ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第13章・112話

闇の球(トゥリ・シューラ)

「ルーシェリアの嬢ちゃん、そっちも終わったのかよ?」
 盾としての役割を終えた、ティンギスが問いかけた。

「見ての通りじゃ。それよりご主人サマは、まだ戦っておるのかえ?」
 ねじ伏せたパイ・アを、崩れた観客席に投げ出し、闘技場の1角に目をやる漆黒の髪の少女。

「ああ。なんだか苦戦してやがんな。相手のヤツァ、そんなに強いのか?」
「レオ・ミーダスとやらの剣は、妾の重力剣(イ・アンナ)と似た能力で、重力を操れるからの。ご主人サマも、ジェネティキャリパーの身体強化のみで倒せるかどうか、瀬戸際じゃ」

 ルーシェリアの言う通り、レオ・ミーダスに苦戦を強いられる舞人。

「フン。キサマのおかしな剣の能力は、そんなモノか。それでは、拙者の大暗刻剣(マハー・カーラ)には敵わん!」
 コーヒー色の肌の少年は、黒き剣の能力で周囲の重力を解放した。

「また、ボクを吹き飛ばす気か。それとも、ボクを狙って飛んでくるつもりか!?」
 ガラクタ剣を身構える、舞人。

「それでは、芸があるまい。マハー・カーラの、真の力を見せてくれる」
 レオ・ミーダスが、剣を高らかと掲げると、真上にバチバチとスパークする漆黒の球が出現する。

「な、なんじゃ、アレは!?」
「オイオイ。アイツの頭上に、3っつの黒い球が、出来上がってやがるぜ!」
 崩壊した観客席から様子を伺う、ルーシェリアとティンギス。

「これは、全てを飲み込む闇の球(トゥリ・シューラ)だ」
 マハー・カーラと漆黒の球は、黒いスパークによって繋がっていた。

「まずはその身に、味合わせてくれる!」
 レオ・ミーダスは、マハー・カーラを使って3つのトゥリ・シューラを操り、舞人へと投げつける。

「クッ……この感じ、かなりヤバいヤツだ!?」
 警戒する、舞人。

「アレは、マズいのじゃ。仕方あるまい。妾が手を貸してやるしか、あるまいのォ」

「そうは、させませんよ。貴女のお相手は、わたしが致しましょう」
「なんじゃ、お主は?」
 ルーシェリアが闘技場を見ると、1人の少年が立っていた。

「我が名は、ベレ・ロ・ポンティス。わたしはかつて、ベレ・ロと言う故郷の要人を殺めてしまいましてね。以来わたしの名は、ベレ・ロを殺した者とされました」

 少年は、長身で勇壮ではあったが身体のあちこちに傷がある。
赤銅色のカールした髪に、エメラルド色の瞳をしていた。
白銀の軽装鎧を装備し、手には銀色の剣を持っている。

「本来の名ではなく、名が罪を現わしているというワケじゃな」
「ええ。ですがケッコウ、気に入ってましてね」
「なるホド。イカレれておるわ」

 ルーシェリアも、重力剣を抜き警戒の姿勢を取った。

「グアアアッ!? か、身体が……引き裂かれ!」
 その頃、舞人はトゥリ・シューラの3つの球に挟まれ、苦しみ藻掻(もが)く。

「ククク。我がトゥリ・シューラは、強力な重力場を発生させるのだ。キサマの身体は、バラバラに斬り裂かれる運命にある」
 レオ・ミーダスは、徐々にトゥリ・シューラを、舞人の方へと接近させて行った。

「ガハッ……!?」」
 激しく吐血する、舞人。

「ボ、ボクは……戦争を止めに来た……のに……ここまでなの……か」
 意識が朦朧(もうろう)とし、飛びかけた。

『オイ、舞人。お前、こんなんで諦めちまうのかよ!』
 青き髪の少年の脳裏に、懐かしい声が響く。

『お前は、オレ見てェな勇者に、なりたかったんじゃ無いのかよ』

 シャ、シャロ……リュークさん……!
 それは、本当に聞えたのかも定かでは無かった。

「お前のガラクタ剣の身体強化も、もう持ちはすまい。さあ、大地に血を晒(さら)せ!」
 レオ・ミーダスは、トゥリ・シューラを完全に1ヶ所へと集める。

「イヤア、ま、舞人さんが!?」
「黒い球に、呑まれちゃった!!」
 ウティカとルスピナの悲鳴が、闘技場に木霊(こだま)した。

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