ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第13章・65話

帝国の覇王

 次元迷宮(ラビ・リンス)の、地上と地下を結ぶ要衝(ようしょう)に築かれた砦。
その最上階の1室で、美貌の女将軍は死んだ。

「アステ・リア。わたしはキミを……助けられなかった……」
 ミノ・テリオス将軍は、真っ赤なシーツに纏(まと)わり付いた、真っ白な髪の毛を握りしめる。

「シャロリュークさんに次いで、ミノ・アステ将軍まで……」
 床に叩き付けられたジェネティキャリパーに、突っ伏す舞人。

 想い人を失った、ミノ・テリオス将軍。
再びサタナトスの陰謀の犠牲者を、目の当たりにした舞人。
2人とも、言葉を失っていた。

 沈黙しているハズの部屋の大きく開いた窓から、遠くの歓声が聞える。
歓声は、丘の上にある闘技場から、海風に乗ってやって来ていた。

「わたしは、王の身を護らねばならない。王に、忠言をせねば……」
 将軍は立ち上がって、真っ赤なシーツをベッドに被せる。

「ミノ・アステ将軍が……あなたにとって、大事な人が死んだんですよ! よく冷静で……」
 感情に任せて言い寄った舞人も、ミノ・テリオス将軍の憤怒の顔に口を閉ざす。

「冷静で、いられるワケが無いだろう。だが、ここで我を失ったところで、彼女が喜ぶハズがない。アステ・リアと共に忠誠を誓た王を護るコトが、わたしの使命だ」

 将軍が、鏡の剣ジェイ・ナーズを振りかざした。
元々部屋にあった姿見とは別に、壁に大きな鏡が出現する。

「因幡 舞人。キミも、闘技場に来てくれ。恐らくアステ・リアを殺したヤツらも、王の命を狙っているハズだからな」
 鏡の中へと消える、ミノ・テリオス将軍。

「わ、わかりました。ボクは、戦争を止めに来たんだ。そのためにも、王には生きていて貰わないと」
 舞人も、鏡の世界へ足を踏み入れた。

 闘技場に集った観衆が、ミノ・リス王の登場で1段と大きな声を張り上げる。

「ミノ・リス王、バンザイ!」
「ミノ・リス王! ミノ・リス王!」
「最強の覇王、ミノ・リス王!」

 軍事国家に置いて、強き軍隊を率いて周辺諸国を蹂躙(じゅうりん)する王は、英雄であり尊敬を集める存在だった。
けれども、そうで無い国からやって来た3人の船長たちは、理解に苦しんでいる。

「アレが、ミノ・リス王かよ。もっと強そうなヤツを、想像してたんだがな。黄金のマントなんざ纏(まと)っちゃいるが、ショボくれたジイさんじゃねェか」
 豪華な観覧席で、少女たちをはべらせながらふんぞり返る、ティンギスが言った。

「滅多なコトを、言うモノでは無いぞ」
「ここが、どこだか判っているのか?」
「歓声にかき消されているから、イイものの」

「憲兵の耳にでも入れば……」
「全員処刑は、免れんのだぞ」
「偶然勝利を得たからと言って、調子に乗るな」

 ティンギスの周りに集った、イオ・シル、イオ・セル、イオ・ソルと、ハト・ファル、ハト・フィル、ハト・フェルが、主に釘を刺す。

「ヘイヘイ、わかったよ。確かにここで、王サマの悪口を言うモンじゃねェか」
 ドレッドヘアの船長は、小うるさい少女たちを数人、自分の両脇に抱き寄せた。

「ホントに、わかってんのかァ、お前」
「考えても見ろ。王がこれだけの観衆の前に、姿を見せてんだぜ」
 レプティスとタプソスも、軽率な友人を注意する。

「暗殺される危険も、顧(かえり)みずにってコトか……」
 観覧席から、丁度向かい合ったところに位置する、貴賓席の王を見るティンギス。

「イヤ、王は警戒心の強いお方だ」
「例え身内であろうと、近寄らせないホドにな」
「アレにおわす王は、幻影の魔法でのお姿よ」

 スラ・ビシャ、スラ・ビチャ、スラ・ビニャの、3人の少女たちが説明した。

「なんだよ、幻滅させんなァ……って、オオオ。メチャクチャ綺麗な女性が、いるぞ!」
 抱えていた少女たちを跳ね除け、身を乗り出すティンギス。
黄金のマントの王の隣には、白と黄金のドレスを着た王妃の姿もあった。

「あのお方はミノ・リス王の王妃、パルシィ・パエトリア様だ」
「美しさと知性を兼ね備えた、優雅なお方なのです」
「それにミノ・リス王が、唯一心を許す存在であらせられる」

 ロウ・ミシャ、ロウ・ミチャ、ロウ・ミニャが、頬を赤らめながら説明する。

「そっかァ。この島国にャ、美人が多いんだな!」
 腕を組んで、再びふんぞり返るティンギス。

「ウチの漁村じゃ、男の比率が圧倒的に多いからな」
「この島で、嫁探しでもしてみるか」
 3人の船長たちは、自分たちの現実に引き戻されていた。

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