ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

キング・オブ・サッカー・第9章・EP039

最後の猛攻

 リベロのカイザさんから、攻撃的MFのスバルさんへ、ノープレッシャーで縦パスが入る。

「この日本に帰って来るまで、飛行機の中で退屈してたからよ。45分、タップリ暴れさせて貰うぜ」
 後半から投入されたスバルさんは、エネルギーに満ち溢れていた。

「クッ、ここをやらせるワケには……」
「な、なんとしても、止めるであります」
 雪峰さんと杜都さんが、スバルさんに対しプレッシャーをかける。

「そんなヘロヘロ状態で、オレが止められるとでも思ったか?」
 野性的な筋肉を躍動させ、ボールを持ち上がるスバルさん。
前半をやっとの思いで凌(しの)いだボランチの2人に、スバルさんを止める体力は残って無かった。

「オイ、ボールをよこしな!」
 バルガさんが、ファー(遠い)サイドに開いてボールを要求する。

「もう失点は許されないよ、龍丸!」
「解っているさ、亜紗梨(あさり)。これ以上の陰謀など、あってなるモノか!」
 守備に奔走(ほんそう)させられたセンターバック2人が、必死にバルガさんを押えた。

「こっちだ!、スバル」
 左サイドバックのトラヤさんが、フリーだとアピールする。
けれどもそこには、野洲田(やすだ)さんが素早くマークに行った。

「先パイ方よ。ど真ん中開けてくれて、サンキューだぜ!」
 ペナルティエリア手前から、そのままシュート体制に入るスバルさん。

「なッ……!?」
「しまった!」
 結果的に、ゴール正面をポッカリと開けてしまっていた。

「あのデブなら、これでも決まるだろ」
 コースを狙ったシュートを放つ、スバルさん。

「うわあァァ!」
 海馬コーチは太った身体を必死に広げ、ゴールマウスを護ろうとする。
けれどもシュートコースには、全く入れて無かった。

「ああ、また失点ね!」
「イヤ、そうでも無いですよ、セルディオス監督」
 ベンチで倉崎さんが、監督の言葉を否定する。

「なんだとォ!?」
 ゴールを確信していたスバルさんも、驚きの表情を浮かべていた。

「フウ、ココは何とかなりましたね」
 スバルさんのシュートを防いだのは、柴芭さんだった。

 海馬コーチと侮(あなど)ってか、コースを狙った緩めのシュートを放ったのが裏目に出て、柴芭さんに胸トラップされてしまう。

「御剣くん!」
 柴芭さんから、ロングパスが放たれた。
流石のMIEの選手たちも、攻撃にかかり気味でパスをカットできない。

 し、柴芭さん!
 ボクの足元に、ピタリと収まったボール。

 ボクよりゲームを支配でき、ボクより技術があり、ボクよりサッカーIQが高く、洗練されたエレガントなプレイをする柴芭さんが、泥臭い守備で必死に繋いでくれたボール。

 絶対に、決めてやる!!

 ボクは、心に誓っていた。
同時に、疲れ切っていた身体が、勝手に動き出す。
ドリブルを開始し、今度は中央に向かって行った。

「オイオイ、御剣 一馬。疲れ果てて、判断をミスったな」
「体力が削られた状態で、オレたちを抜けるハズが無い」
 ボクの行く手を阻む、ネロさんとスッラさん。

 鉄壁のダブルボランチが待ち構える門に、どれだけの攻撃を跳ね返えされて来たコトだろう。
でも、抜けない壁じゃない。
ボクたちデッドエンド・ボーイズだって、何度かは突破出来たんだ!

「コ、コイツ、これだけの点差がありながら、まだ諦めて無ェのかよ!」
 ネロさんが背中から、ボクの肩に手を掛け引っ張ろうとする。
プロフェッショナルファウル覚悟の、プレイだ。

 でも、ここで止められたら、もう2度とチャンスは無い。
絶対に、止まっちゃダメなんだ!

 ボクの肩から、ネロさんの手がスルリと抜ける。

「フッ。流石はカイザキャプテンが、1目置くだけはある。だが……」
 ボクが加速したところを、スッラさんが狙っていた。

 ネロさんがボールフォルダーにアタックし、その隙を突いてスッラさんがボールを奪う。
MIEのボランチコンビの、常套(じょうとう)手段じゃないか。

 こ、ここまでか……。
スッラさんの長い脚が、ボクのボールに正確に、確実に迫っていた。

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