ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第13章・54話

よくある話

「どう言うコトだ。完全では無いにしろ、プート・サタナティスによって切り裂かれた者は、魔王と化すかあるいは……」

 サタナトスは、アステ・リアの血で真っ赤に染まったシーツを、目で確認する。

「女将軍みてェに、半分化け物にされて吹き飛んじまうハズ……だろ?」
 内臓のような剣を構え、壁から抜け出すティ・ゼウース。

「だが、そうは成らなかった。お前の身体が、そうさせているのか?」
 みすぼらしい皮鎧の男を、マジマジと観察する金髪の少年。

「さあな。ところで、もう1度同じ質問だ。オレと組む気は、ねェか」
「少しばかり、キミに興味が湧いたのは事実だよ。だけど、利害が一致しない。ボクは、ミノ・リス王を配下にすべく、この国にやって来たんだ」

「ミノ・リス王は、政治家に過ぎない。恐らくだが、雷光の3将より遥かに弱いぜ」
「ボクが欲しいのは、彼の率いる最強の軍隊さ」

「だったら、話は早いぜ。最強の軍隊だけお前がいただいて、不要になった王はオレが討つ」
「問題は、そこなんだ。ミノ・リス王は確かに不要かもね。でも、彼に絶対の忠誠を尽くす、ミノ・ダウルス大将軍を配下にしなければ、なんの意味も無いのさ」

「良将あっての、軍隊ってコトか。確かに1理あるが、ミノ・ダウルス大将軍の配下であるミノ・アステ将軍を、残酷に殺しちまって良かったのかよ?」

「ボクは、人の幸せを見ていると、壊したくなるんだ。彼女は、運が悪かったね」
 悪びれる風も無い、サタナトス。

「ま、女将軍サマも、戦場や闘技場じゃたくさん人を殺しているんだ。自分だけ殺されないと思ったのが、運の尽きかもな」

「このラビ・リンス帝国は、強き者こそ絶対だと言うからね。ミノ・ダウルス将軍も納得するだろう」
 サタナトスが、アメジスト色の刀身の剣を時空にしまった。

「少なくとも、敵対はしないってコトだよな?」
 ティ・ゼウースも、ハート・ブレイカーを降ろす。

「ティ・ゼウース。お前はどうして、ミノ・リス王を討ちたいんだ?」
 アステ・リアが、女としての最初で最後の一夜を過ごしたベットに、再び腰掛けたサタナトス。
親しい友人に語りかけるように、聞いた。

「オレの大事なモノ全てを、奪ったからだ。オレの国は、ラビ・リンス帝国との戦争に敗れ、貴族だった両親や姉とも死に別れた」
「なるホド、よくある話だ」

「よくある話は、続くぜ。孤児になったオレは、ラビ・リンス帝国の軍隊の少年兵として、戦場に駆り出された。似た境遇の仲間が死んで行く中、オレは母国の同盟国にすら攻め入ったんだ」

「戦勝国が、敗戦国の兵を最前線で戦わせる……確かに、よくある話だね」
「女将軍サマの部下として、戦場に出たコトもあったぜ。コイツは、覚えてないだろうがな」
 アステ・リアの、変異した肉片を喰らった剣を見つめる、ティ・ゼウース。

「家族や仲間を殺され、自分も良いように使われた。それが、キミが王を討ちたい理由かな?」
「そんな、ところだ。ところでお前は、軍隊など手に入れてどうする?」

「ボクの方は、人間に対する復習だよ。いくら個として強くたって、大国相手には分が悪いからね」
「お前は、人間じゃないのか?」
「そうだと言ったら?」

「別に。オレも、人のコトを言える立場じゃないんでな」
 ティ・ゼウースは、サタナトスから目を逸らした。

「まあイイさ。キミの提案には、半分だけ乗ってあげるよ」
「半分……どう言う意味だ?」
「ミノ・リス王に会うまでは、手を組むってのでどうかな」

「オレが先に王を殺しても、文句は言わせねェぜ」
「ああ。結構だよ。だけど、逆もまた然(しか)りだ」

「チッ、わかったよ」
 ティ・ゼウースは、渋々ながら納得する。

「さて。そろそろ王の元に、行こうか」
「大迷宮(ラビリンス)に、突っ込む気か?」

「そうだったね。この要塞の先には、ミノ・リス王を守護する大迷宮と……」
「大将軍ミノ・ダウルスが、待ち構えてやがるのさ」
 2人の少年は、それでも迷宮に脚を踏み入れた。

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