乱戦の闘技場
「重力の黒き刀(やいば)を、受けるがイイ!」
戦争の中で青春を生きた少年が、大暗刻剣(マハー・カーラ)を振るう。
レオ・ミーダスは、自身を重力から解き放ち、闘技場の壁にめり込んだ舞人に突進した。
「ジェネティキャリパー!!」
ガラクタ剣で自身にバフをかけ、1層の身体強化を図る舞人。
下半身の筋力で壁を蹴り、直前で攻撃をかわした。
「その機転……キサマも、死線をくぐり抜けて来たらしいな」
「そうさ。ヤホーネスの王都では、王さまを始め大勢の人たちが亡くなったんだ!」
「戦争の中で育った拙者にとっては、大勢の人間が死ぬ方がむしろ必然よ!」
ガラクタ剣と大暗刻剣が、斬り結ぶ。
2人の戦いの周辺でも、乱戦は続いていた。
「キサマ、相当の手練れだな。その戦いの業(わざ)、どこで覚えた」
ミノ・テリオス将軍が、敵であるペイト・リオットに賛辞を述べる。
「お前らラビ・リンス帝国の尖兵として、オレたちはいくつもの死線を潜り抜けて来たんだ。お前らが、オレたちを鍛えてくれたのさ!」
黒鉄色の剣(フェイズ・ド・ア・レイ)が、再び光弾を射出した。
「皮肉なモノだな。だが、ラビ・リンス帝国は簡単には堕ちぬぞ!」
雷光の3将の筆頭は、ジェイ・ナーズで無数の鏡を生み出す。
光弾の光を反射させ、真っ白な光の空間を生み出した。
「な、なんだと!?」
「お前は言ったな。鏡は光を反射する……と。お前の光を、利用させて貰った」
光は鏡に当たって反射を繰り返し、熱へと変換されて行く。
「バ、バカなァーーッ!?」
無数の鏡によって収束した灼熱の光線が、ペイト・リオットを襲った。
同時刻、並行してもう1つの戦いが繰り広げられていた。
「どうしたのじゃ、お主ら。最初の威勢は、虚勢だったのかえ?」
ルーシェリア・アルバ・サタナーティアが、奴隷として闘技場に入った3人の少女を追い詰める。
「クッ……身体が、重い!」
「アタシらの能力じゃ、コイツに敵わないってのかよ!」
「いつでも殺せるクセに、バカにしやがって!」
グリィ・ネ、ズリィ・ネ、ブリィ・ネの3人の少女たちは、重力剣(イ・アンナ)によって動きを封じられていた。
「お主らは今、指1本動かせまい。潔(いさぎよ)く、降参してはどうじゃ?」
地面にひれ伏す3人に向って、降伏を勧めるルーシェリア。
「ここで降っては、地獄で親父に会わす顔がない!」
「さっさと、首を刎ねるがイイ」
「勝者の権利だ。好きにしろ……」
「見事な覚悟じゃ。ならば遠慮なく、そうさせて貰うぞ」
ルーシェリアは、重力剣を振りかざした。
「させない……」
囁(ささや)き声と共に、3人の少女の前に、巨大な斧を持った少女が立ちはだかる。
「なんじゃ、お主は。コヤツらの、仲間のようじゃが……」
「パイ・アは、パイ・ア。グリィ・ネたちは、トモダチ!」
少女は、薄いピンク色の長いボサボサ髪で、背は低かった。
頭からイノシシの毛皮を被り、顔も口元以外はイノシシの頭部を装備していて見えない。
「お主、パイ・アと言うのかえ?」
「そう。パイ・ア」
「友を護るために、妾と戦うのじゃな?」
「うん。パイ・ア、トモダチだいじ。ワラワと、戦う!」
像のような2本の大きな牙の生えた斧を構える、パイ・ア。
「妾(わらわ)は、名前では無いのじゃが……まあ、良かろう。相手をしてくれるわ!」
イ・アンナで、パイ・アの動きを止めようとするルーシェリア。
「ン……なんか身体が重い?」
けれどもパイ・アは、足を地面にめり込ませながらも、ルーシェリアに近寄って行く。
「コ、コヤツ、イ・アンナの能力が、効いていないじゃと!?」
漆黒の髪の少女は、尚もイ・アンナの重力を強めた。
「ま、いっか。クロミュ・オーン!!」
パイ・アは、巨大な斧を自身を中心に振り回し始める。
コマのようにグルグルと回転し、凄まじい勢いの大戦斧でルーシェリアを吹き飛ばした。
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