ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第13章・75話

目覚め始める魔剣

 異空間へと姿を消した、魔王ケイオス・ブラッド。
地下闘技場の中央に仁王立ちした大将軍ミノ・ダウルスは、その気配を神経を研ぎ澄まし探っていた。

「あの男、ラビ・リンス帝国最強を名乗るだけあって、大したモノだぜ……」
 アッシュブロンドの長髪の男が、ピリ付いた場の空気に冷や汗を垂らしながら呟く。

「感心している場合では無かろう、ティ・ゼーウスよ。ケイオスだけで、なんとならなかったときは、我々で突破口を切り拓くしか無いのだぞ」
 次元迷宮の製作者である、ダエィ・ダルスが注意を促(うなが)した。

「ボクはケイダンを、信じているからね。それにしたってアイツ、ボクをぞんざいに放り投げやがって……覚えてろよ」
 身体の汚れを払いながらボヤく、サタナトス。

「ケイダン? 誰だ、そりゃ?」
「魔王ケイオス・ブラッドの、人間だった頃の名だよ。ボクとアイツは、同じ孤児院で育ったのさ」

「心を許せる、副臣ってワケか。やはり王になるのであれば、信頼できる人材が必要だな……」
 王になると豪語してはばからない少年は、物思いに伏せる。

「ティ・ゼーウスよ。今は、戦いの真っ最中だ。他事を考えるのは、あとにするのだな」
「それも道理か。今考えたところで、解決できる話でも無ェからよ」
 ティ・ゼーウスは、年長者の意見に素直に従った。

 サタナトス、ティ・ゼーウス、ダエィ・ダルス。
3人の会話が続いていた間にも、ミノ・ダウルス大将軍は微動だにせず、異空間からの気配に耳を澄ましていた。

「ㇺッ、そこか……」
 右斜め後ろに気配を感じた大将軍は、大戦斧(アステリオス)で闘技場の床を突く。

「なにィ!?」
 けれども波動は広がらず、空間の裂け目も消えなかった。

「なんだァ。デカい斧で、波動を出すんじゃ無かったのかよ!?」
 ミノ・テリオス将軍の設置した鏡越しに、地下闘技場の戦いの経過を眺めていたティンギスが、驚きの声を上げる。

「オイ! 見ろよ、ティンギス。闘技場の床に、気持ち悪い内臓みたいなのが、張り付いてやがるぜ!」
「あの臓物がジャマして、波動が乱れたのだな……」
 レプティスとタプソスが、見解を述べた。

「悪いが、そう言うこった。オレのハート・ブレイカーは、臓物や動脈となって、この地下闘技場の床全面に、張り付いているぜ」
 心臓のように脈打つ、真っ赤な鍔(つば)の剣を手にした、ティ・ゼーウス。

 その剣身が、真っ赤なクモの巣のように闘技場の床を、覆い尽くしていた。

「小賢しいマネを!!」
 咄嗟(とっさ)に大戦斧を握り、旋回しながら攻撃をする大将軍。

「1手、遅れたな……」
 魔王ケイオス・ブラッドが、次元の裂け目から1足先に姿を現し、大将軍に1撃を加える。

「グッ……ヌウゥ!!」
 攻撃を喰らい、後ろに下げさせられる大将軍。
袈裟斬りに、異空間が広がっていた。

「だが、我が攻撃も、姿を現したキサマを撃ちのめす!」
 竜巻の如く旋回した大戦斧の1撃が、ケイオス・ブラッドの身体に直撃した。

「ガ八ッ!」
 ケイオス・ブラッドの身体が、衝撃で激しく拉(ひしゃ)げ、凄まじい勢いで闘技場の壁に叩き付けられる。

「ケイダンッ!!」
 目の前で盟友を倒され、慌てるサタナトス。

 金髪の少年の前で、仁王立ちしたままのミノ・ダウルス大将軍。
身体に刻まれた時空の裂け目の向こうには、星が煌めく深淵の空間が覗いていた。

「よくもケイダンを、やってくれたね。流石と褒めたいところだケド、今のボクは怒りを押さえ切れそうに無いんだ……」
 魔晶剣プート・サタナティスを実体化させ、動けない大将軍の方へと近づいて行くサタナトス。

「さっき女将軍を斬ったときに、感じたんだ。お前は、もう直ぐ目覚めるって」
 アメジスト色の剣身に自身の顔を映すと、そこには真っ赤な2つの瞳が輝いていた。

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