを下げた男が言った。
彼の右手に握られた銃からは、薄っすらと白い煙が登っている。

「そうね、イアン。コイツは、もう倒していたもの」
 甲板に大の字に寝そべった男の豊満な腹には、バツの字に斬り傷が付いていた。

「悪かったな。だがキミの背後に居る男との決着は、オレに譲ってくれないか?」
「了解よ。なにやら、因縁もあるみたいだしね」
 メリィは大きく宙に飛ぶと、他の兵たちの戦闘へと向った。

「ずいぶんと、威勢のイイ女を従えたモノだな……イアン」
 メリィの背後に立っていた、イアンと同じ色のコートを着た男が、槍を構える。
彼は白いズボン、黒い手袋と軍靴など、その他の身なりもほぼ同じだった。

「アドゥル・メート。残念ながら彼女は、どんな男であろうと手懐けられはしないだろう」
 イアン・ソーンが、男の船へと乗り込む。

「まさかこんなカタチで、キサマと戦うコトになろうとはな」
 銀色の長い髪を海風に靡(なび)かせたアドゥルは、蒼い瞳に乗り込んで来たイアンを映した。

「キミの父上と、オレの父上は兄弟だ。従弟(いとこ)同士が、戦り合うのも虚しきモノ……アドゥル、降伏する気は無いか?」
 イアンが、着ていたコートを脱ぎ捨てる。

「我ら大海の7将が、ミノ・リス王より与えられた忠誠の証(あかし)たるコートを捨てた以上は、キサマは敵だ。降伏など、以(も)っての他よ!」
 1直線に、槍で突進するアドゥル。

「ヤレヤレ、相変わらず真っすぐなヤツだ。もう少し柔軟に立ち回ら無ェと、損するぜ!」
 イアンは、両手に構えた2挺の銃を撃ち放った。

「グッ!?」
 乱射された弾は、不自然な軌道を描いて飛び、アドゥルの胸や頭部に命中する。

「この程度の傷など、我が槍の前では無意味よ!」
 けれどもアドゥルは倒れず、突進を続けた。

「ヤツの傷が、塞がって……クッ!?」
 イアンは、慌ててマストのロープを握って、突進をかわす。
丈夫なロープが切れ、マストの帆が甲板に落ちた。

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