ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

一千年間引き篭もり男・第09章・18話

ステュクス少佐

「ステュクス少佐……確かステュクスって、冥界を流れる河の名前だったな」
 1000年前の記憶を頼りに、ボクは言った。

「ステュクス少佐の、部下の名前も解りますか?」
 取調室のコリー・アンダーソン中佐に問いかける、クーヴァルヴァリア・カルデシア・デルカーダ。

「火のプレゲトーン、忘却のレーテー、悲嘆のコキュートス、苦悩のアケローン。全員が、少尉だ」

 コミュニケーションリングで身体をコントロールされたコリー・アンダーソン中佐は、抵抗すら出来ずに自白させられていた。

「全員がステュクス河の支流とされる、河の名前ですね」
「ああ。プルートやプロセルピナと同じく、コードネームだろう」

「プルート……バルザック・アイン大佐の艦隊は、3個艦隊に見えたがよ。実際には、もっと細かな運用がされてる見てェだな」
 艦橋のモニターを見上げながら見解を述べる、プリズナー。

「ええ。ですが少しは、敵の戦力も解明出来ました。追撃に、備えましょう」
 クーリアの指示と共に、11人の少女たちがそれぞれの任務を開始した。

~その頃~

「プロセルピナのペルセ・フォネーの信号が、消失(ロスト)しただと!?」

 漆黒の艦隊の、旗艦の艦橋(ブリッジ)にて激昂する、若き日のバルザック・アイン大佐。
彼はオリジナルでは無くコピーであり、青みがかった長髪に鉛色の肌をした男だった。

「はい。恐らく堕とされたか、敵に鹵獲(ろかく)されたモノと思われます」
 表情を一切変えずに答える、薄灰色の髪の女性。

 彼女は、血の気の無い白い肌に、アイリッシュグリーンの瞳をしていた。
黒に灰色のラインの入った宇宙服の上に、漆黒のローブを纏(まと)っている。

「コリーが堕とされたなどと、俄(にわ)かには信じられんが……」

「戦場では、誰であっても死と隣り合わせなのです。プルート閣下は、この艦隊の司令官を任されたお方。例え、12神(ディー・コンセンテス)に任命されたコリー中佐であっても、1兵卒の死に動揺されてはなりません」

「わ、判っている、ステュクス少佐。敵艦(クーヴァルヴァリア)の追撃は、可能か?」

「お任せ下さい、プルート閣下。高速艦隊による足止めが行なわれている最中、わたくしの部下の艦隊を先回りさせました」

「ほう。それは頼もしいな」
 若きバルザック・アイン大佐は、ステュクス少佐の肩に腕を回した。

「必ずや、閣下の期待に応えて見せますわ」
 ステュクス少佐は、鉛色の男の胸に身を委(ゆだ)ねた。

 ~再び舞台は、宇宙戦闘空母クーヴァルヴァリアへと舞い戻る~

「右前方に、敵影確認!」
「敵艦隊と、思われます」
「左前方からも、未確認艦隊が接近中!」

 オペレーターのアンリエッタ、アデリンダ、 フーベルタが、現在の状況を主(クーリア)に伝えた。

「どう言うコトです。プルート艦隊の他にも、別動隊が居たのでしょうか?」
 カルデシア財団の令嬢は、ボクの方を見る。

「高速艦隊に先回りされ、突破するのに手こずったからな。もしかするとその間に、先回りをされたのかも知れない」

「どっちにせよ、出るしか無さそうだぜ。宇宙斗艦長よ」
「了解だ、プリズナー。ボクたちは、サブスタンサーで出る」

「宇宙斗。どうか、ご武運を……」
 クーリアの心配そうな瞳に、ボクが映っていた。

「ねえ。今度は、ボクも乗せてってよ」
 格納庫に入ると、美宇宙が声をかけて来る。

「なんだ、お前。足手まといだから、部屋で大人しくしてろ!」
「イヤだよ~だ。ボクだって、アーキテクターで戦えるんだから!」
 美宇宙は、プリズナーの背中にへばり付いた。

「敵の戦力は、未知数だ。こっちも、戦力が多いに越したコトはないさ」
「ホラ。ボクのオリジナルだって、ああ言ってるジャン」

「しゃ~無い。死んだって、文句言うなよ」
 観念したプリズナーは、美宇宙の操る4機のアーキテクターと共に、バル・クォーダで宇宙に出る。

「ゼーレシオン、出るぞ!」
 ボクも直ぐに、その後を追った。

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