最果ての激戦3
近距離であれば、ワープが可能となったツィツィ・ミーメ。
異形の巨大サブスタンサーによる攻撃は、次第に苛烈さを増して行った。
「ど、どうするよ、宇宙斗艦長。あの巨体で、ポンポンワープされちまったら、こっちも戦いようが無ェぜ。さっさと対策を考えないと、どうにもならねェ!」
死線をいくつも潜り抜けて来た、かつての少年兵が窮状(きゅうじょう)を訴える。
「解っているさ、プリズナー。だけど、こんなのどうやったら……」
ゼーレシオンのフラガラッハが、ツィツィ・ミーメの巨体を斬り裂こうとした。
けれども異形のサブスタンサーは、瞬時に巨体を消す。
「うわぁ、後ろだよ。後ろにアイツが、現れた!」
「な、なんだとッ!?」
バル・クォーダの斜め後ろに現れたツィツィ・ミーメが、プリズナーたちを襲う。
「チィィーーッ!!」
必死に戦斧で攻撃を凌ごうとする、バル・クォーダ。
けれども無傷とは行かず、激しく弾き飛ばされた。
「プ、プリズナー!?」
「油断すんな、艦長。背後に、行ってやがる!」
「え……?」
ゼーレシオンの触角が、背中に気配を感じる。
「グワァッ!?」
逃げようとするも時すでに遅く、ツィツィ・ミーメの下半身であるムカデのような巨大肋骨で、後ろから羽交い絞めにされるゼーレシオン。
「どうしよう。オリジナルのボクが、捕まっちゃったよ!?」
ボクに瓜2つな少女、群雲 美宇宙が叫んだ。
「クッ……ケツァル!」
偶然、ゼーレシオンの背中から外れていたケツァルコアトルが、口からのレーザーでツィツィ・ミーメを攻撃する。
「よ、よし、これで何とか、脱出できる!」
巨大肋骨から、逃げ出すゼーレシオン。
「あッ! ドラゴンが、やられちゃった!」
代償として、ゼーレシオンはケツァルコアトルを失ってしまった。
「どうやらアイツ、徐々にオレたちの戦力を、削って行く算段らしいな」
「エエッ!? そんなの、ジリ貧じゃん!」
「だから、そうしてやがんだ」
プリズナーと美宇宙の会話が、ゼーレシオンの巨大な触手を通じて聞こえる。
「もう、成り振り構ってられる状況じゃない。アレをやるしか……」
ボクは、ブリューナグを撃つコトを覚悟した。
「待って下さい、宇宙斗艦長!」
巨大な触角が、聞き覚えのある声を、ボクの脳裏に伝える。
「その声……メルクリウスさん!?」
「ええ。援軍に、駆けつけました」
虚空の宇宙に、メルクリウスさんの水色のサブスタンサー、テオ・フラストーの姿があった。
「気を付けてください。ツィツィ・ミーメは、ワープが可能になったんです」
「了解してますよ。ボクのテオ・フラストーとて、こんな芸当くらいは出来るんです」
両腕に装備されたガントレットから、水色の弾をいくつも射出する、テオ・フラストー。
「いつもの、エネルギー弾じゃない?」
「ええ、これは水の球です」
水色の球は、まるで泡のようにテオ・フラストーを取り囲んだ。
しばらくすると、泡のいくつかがいきなり割れる。
「そこです!」
泡が弾けた方角に向け、ガントレットからエネルギー弾を発射する、テオ・フラストー。
空間からツィツィ・ミーメが現れ、その巨体に被弾した。
「やったか!」
「いいえ。テオ・フラストーのエネルギー弾の威力では、ツィツィ・ミーメの装甲は抜けません」
「だったら、どうするよ?」
「3機が、1ヶ所に固まるのです」
「ケッ! 軍師サマにしちゃあ、単純さ作戦だぜ」
「でも、効果的だ」
ゼーレシオンとバル・クォーダは、テオ・フラストーの元に集まる。
その周囲を、水の球が取り囲んだ。
「これで、ツィツィ・ミーメがワープして来ても、事前に予測が付く」
「そう、上手く行けばイイんだがな」
皮肉を言う、プリズナー。
「み、見て! アイツの、下半身がバラバラになってる!」
美宇宙が、叫んだ。
「こ、これは……」
言葉を失くす、メルクリウスさん。
ツィツィ・ミーメの大きな肋骨で構成されたムカデのような下半身は、肋骨1つ1つのパーツに分解され、巨大なハサミとなって1斉にボクたちを攻撃して来た。
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