ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

キング・オブ・サッカー・第9章・EP023

サッカーと卓球

 小学生のボクは、それからもおじいちゃんに誘われ、卓球をするコトになる。

 雨の日のボクが、スポーツセンターの方に寄り道すると出会うこともあったケド、多くのケースではボクの帰宅路に、たまたまおじいちゃんが立っていた。

「どじゃ。卓球でもせェへんか?」
 喋るのと同じくらい、断るのが苦手なボクはいつも頷(うなず)く。

 おじいちゃんの方も、今考えればボクがサッカーボールを持ってないときに限って、声をかけてくれたんだと思う。

「一馬、サーブ上手なったな。ラリーでも、えげつにゃあドライブかけよるわ」
 ボクはおじいちゃんから、卓球のサーブやドライブのかけかたを教わった。

 ラケットを振り上げて打つ、卓球のドライブ。
ピンポン玉が相手コートに入ると急激に落ち、跳ね上がる。
その動きが面白くて、ボクはひたすら練習した。

 いつの間にやら、おじいちゃんより卓球が上手くなっていったボク。

 でも、中学に入ると通学路はスポーツセンターとは真逆になり、次第に足も遠のいた。
中学になった頃、母から卓球をしたおじいちゃんが亡くなったと知らされる。

「これ、おばあちゃんが持って来て下さったわ。おじいちゃんが、アンタにって……」
 そう言って手渡されたのは、ボクが小学生の頃に借りて使っていた、ペンホルダーのラケットだった。

「カーくん、今日は卓球かぁ。よく飽きないわねェ」
 セーラー服姿の奈央が、椅子に逆向きに座りながら呆れている。

 ボクの家にはガレージがあって、父親が昔買って使わなくなっていた、簡易的な卓球台もあった。
雨の日は、それを引っ張り出して卓球をする。

「カーくん、まったく喋らないんだから。中学のサッカー部にも、地元のサッカー少年団にも、入れなかったのよね。呆れちゃうわ」

「うるさいなあ。喋らないんじゃなくて、喋れないんだよ」
「一緒でしょ。わたしとは、普通に喋れるのにさ。でも、1人で壁と卓球やって、面白いワケ?」

「奈央とやるより、マシだよ。壁はちゃんと、打ち返してくれるから」
 形見のペンフォルダーで、ドライブをかけピンポン玉を壁に打ち放つ。

「えー、えー、そうですか。だけど一馬ったら、いつの間に卓球まで上手くなったワケ?」

「卓球もサッカーも、まだまだだよ。でも……そうだなあ。2つはなんだか似てるんだ」
「卓球と、サッカーがってコト? どこがァ?」

「ボールに、回転をかけるトコがかな。例えば野球だと、ボールに回転をかけるのは同じでも、指で挟んだりして回転をかけるだろ」
「ふ~ん、そうなんだ」

「でもサッカーで、脚で挟んで回転をかけるなんて、あり得ない」
「ふ~ん、そうなんだ」

「サッカーだと、ボールのどこをどうやって打つかで、回転をかけるんだ。それは、卓球と同じでさ。卓球だと、ラケットでピンポン玉のどこをどうやって打つかで、色んな回転をかけれる。こうやってね」

 ボクは、様々な回転のボールを、壁に向かって打つ。
壁に当たって、跳ね返って来たボールにも回転がかかっていて、再び回転をかけ打ち返した。

「ふ~ん、そうな……あ痛ァッ!」
 ピンポン玉が、奈央のおでこにヒットする。
椅子から、ひっくり返って落下する奈央。

「ちょっと、カーくん。ぜったいワザとでしょォ!」
「奈央が人の話、聞かないからだよ」

 昔の思い出が、ボクの脳裏を駆け巡る。

「オイ、一馬。ボーっとして、大丈夫かァ?」
 紅華さんの声で現実に返ると、ピンポン玉では無くサッカーボールが、目の前にセットされていた。

 コクリと、頷(うなず)くボク。
天国に行ってしまったおじいちゃんを思い出しながら、ボクは助走を取った。

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