ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第13章・53話

実験(ようじ)

「ふ、ふざけるな。アイツの強さは、わたしが1番知っている。死んだなどと……」
 美しき体を包むシーツを左手で抑えながら、右手で剣を向けるアステ・リア。

「残念だケド、ボクの配下はそれ以上に強いのだよ。あの赤毛の英雄も、倒した男だからね」
 余裕を態度で示すように、切っ先を向けるアス・テリアに、サタナトスは丸腰で近づいて行った。

「なるホドな。あの少年が、戦争をしている場合では無いと言った理由が、ようやくわかったよ」
 アステ・リアは、部屋を周る様にして後ずさりする。

「へェ。その少年ってのは、蒼い髪をしてなかったかい?」
「さあな。キサマに、教える義理は無い」

「まあイイさ、そんなの直ぐにわかるコトだからね」
 サタナトスは、部屋の中にあった大きなベッドに座り込んだ。

「昨夜(ゆうべ)は、お楽しみだったようだね」
 湿気の残るシーツに触れ、ニヤッと笑うサタナトス。

「下衆(ゲス)が!」
 アステ・リアの顔に、ミノ・アステと呼ばれた頃の覇気が戻る。
シーツのドレスを押える手を放し、剣に全ての気合いを注ぎ入れた。

「ホウ。やっとやる気に、なってくれたかな」
 ベットから立ち上がり、空間から細身の剣を具現化させる、金髪の少年。

「それがキサマの剣か?」
 女将軍の瞳に映った剣は、アメジスト色の刀身が妖しいオーラを放ち、二本の曲がった角のカタチの禍々(まがまが)しい鍔(つば)をしていた。

「そうだよ。銘は、魔晶剣・プート・サタナティス」
 自身の剣を、じっくりと観察しながら天に掲(かか)げる。

「キミも知っているだろう、蒼い髪の少年との戦いでね。本来の能力を、失ってしまったのさ」
「能力を……それは好都合だ」

「だけどあるヤツらに聞いて、剣の動力源が闇の力であるコトが解かったんだ。簡単に言えば、エネルギー切れだよ」

「それで……エネルギーは補給できたのか?」
「どうだろうね。ずいぶんな数、闇の魔物どもを倒しては見たんだが、手応えがイマイチなのさ」
「フッ、残念だったな」

「やはり魔王か邪神クラスでないと、エネルギーを本格的に補給するのは難しいみたいでね。魔王や大魔王は部下に居るんだが、彼らは水の属性が強過ぎるんだ」
「自分の部下を、生贄にするつもりだったのか!」

「ああ、その通りだよ。まったく、使えないヤツらばかりさ」
 サタナトスも、剣を女将軍へと向けた。

「キミには、実験台になって貰うよ。現時点での魔晶剣で、どれくらいのコトができるのかをね」
 瞬時に間合いを詰め、アステ・リアの心臓を狙うサタナトス。

「このアステ・リア、舐めて貰っては困る!」
 けれども女将軍は、鞭に変化する剣を展開して1撃を防ぎ切った。

「アハハ、やるね。それに、イイ身体をしているじゃないか」
 2人の間に、シーツが舞い落ちる。
女将軍は、生まれたままの身体を敵に晒(さら)していた。

「わたしの身体はすでに、アイツのモノとなった。今さら、恥じ入る気は無い!」
 アステ・リアは、自身が一糸纏わぬ姿であるコトなど気にも留めず、サタナトスに鞭の渦を放つ。

「グワッ!」
 螺旋の攻撃が、サタナトスの身体を捉えた。

「やったか」
 勝機を感じる女将軍だったが、金髪の少年は幻想のように消え去る。

「残念だったね……」
 アステ・リアの背後から、サタナトスの声が響いた。

「キ……サマ……グボェ……ガハッ!」
 豊かに実った2つの乳房の間に、アメジスト色の刀身が突き刺さっている。

「さて、キミにも一定の魔力を感じる。本来であれば、キミは魔王と化すハズなんだ」

「ガ……アア……アアァァァーーーーーァギャアアアアァァァーーーッ!!」
 迷宮の要(かなめ)にある要塞の最上階の1室で、獣のように悶え苦しむ女将軍。

「テ……テリオ……助け……」
 アステ・リアの身体は、ところどころが魔物のウロコに覆われ始め、背中からは翼らしきモノが生えて来ていた。

「失敗か。チェ、残念だよ」
 オモチャが思うようにならなかった子供のような、不機嫌な顔をするサタナトス。

「ヒッ……イヤ……あ……ああ……ブガッ!?」
 彼の足元で、アステ・リアの不完全な身体は、バラバラに弾け飛んだ。

「美貌の女将軍が、無残なモノだね」
 床に散らばった、不気味に蠢(うごめ)く無数の肉片に、目を背けシーツをかける。

「それにしてもケイダンのヤツ、いつまでかかってやがるんだ」
 実験(ようじ)を済ませた金髪の少年は、要塞の部屋を後にした。

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