ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

この世界から先生は要らなくなりました。   第11章・第48話

代役の少女

「なにを、仰っているのです。トアカの代役などと、そんなコトが可能でしょうか!?」
 激昂する、伊鵞 昴瑠(いが すばる)の声。

「両親であるヒカルさん夫妻が事故で亡くなり、トアカさんからすれば祖父に当たる重蔵氏も、病を患(わずら)っていた。館で暮らしていたワケでも無い、幼き日のトアカさんの顔を正確に認識できる人間は、ほぼ居なかったと考えられる」

「荒唐無稽(こうとうむけい)な、話です」
「そうでしょうか。それに幼き子供は、日々成長する」

「確かに親戚のコは、いつの間にやら大きくなっているモンだからな。生意気にもなるし」
「誰のコトを言ってるのかな、警部」
 マドルが、釘を刺した。

「幼い少女の代役を立てるコトは、そこまで難しくは無かった。ヒカルさんの生んだ本物のトアカさんは、事故で河に流され行方不明となる。そこを貴女は利用したと、吾輩は考えているのです」

「証拠は、あるのですか?」
「現時点では、ありません」
 キッパリと言い切る、マドル。

「証拠も動機も無しに、刑事さんはわたしを犯人だと決めつけておいでで?」
「そ、そうだぞ。名誉棄損で、訴えてやる!」
 今まで鳴りを潜めていた、伊鵞 豊が声を荒げた。

「まあまあ、お2人とも。オイ、マドル!」
「証拠はありませんが、明確な動機ならありますよ」
「な、なんだってェ!?」

「わたしに、何の動機があると言うのです。わたしは、父の遺産を既に放棄しているのですよ」
「キミ、いい加減にしたまえよ。若気の至りじゃ、すまないコトだってあるんだ」

「トアカさん。確かに貴女は、重蔵氏の遺産の相続権を放棄されてます。ですが重蔵氏の遺産を、貴女の立てた偽物のトアカさんが受け取っていたとしたら?」

「……」
 マドルの問われても、口を開けないスバル。

「フムゥ。重蔵氏の遺産はトアカさんのモノとなり、偽物のトアカさんを貴女がた夫妻が養女として引き取れば、遺産相続争いに巻き込まれるコトも無く、遺産が転がり込むと言った手筈ですか」
 警部の声が、スバルの答えるべき内容を代弁した。

「スバルさんの後援を受け、美しい少女に成長したトアカさんは、貴女の思惑通りに重蔵氏のお気に入りとなった。そして重蔵氏に取り入って、遺言状をしたためる代筆まで任される」

「オイオイ。それじゃあ遺言状の内容までも、偽物のトアカが改ざんしたってのか?」
「竹崎弁護士も立ち会っていたとは言え、重蔵氏も病が重くなり、遺言状の内容確認も覚束(おぼつか)なくなっていたとすれば……」

「動機は、わかりました。確かにトアカが偽物なら、貴方の仰った動機も成立するでしょう」
「ト、トアカちゃんが偽物って証拠は、あるのか。オオ!」

「ありません」
「ホ、ホラな。思った通り、ハッタリだ!」
 妻の援護が出来たからか、意気揚々(ようよう)に喜ぶ豊の声。

「ですから我輩は、殺されたトアカさんが偽物と証明しなくてはならない」
 神於繰 魔恕瘤(かみおくり マドル)は、探偵の凛とした顔になった。

「なあマドル。あまりデカいコトを、言うなよ。なにか当てでもあれば、話は別だが……」
「当てならあるよ、警部」
「ホントか!?」

「ええ。身内を失ったり、両親の離婚などで、行き場の無くなった子供たちの集う場所と言えば?」
「こ、孤児院か!?」
 小さく頷(うなず)く、マドル。

「十数年前のヒカルさん夫妻の事故直後に、素性の薄い代役の少女を素早く見つけられる施設と言えば、孤児院しかありません」

「孤児院だって。そこら中にあるとは言わんが、珍しくもない施設だ。それをくまなく……」
「お忘れですか、豊さん?」
「な、なにをだ!?」

「マスター・デュラハン・第2の殺人の被害者である、渡邉 佐清禍(わたなべ サキカ)さん。彼女は、孤児院からやって来たのですよ」
 マドルの台詞に、ドーム会場がどよめいた。

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