ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第13章・56話

鏡の世界(ミラーワールド)

「なるホドな。キサマの剣も、鏡というカタチではあるが、時空を操る能力を持っているのか」
 ケイオス・ブラッドが、言った。

 彼を囲む無数の鏡には、彼自身が何重にもなって映っている。

「……そうだ。我が剣ジェイ・ナーズは、鏡として時空を切り取るのだ。例えバクウ・プラナティスと言えど、我が鏡の世界から時空を切り裂いて脱出は出来ぬ」
 ケイオス・ブラッドの耳に、ミノ・テリオス将軍の声だけが響いた。

「ならば先ほどのように、キサマの鏡を砕いて脱出するまでよ」
 ケイオス・ブラッドは、再び刻影剣・バクウ・プラナティスを1閃する。

 けれども今度の剣撃は、鏡の世界を割るコトは無く、そのまま鏡に映ったケイオス・ブラッドの1体に命中した。

「ガハッ、な……なんだと!?」
 胸に傷を受け、狼狽(ろうばい)する混沌と血の魔王。
傷口から鏡の地面に、紫色の血が飛び散る。

「小賢(こざか)しいマネを!」
 ケイオス・ブラッドは、尚も声の聞える方角に向けて、バクウ・プラナティスを振るった。
けれども、攻撃は鏡に映ったケイオス・ブラッドに当たり、本体である自身がダメージを受ける。

「無駄だ。いくら攻撃を仕掛けようと、キサマはキサマ自身に向け、剣を振るっているに過ぎぬ」
 鏡の世界に反響する、ミノ・テリオス将軍の声。

「こ、これは、オレが放った攻撃だと言うのか?」
 ケイオス・ブラッドは、胸や腕の傷口を確認すると、紫色の血が流れ出ていた。

「キサマは、鏡の剣ジェイ・ナーズが生み出す鏡の世界に、完全に囚われたのだ。どう足掻こうと、キサマは鏡の牢獄から抜け出すコトは出来ない」

「このオレを、ここまで足止めするとはな。雷光の3将の筆頭が力、侮(あなど)っていた」
 苦笑いを浮かべる、魔王。

「足止めだけを、するつもりは無い。鏡の世界では、我がジェイ・ナーズは絶対なのだ」
「どう言う意味……なッ!?」
 将軍の言葉の意味を、直ぐに思い知らされる、ケイオス・ブラッド。

「バ、バカな。鏡に映ったオレ自身が、オレに向かって攻撃を仕掛けて来るだと!」
 鏡に映った全てのケイオス・ブラッドが、本物のケイオス・ブラッドに対し一斉に剣を向ける。

「キサマは、キサマ自身と戦うのだ。左右反転している意外に違いの無い、キサマと同等の能力を持った魔王の群れとな」
 いくら魔王と言えど、大勢の魔王を相手には対処し切れず、全身に傷を増やして行った。

 ~同じ頃~

 宿屋に戻った3人の船長ら一行は、遅めの朝の食卓を囲んでいた。

「ラビ・リンス帝国っつっても、港町だけあって魚は美味いぜ」
「ま、ウチの漁村で獲れた魚には、負けるケドな」
「違いねェな。さ、お前たちも、喰った喰った」

 漁師らしく豪快に魚を食べる、ティンギス、レプティス、タプソスの3人の船長たち。
タプソスが、同じテーブルに座る12人の少女たちに向け、食べるように促(うなが)した。
けれども少女たちは、目の前の料理に一切手を付けない。

「なんだァ。もしかして、魚は嫌いか?」
 ティンギスが問いかけても、少女たちは沈黙したままだった。

「そうじゃ無いだろ。あの女将軍サマのコトが、気になるんだな」
「今朝、兵士がウワサしてただろ。女将軍が、地位を失うってよ」
 レプティスとタプソスが、同僚の浅知恵を突っ込む。

「ミノ・アステ将軍さまが、将軍の地位を無くされてしまう」
「我らの責任だ。我らが、不甲斐ないばかりに……」
「アステさまは、試合に勝ったハズなのだ」

 イオ・シル、イオ・セル、イオ・ソルの3人が、悔しそうに言った。

「その上、ミノ・アステの名まで失われてしまう」
「アステさまは、どれだけラビ・リンス王国に貢献して来たか」
「それなのに、すでに後任まで決まっているなどと」

 ミノ・アステ女将軍がアステ・リアとなり、ミノ・テリオス将軍の伴侶となるハズだったコトなど知らない、ハト・ファル、ハト・フィル、ハト・フェルは、激しく憤(いきどお)る。

「まあ勝ったつっても、あの蒼い髪の坊主が負けを認めただけで、どう見てもなあ。それにこの国だと、敗者は……アイテテテッ!」
 2人の少女に、頬っぺたの両端をつねられるティンギス。

「気にしなくて、イイですよ。この人、頭悪いだけですから」
「気を悪くしないで、下さいね」
 ウティカとルスピナは、12人の少女たちに言った。

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