地下ドッグポートの激戦
セノーテ地下には、巨大な地下空間があり、更に下には潜水艦用の地下ドッグポートがあった。
迫り来る汚水の巨人を相手に、劣勢を強いられる2人の少女。
「ねえ、真央。巨人って、まだいっぱい居ますよね?」
ドームの外の戦況が判らない、セノンが親友を心配する。
「ああ。だが、心配すんな。お前のお陰で、目が弱点だって解ったからな。それに上から流れて来たのは、なにも悪いモノばかりじゃねェ」
「良い目玉も、流れて来てるですか?」
汚水の巨人の正体は、目玉だった。
目玉を核に汚水を集め、水の巨人の姿を維持する。
その核となる目玉が、隕石によって破壊されたセノーテから、プカプカと汚水に乗って下方の地下ドッグへと流れて来ていた。
「そんなワケあるか。上の地下空間で戦ってたヤツらが、戦線を後退させて合流したんだ」
タンガタ・マヌーでドッグ上空を飛ぶ真央が、おっとりした親友に朗報を伝える。
「み、みんな、無事なんですね。ヴァルナやハウメアも?」
「それ、こっちの台詞……」
「セノンが勝手に、ドッグに向かったんでしょうが」
2人の友人の声が、コミュニケーションリングを通じてセノンに伝わる」
「ゴ、ゴメンなさいなのですゥ。でも、良かった……2人とも、無事で」
安堵する、セノン。
「でも、巨人が復活してる……」
「セノーテの、天井で戦ったヤツね。しかも、こんなにたくさん増えちゃって」
「ヴァルナ、ハウメア。巨人の弱点が、目玉だって判った。目玉を、集中的に攻撃してくれ」
タンガタ・マヌーの鋭利な翼で、巨人の目玉を切り裂いて見せる、真央。
「オオ、凄い……」
「巨人が、1瞬で汚水に元った」
驚く、ヴァルナとハウメア。
「そう言うコトだ。雑魚の巨人は後回しにして、ドッグのドームに貼り付いてるデカいのを、先に倒したい。強力してくれ」
「うわ、デッカ……」
「了解だよ。MVSクロノ・カイロスの、オペレーター3人娘の連携を見せてあげようよ」
真央、ヴァルナ、ハウメアの操る3機のサブスタンサーが、セノンが護るドームに貼り付いた巨人を倒すべく、行動を開始した。
「聞いたかい、みんな」
「アタシらは、ドッグポートの巨人どもをやっつけるよ!」
「狙いは目ん玉だ。気合入れな!」
セシル、セレネ、セリスの、長女ショチケの娘3人が指示をする。
「アタシらは、上から降りて来るヤツを撃破するよ」
「大ザルや大グモどもを、なんとかする」
「巨人のコアの目玉も、流れて来たら撃っちまいな」
マクイの娘の、マレナ、マイテ、マノラが、上層からの水の進入口に貼り付いた。
ジャガーグヘレーラーのアサルトライフルで、適時攻撃する。
「アタイらは、どうしよっか」
「そうだな。遊軍ってのを、ヤロウぜ」
「ヤバそうになったところに、駆けつけるんだな」
末妹であるチピリの娘の、シエラ、シリカ、シーヤの3人は、姉たちのサポートに周った。
「ヴァルナ、ハウメア。このデカい巨人は目が複数ある上に、顔の水も厚みがあって最悪吸収されちまう。まずそこを、なんとかしねェと」
「了解、真央。まずは、わたしがやってみる……」
ヴァルナのサブスタンサーであるヴァール・バルカが、水の羽衣の袖(そで)を伸ばして、巨人の背中へと近づいて行く。
「コ、コイツ……!?」
「どうした、ヴァルナ?」
「この巨人、汚水のひと際汚れた部分だけを、取り込んでる……」
「どう言うコトだ?」
「ヴァール・バルカのナノ・マシンの水でも、浄化に時間がかかる……」
巨人の背中の、水の羽衣の触れた僅かな部分が、青い綺麗な水へと変化していた。
けれどもそれも、直ぐに汚水に紛れて消えてしまう。
「海の水を真水に変えようとしても、直ぐに海水と混じってしまうのと同じだよ、真央」
「ハウメア、お前のサブスタンサーじゃ、どうにかならないか?」
「まあ、やってみるさ。行くよ、クホオ・ネ・エヌウ!」
溶岩のドレスを纏(まと)ったサブスタンサーが、動き出す。
ドレスが汚水の巨人の脚に触れると、大量の水蒸気が発生して視界を悪くした。
「やったか?」
「イヤ、ダメだ。余りにも、汚水の量が多過ぎる」
巨人の脚は、地下ドックポートの海水に浸かっており、ポートは広大な海とも繋がっていた。
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