ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第13章・59話

ラビ・リンス帝国

「昨日の闘技場戦に置いて、勝利者となられたティンギス様、レプティス様、タプソス様ですね。どうぞ特等席にて、ご観覧ください」
 闘技場の門番であり受付も兼ねた兵士が、丁寧な口調で言った。

「ああ、ご苦労。そんじゃ行こうぜ、レプティス。タプソス」
 コーヒー色の肌に、貝殻で装飾された黒いドレッドヘアを背中に垂らした男が、仲間を従え陽気に門をくぐり抜ける。

 大理石を加工して創られた闘技場は、白っぽい砂や砂岩で出来た丘の上に建てられていた。
周囲には背の低い樹木しか無く、闘技場の外壁からは港町が一望出来る。

「軍事国家と聞いて、もっと実用的なモンを想像していたが、意外にも凝った建物だよな」
「ああ。大理石も隙間なくピッタリと組まれているし、彫刻や装飾もスゴいぞ」
 闘技場の中に入ったレプティスとタプソスは、闘技場内部の美しさに驚嘆した。

 各所に色鮮やかな装飾が施された、闘技場。
観客席の外周を埋める回廊には、神々や魔物をモチーフにした巨大彫刻が飾られている。

「この闘技場は、ラビ・リンス帝国が周辺諸国を蹂躙して得た富で、造られております」
「富だけでは、ありません」
「この闘技場は、周辺諸国の優れた文化や技術で建てられました」

 黄金の胸当てに赤いマントを身に着けた、イオ・シル、イオ・セル、イオ・ソルが言った。

「へー、そうなのか……って、どうしちまったんだ。急に、かしこまってよ?」
 怪訝(けげん)な顔をする、ティンギス。

「主(あるじ)に対し、丁寧な言葉遣いは当然です」
「我ら下僕は、主に対し絶対の忠誠を誓う者」
「ティンギスさま、なにか問題でもございますか?」

「イ、イヤ、別になんでもねェケドよ……」
 ハト・ファル、ハト・フィル、ハト・フェルの丁寧な物言いに、恐怖を感じていた。

「それにしても、相当な数の彫刻が並んでいるな」
「恐らく、周辺諸国で崇められている神々なのだろう」

「ご明察です、タプソスさま」
「彫刻は、ラビ・リンス帝国が侵略し属国化した国々の、神や女神たちです」
「ラビ・リンス帝国が崇める神を主神とし、その属神として飾られました」

「つまりは、ラビ・リンス帝国の権威付けに飾られてんのか」
「ここを訪れた者は、否応なしに目にするだろうからな」
 スラ・ビシャ、スラ・ビチャ、スラ・ビニャの説明の意味を、理解する2人の船長。

「気にくわねェ話だが、合理的ではあるな。自分たちが崇める神も、従者みたいな扱いとは言え残されるんなら、従うヤツらも居るよな」

「全ての従属国の神が、属神として認められるワケではありません」
「力の無い国や、ラビ・リンス帝国に激しく抵抗した国の神々は……」
「魔物に身をやつし、飾られているのです」

 ロウ・ミシャ、ロウ・ミチャ、ロウ・ミニャが、寂しそうな顔で言った。

「彫刻1つにしても、見せしめの意味もあるってか」
 ティンギスは、醜い大ダコの姿をした魔物の彫刻を見上げる。

 その後、一向は観客席に上がった。
闘技場には、すでに大勢の観衆が詰め掛けていて、新たに就任するミノ・アステ女将軍の後継者の登場を、今や遅しと待っている。

「昨日は見世物として、ココで戦っていたオレたちが、今日は偉そうに観覧席から見物とはな」
「違いねェ。昨日は、夢にすら思わなかったぜ」
「それにしてもラビ・リンス帝国は、思った以上に栄えているのだな」

「そうだな、タプソス。こんな繁栄した姿を民に見せられっから、ミノ・リス王が戦争をするのも支持されてんのかもよ」

「お前、ごく稀(まれ)には、的を得たコトも言うんだな」
「うっせェ!」
 タプソスに怒る、ティンギス。

 すると観衆たちが突然、歓声を上げる。
船長たちが顔を上げると、観覧席の体面の一際豪華な席に、黄金のマントを羽織った老人が現れた。

「ミノ・リス王! ミノ・リス王!」
「ミノ・リス王! ミノ・リス王!」
「ミノ・リス王! ミノ・リス王!」

 他国では、暴君とされる男の名前が、連呼される。
老人が、手に持った錫杖(しゃくじょう)を上げると、歓声は闘技場から溢れ出んばかりに木霊(こだま)した。

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