ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

キング・オブ・サッカー・第9章・EP031

特急列車(エクスプレス)

「カイザ、次はオレに行かせろ」
 カイザさんのドリブルに、後ろからMIEの選手が追い付いて来る。

 左センターバックの、煤季 鞍棲(すすき クラス)さんだ。

「クラス……お前が斬り込むのか?」
「ああ。そろそろ1点、欲しいところだろ」

「まあな。これが、ラストプレイになる可能性も高い。ならば、任せたぞ」
 しばらく並走していた2人だったが、カイザさんがクラスさんにパスを出し、自身は最終ラインへと帰って行った。

「サンキュー、カイザ。大口叩いた以上は、点を決めねェとな」
 直線的なドリブルで、中央を駆け上がって来るクラスさん。
センターバックをやるくらい大柄なだけに、脚のスライドも長く特急列車のように加速する。

 マズい……ココはなんとしても、止めないと!?
 センターサークル付近にまで戻っていたボクは、クラスさんのドリブルコースに入ろうとした。

「甘いな。オレの方が、早い!」
 迷うコト無く加速する、クラスさん。
ボクのチャージが、遅れ(レイト)気味に入ってしまう。

『ピーーッ!』
 審判の笛が鳴り、プレーが止められた。

 イエローカードは出なかったケド、相手にフリーキックを与えてしまう。
マズった……でも、あのまま行かせるワケには、行かなかった。

「御剣隊員、ファウルでありますな」
「ああ。だが良く止めてくれた。この距離でのフリーキックであれば、直接は狙って来ないだろう」
「では自分は、バックラインに加わるであります」

 杜都さんと雪峰さんの2枚のボランチは、ボールをペナルティエリアに放り込んで、バルガさんの頭に合わせるのだと予測する。
壁は最小限にとどめて、ペナルティエリア内の人数を増やした。

「痛ってェな。まったくよ……」
 文句を言いながら、ゆっくりとボールをセットするクラスさん。
気付かなかったケド、この時ちょうど時計のカウントが45分を周っていた。

「今度は、ちゃんとしたボール入れろ!」
 バルガさんが、チュニジア語なのかフランス語なのか、なにやら怒鳴っている。

「バルガには、オレと亜紗梨の2枚が付く。野洲田(やすだ)は、右サイドのヤツをマークだ」
「了解だぜ、龍丸」
「ここをしのげば、ハーフタイムだ」

 デッドエンド・ボーイズの3枚のセンターバックも、互いに声を掛け合いロングボールを警戒した。

「バルガには2枚、トラヤには1枚か……」
 自分たちの攻撃陣に対するマークを確認しつつ、セットしたボールから後ずさりするクラスさん。

「一馬、できるだけ高くジャンプしろ」
 壁は、ボクと雪峰さんの2枚だけであり、ボクはキャプテンの指示に頷(うなず)いた。

「じゃあ、行くぜ……」
 クラスさんが、少し長めの助走から、左脚を素早く振り抜く。

「ここだ!」
 激しいインパクトが、ボールを変形させた。

「なッ、シュートだと!?」
 空中で驚く、雪峰さん。
同様に飛んでいたボクにも、成す術は無かった。

 センターサークルから放たれた鋭いシュートが、1瞬でペナルティエリアへと進入する。
ボールは、バルガさんのマークに付いた龍丸さんら2人と、トラヤさんのマークに付いた野洲田さんの間を通り抜けた。

「……ああッ!」
 海馬コーチは、安定して反応すら出来ない。
クラスさんの超ロングシュートは、ボクたちのゴール左隅に決まっていた。

「やったァ! MIEの3点目だぜ!」
「クラスが、決めてくれた!」
「あの距離が、入るのかよ!」

 サーキットに隣接したスタジアムに、歓声が湧き上がる。
スタジアム全体に、MIEのチームカラーである黒と赤(ロッソネロ)のチームフラッグが揺れた。

 電光掲示板にMIEの3点目が記録され、落胆し頭を下げるデッドエンド・ボーイズのメンバー。
ここに来て、徐々にチーム力の差が浮き彫りとなりつつあった。

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