ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

この世界から先生は要らなくなりました。   第11章・第51話

代役の少女

「オ、オレ、頭がこんがらがって、もうワケわかんねェよ!」
 観客席から、大きな男性の声が轟(とどろ)いた。

「渡邉 佐清禍(わたなべ サキカ)ちゃんは、殺されて無かったってコトでしょ」
「じゃあ、風呂場で首飛ばされて発見されたのって?」
「だから、代役の少女って言ってるじゃない!」

「代役って、そんなのが歩いてたら、簡単にバレるんじゃね?」
「警察にとってサキカちゃんは、いきなり孤児院からやって来た女のコに過ぎないのよ。同い年くらいの女の子が、サキカちゃんと同じ格好をして歩いてても、気付かないって」

「そっかァ。まあ、そんな気もするな」
 やっと納得する、男性客。

「ケドよ。死体を解剖すりゃ、本人じゃ無いコトくらい解るだろう?」
「今ならね。昔の話だし、孤児院で育った私生児のサキカちゃんを、本人だとどうやって特定する?」

「そりゃ、えっと……どうやって?」
 男性客は、さらなる疑問にぶち当たった。

「サキカさんは、自分の代役の少女が部屋にやって来るまで、自室に隠れていたのでしょう」

 観客席の推理論争が終わる頃を見計らって、マドルが推理の続きを始める。

「少女を招き入れたサキカさんは、彼女に睡眠薬入りの紅茶などを勧める。2人は、同じ孤児院で育った顔見知りだった。とうぜん少女は、疑いも無く紅茶を飲んでしまう」

「だが彼女の部屋からは、ティーセットなどは発見されとらんぞ」
「睡眠薬さえ投入できれば、お菓子でも何でも構わないよ」
 マドルは、苛立ち気味に言った。

「睡眠薬は、遅効性のモノだったのだろう。彼女は浴室で、湯舟に浸かった頃に眠りに落ちてしまう」

「そこをマスターデュラハン……渡邉 佐清禍に、首を斬り落とされたと言うワケか」
 警部の見解に、マドルは反応を示さない。

「だけど全部、アンタの憶測だろう?」
「証拠は、あるのかい?」
 シスターの長女と三女が、マドルを問い詰めた。

「貴女方の言う証拠……つまり犯行現場に残っていてはマズいモノが、2つあった」
「なる程。1つは、代役の少女の首だな?」

「ご明察だね、警部。そしてもう1つが、サキカさん自身だ。彼女はマスターデュラハンによって、殺されてなくちゃ行けないからね」

「アンタ、墓穴を掘ったね。そんな証拠、見つかっていないんだろ?」
 次女の菊も、マドルの推理をあざ笑う。

「とうぜん貴女方は、それらの処理方法も考えていた。その日は、土砂降りの大雨だったからね」
「マドル。お前は、そこまで解っているのか?」

「代役となった少女の首は、布か何かに包んで、窓から投げ出せば済む話さ。それをレインコートを着た、貴女方の誰かが回収した」

「確かにあの夜は、土砂降りで屋根を叩く雨音も凄まじく、雷まで鳴ってやがったからな。真夜中に首が1つ転がったところで、誰も気付かないってワケか」

「そしてレインコートを着た貴女方の誰かは、館の玄関へと回り込んで、住み込みのメイド長を呼び出した。それに応じたメイド長が玄関に行ってる隙に、サキカさんは館から逃げ出したのです」

「なるホド。そうやって代役少女の首と、サキカ本人を館から遠ざけたのか」

「フン。何かと思えば、全部アンタの妄想だろ?」
「ウチらは、証拠を示せって言ってるんだ」
「レインコートでも何でも、出して下さいな」

 3人のシスターたちは、その役職に相応しくない口調で言った。

「証拠と言うより、証言なら取れてます」
「な、なんだって!?」
「一体、誰の証言だってんだい!」

「子供たちです」
 マドルの台詞と共に、そこが孤児院だと示す子供たちの声が流れる。

「子供たちだって? ふざけんじゃ、無いよ!」
「ふざけてなどいませんよ、菊さん」
「このガキどもが、何を言ったってんだい!」

「子供たちが、証言してくれました。あの日、居なくなった少女のコトを」
 神於繰 魔恕瘤(かみおくり マドル)は、言った。

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