ラノベブログDA王

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王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

一千年間引き篭もり男・第09章・05話

クーヴァルバリア

「クーリア……キミの艦へ?」
 ボクを、自身の名を冠する艦へと招こうとする、クーヴァルヴァリア・カルデシア・デルカーダ。

「わたくし共は、宇宙斗艦長に危害を加えるつもりは、一切ございません。宇宙の長旅で、お疲れでしょう。どうか我が艦にて、お寛(くつろ)ぎ下さい」
 Q・vava(クヴァヴァ)から発せられている、クーリアの柔らかい美声が、ボクの緊張を緩めた。

「宇宙斗艦長。おいそれと、応じるんじゃ無ェぞ。声だけじゃ、本物かどうかすら怪しいモンだぜ」
「わ、解っているさ、プリズナー」
 バル・クォーダに制され、接近を躊躇(ためら)うゼーレシオン。

「哀しいコトですが、信じていただけないのも、ムリはございません。わたくしは、火星で数えきれない命を、奪ってしまったのですから」

「クーリア、それはキミのせいじゃない。キミはただ、時の魔女に操られていただけで……」
「艦長、いい加減に目を覚ませ。いつの間にかコイツが、時の魔女の支配下から解放されたとでも思ってやがるのか!」

「そんな都合の良いコトは、思っちゃいないさ。だけどクーリアが今も時の魔女の支配下にあるのなら、解放してやれる可能性だってあるハズだ」

「可能性なんて言葉を使う甘ちゃんの司令官で、戦場で生き残れたヤツは居ないぜ」
 かつての少年兵は、戦場での実体験を語った。

「ご最もな指摘です、プリズナー。では、わたくしが、人質となりましょう」
 クーヴァルバリアはそう告げると、Q・vavaのコックピットハッチが開く。

 コックピット内部から現れたクワトロテールの少女が、ハッチの扉を蹴って宇宙空間へと舞い踊った。

「クッ、クーリア!?」
 白とピンクをベースに、金色のエングレービングの施された、豪華過ぎる宇宙服を来た少女。
ゼーレシオンの巨大な腕が、少女の身体を受け止める。

「ムチャが、過ぎるだろう!」
 ボクは、怒っていた。

「ムチャも、しましょう。だって貴方は、わたくしの……」
「クーリア……」

 ゼーレシオンの掌(てのひら)に収まった少女が、ボクに視線を向けている。
ゼーレシオンの胸にあるコックピットハッチを開けると、彼女はボクの元へと飛び込んで来た。

「ク、クーリア!」
「宇宙斗……」
  金色のヘルメットの中に、真珠色のボリューミーな髪を収めた少女を、ボクは抱きとめる。

「テメーの覚悟が、本物かどうか知ら無ェが、こうさせて貰うぜ!」
 バル・クォーダが、土星で配給された装備の銃を乱射した。

 それは、Q・vavaのポッカリと開いたコックピットに命中し、異形のサブスタンサーは内部から火を吹き出す。

「キ、キサマ、クーヴァルヴァリア様のサブスタンサーに、なんと言うコトを!?」
「Q・vavaを堕とした罪、その身で味わうが良い!」
 Q・vavaに従って編隊を組んでいた、ピンクと薄紫色の機体が、バル・クォーダに銃を向けた。

「お止しなさい。もはやQ・vavaなど、わたくしには不要なのです」
 ボクの胸に飛び込んで来たクーリアは、恐らくはお付きの11人の少女たちが乗っているであろう、サブスタンサーの編隊に命令する。

 ボクたちの目の前で、火星を恐怖に貶(おとし)めた異形のサブスタンサーが、内部から火を吹き出して崩壊した。

「これで良かったのか、クーリア?」
「あんなモノは、消えて無くなってしまった方が良いのです。ですが、アレが消えたところで、わたくしの罪まで消えるワケではございません。それは、解っているのですが……」

 クーヴァルバリアは、寂しそうな瞳を見せる。
桜色の2つに瞳には、ボクの顔が映っていた。

「クーリア。ボクは、キミを信じるよ」
 ボクは、決断を降す。

「ふざけてんのか、艦長。これは、時の魔女の罠だってコトが……」
「解っているさ!」
 ボクは、プリズナーの言葉を制した。

「だけど、ボクはクーリアを信じたいんだ!」
 それは、ただの淡い願望だったのかも知れない。

「ケッ、勝手にしやがれ!」
 バル・クォーダは、ゼーレシオンから遠ざかって行った。

 ボクはクーリアを懐(ふところ)に抱いて、彼女の名を冠する真っ白な艦へと着艦する。
ゼーレシオンは、クーヴァルバリアのデッキに脚を付けた。

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