ラノベブログDA王

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一千年間引き篭もり男・第08章・77話

最果ての激戦2

 ホワイトボードに、太陽を直径4センチのピンポン玉の大きさで真ん中に描き、正確な距離の縮尺で太陽系を描けと言われた場合、ただ太陽だけを描けば良い。

 それが、正解なのだ。

 何故なら、太陽と太陽系第1惑星である水星との平均距離は、太陽の直系の約41倍離れている。
太陽の直径を4センチとすれば、水星までの距離は約1.6メートルであり、ほとんどのホワイトボードの外側にあるからだ。

 例えかなり横長なホワイトボードであったとしても、太陽を直径4センチとした場合の水星の大きさは、髪の毛の先よりも小さい。

 太陽系第1惑星との距離でこれなのだから、地球との距離はもっと離れている。
約1億5000万キロメートルが、その平均的な距離だ。
地球は、太陽の直系の約108倍の距離にあり、ピンポン玉の太陽から4メートル以上離れている。

 太陽から地球までの平均距離を、人類は天文単位で1AUと呼ぶコトにした。
宇宙のスケールは、地球の距離感とは余りにスケールが違い過ぎるからだ。

 そして今、ボクたちが戦っている準惑星エリスの公転軌道半径は、約68AU。
太陽から地球までの距離の、約68倍と言うワケだ。

 直径4センチのピンポン玉の小さな太陽からでも、約30キロ離れている。
縮尺を、本来の太陽の直系である139、2000キロメートルに戻せば、準惑星エリスとの距離は、途方もなく離れているのだ。

 太陽を中心とした、半径68AUの超巨大円盤(ディスク)の中で、ボクはプリズナーの救難信号をキャッチし、偶然にも出会うコトが出来た。

……これホド都合の良い幸運が、あるだろうか?

「オイ、宇宙斗艦長。ボサッとしてんじゃ無ェ!」
 プリズナーの怒声が、ゼーレシオンの高感度触角を伝わって聞こえた。

 目を開けると、目の前に4体のQ・vic(キュー・ビック)が迫って来ている。

「わ、うわあッ!?」
 慌てて目の前のQ・vicを斬り伏せ、返す刀で両脇に回り込んだQ・vicをも両断した。

「まったく、世話の焼ける」
 もう1機は、プリズナーのバル・クォーダが倒してくれる。

「すまない、プリズナー」
「貸しに、しといてやるぜ。戦場じゃ、少しの油断が命取りになる。気を付けな」

 ゼーレシオンから、離れて行くバル・クォーダ。
どうやら戦闘は継続していて、ボクも無意識の中で戦っていた様だ。

「それにしても、ツィツィ・ミーメには迂闊に近づけやしねェ」
「そうだな。白い髪の毛が、厄介だ」

「だったらさ。飛び道具で、殺っちゃおうよ」
 群雲 美宇宙(むらくも みそら)が、無邪気に提案する。

「残念だがバル・クォーダにゃ、飛び道具は積んでねェ。艦長、アレは出来るか?」
 プリズナーの声が、言った。

「ブリューナグか。エネルギー消費は激しいし、アレに乗っているのはミネルヴァさんなんだぞ!」

「いいか、良く聞け。ツィツィ・ミーメに乗ってんのは、時の魔女に操られたミネルヴァの死体だ。ただ魂の抜けた身体を、時の魔女が操っているに過ぎん」

「そ、そうかも、知れないが……」
「か、艦長! 前だよ!」
 ボクが迷っている間に、異形のサブスタンサーは目の前に迫っていた。

「い、いつの間に!?」
 かなりの距離があると思っていたボクは、ツィツィ・ミーメからの攻撃を盾で防ぎ、慌てて離脱する。

「あの図体で、素早いヤツだぜ」
「プリズナー、そっちだ!」
「なにィ!?」

 ゼーレシオンの前に聳(そび)えていた巨大サブスタンサーは、今度はバル・クォーダの前に姿を顕(あらわ)した。

「なんだって、意味がわからねェぜ!」
 ツィツィ・ミーメの攻撃を、2挺戦斧で跳ね除けるドクロの顔のサブスタンサー。

「アイツったら、近距離ならワープ出来るみたいだよ。反則じゃん!」
「……らしいな。まったく、時の魔女はなんだってアリだな」
 バル・クォーダのコックピットの中でボヤく、美宇宙とプリズナー。

「あんな能力、前に戦ったときは無かったぞ」
「どうせ新たに、獲得したんだろ」

「そう……なのか?」
 ボクは戦いの不自然さに、違和感を感じ始めていた。

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