ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第13章・85話

天空の魔法ラムシ・セ・ウォリア

「海底の国の王よ。なぜ貴方は、サタナトスと言う賊の軍門に降ったのです?」
 王妃パルシィ・パエトリアは、大魔王ダグ・ア・ウォン が巻き起こした暴風をモノともせず、凛としたエメラルド色の瞳を向け問いただす。

「海皇ダグ・ア・ウォンが、どうして少年などの下で働くのですか?」
 美しい金髪が風に揺れ、純白のドレスも大きくはためいていた。
長い首に架けられた、様々な宝石が散りばめられた黄金のネックレスも、舞い踊っている。

「答える義理は無いな、クレ・ア島の女王よ」
 海皇は、三又の剣(トラシュ・クリューザー)を王妃に向けた。

「我の前に跪(ひざまず)かぬのであれば、討ち砕くまでよ」
 今度は3つの刃の内、黄色の刃が輝く。
王妃を取り囲むように、無数の鋭利な針(ニードル)が、空中に出現した。

「ア、アレは、黄玉の魔王の槍の能力だ!」
「じゃが、針の数が段違いじゃ。ペル・シアとやらの、比では無いぞ!」
 闘技場の空中を旋回していた、舞人とルーシェリアが驚愕(きょうがく)する。

「パエトリア王妃。ここは、わたしが……」
 黄金の鎧を纏(まと)った1人の男が、王妃の前に歩み出た。

「ミノ・テリオス将軍だ。でも将軍は、重傷を負って戦える状態じゃ……」
「ご主人さまにはアレが、傷を負った男の顔に見えるのか?」
「え?」

 ルーシェリアに言われて、舞人は雷光の3将が筆頭の状態を確認する。
ミノ・テリオス将軍には、魔王ケイオス・ブラッドとの戦いによる傷や疲弊すらも見られず、気力に満ち溢れていた。

「フッ、死に損ないが。我が槍の能力を受け、串刺しとなるがイイ!」
 トラシュ・クリューザーが、黄色く輝く。
同時に無数の針が、ミノ・テリオスと王妃に目掛け、1斉に飛んだ。

「ジェイ・ナーズ!!」
 ミノ・テリオス将軍が、自らの剣を闘技場の床に突き立てる。
鏡のような剣身に、無数の針が映った。

「なにィ、我の針が消えただと!?」
「消えたのでは無い。自分の周りを、よく見てみろ」
 黄金の鎧の将軍が、言い放つ。

「バ、バカなッ!?」
 大魔王ダグ・ア・ウォンの周囲に、無数の小さな鏡が出現し、鏡の中から鋭利な針が現れた。

「自らの針を、その身に喰らうがイイ!」
 トラシュ・クリューザーが、破黄槍バス・ラスの能力を取り込んで生み出した針が、大魔王を襲う。

「グハッ!」
 多くの針は、大魔王の蒼いウロコの固さに跳ね返されたモノの、何本かはその身を貫いていた。

「アレだけの針の攻撃を喰らって、大したダメージも通らんとは……」
 ミノ・テリオス将軍は、再び剣を構え臨戦態勢に入る。

「小癪(こしゃく)なマネをッ!」
 大魔王が、身体の筋肉に気合を入れると、突き刺さった全ての針が弾け飛んだ。

「2人とも、スゴい戦いだ。でもミノ・テリオス将軍は、どうして傷が癒(い)えているんだ?」
「王妃の、回復魔法じゃよ」
 ルーシェリアは抱えていた舞人を、水没していない闘技場の観客席に降ろした。

「王妃サマは、回復魔法が使えるのか?」
「恐らくは、もっと高度な魔法も操れるのじゃろうて。アレを、見るのじゃ」
 ルーシェリアが、紅色の視線で舞人を誘導する。

 ミノ・テリオス将軍の背後で、パルシィ・パエトリアは目を閉じ、何やら口ずさんでいた。

「呪文は、完成致しました。貴方は、鏡の中へ逃げて下さい」
「ハッ!」
 王妃を残し、鏡に消えるミノ・テリオス将軍。

「な、なんだと!?」
 驚愕の表情を浮かべる、深海の支配者たる大魔王。

「その身に味わいなさい。天空の魔法、『ラムシ・セ・ウォリア』!!」
 王妃の持つ杖が、真っ白に光り輝いた。

「マズい……この光はッ!?」
 大魔王ダグ・ア・ウォンは、4本の腕をクロスに組んで防御態勢を取る。

「ご主人サマも、伏せるのじゃ!」
「ウ、ウン!」
 舞人は、伏せたルーシェリアの上に覆いかぶさった。

「グッ……グオオオオォォ―――――――ッ!!?」
 白き閃光が、大魔王に向け炸裂する。

 閃光は、闘技場の観客席を大きくえぐり取り、天に向かって登って行った。

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