ラノベブログDA王

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王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

ある意味勇者の魔王征伐~第13章・51話

牢獄の恋人たち(ラバーズ)

「因幡 舞人。お前には、私人として礼を言わねばならん。わたしが1番に欲しかったモノを、こうして手に入れるコトが出来たのだからな」
 ミノ・テリオス将軍は、大切な女性を抱えたまま礼を述べる。

「わ、わたしはこれより、妻として貴方を支えます……」
「その喋り方は、キミにはムリがある。直ぐに、ボロが出るぞ」
 幼馴染みの2人が、真顔で向かい合う。

「う、うるさい。人がムリして、合わせてやっていると言うのに!」
 アステ・リアは、頬を赤く染めながら、幼馴染みの腕から飛び出した。

「キミには副将として、これからも働いて貰う。流石に王も、キミの武勇や人気は惜しいようでな」
「そう……か。家庭でも戦場でも、お前に付き合うとしよう」
「フッ、その方がキミに合っている」

「だから、お前と言うヤツは昔から……」
 幸せそうな顔で、愛する人と他愛のない会話を交わす、アステ・リア。
少し前まで、鬼のような形相で舞人に鞭を振るっていた女将軍と、同一人物とは思えなかった。

「因幡 舞人、キミの願いを叶えよう。ミノ・リス王も、彼女を倒したキミには興味を持っていてな」
「王が……ボクに?」
 ベッドから上半身を起こし、話を聞く舞人。

「お前は、わたしを倒したのだ。勝者として、もう少し誇ってくれないか」
「ボクの能力は、ジェネティキャリパーによって得たモノです。だから……」

「この国の闘技場では、どんなエンチャントを施した武器や防具を使っても、構わないコトになっている。アステ・リアが敗れたのは、変わらない現実だよ」
 ミノ・テリオス将軍の眼差しは、舞人のベッドの近くの、鉄格子窓に向けられていた。

 水平線の上に広がるスミレ色の空が、僅(わず)かに白み始めている。

「もう直ぐわたしは、ミノ・アステの名を失うのだな……」
「ああ。だがキミには、わたしの副官としての使命が待っている」
 幼馴染みの肩に手を置く、テリオス将軍。

「ミノ・アステの地位は、しばらく空白になるのか」
「イヤ、すでに後釜は決まっている」
「な、なんだと。ずいぶんと、用意周到なコトだな」

「ミノ・リス王は、これから戦争をされる。そんな矢先に、雷光の3将の1角が欠けては、兵の士気にも影響が出るのでな」
「そう言うコトなら、仕方あるまい」

「明日、この闘技場にて、新たなるミノ・アステ将軍の就任式が執り行われる。ミノ・リス王に謁見する機会を、キミに与えよう」

「あ、ありがとうございます、ミノ・テリオス将軍」
 舞人は、ベッドで小さく頭を下げる。

「ただし、この期に及んで戦争を止められる可能性など、皆無に等しいと思うがな」
「ええ、わかってます。でも、ボクにも幼馴染みが居ました。ボクもそのコも、戦災孤児だったんです」

「なる程な。お前が戦争を止めたい理由が、それか」
 アステ・リアが言った。

「それだけじゃ、ありません。サタナトスは、危険な男なんです」
「そのサタナトスと言う男が、キミの言う悪の首魁なのだな」
「はい。サタナトスの手下によって、シャロリュークさんさえ倒されてしまったんです」

「シャロリューク……まさか、シャロリューク・シュタインベルグのコトか?」
「そうです。シャロさんは、サタナトス旗下のケイオス・ブラッドと名乗る魔王に、討たれました……」

「赤毛の英雄と呼ばれた男が、死んだと言うのか。にわかには、信じられんな」
「ケイオス・ブラッドは、時空を切り裂く剣を使うのです」

「まさか、その剣とは?」
「バクウ・プラナティス。天下7剣(セブン・タスクス)の、1振りです」
 舞人の言葉に、ミノ・テリオス将軍も、アステ・リアもしばらく押し黙ってしまう。

「わかった。明日はわたしも、王に進言しよう」
「あ、ありがとうございます」

「因幡 舞人。お前には、酷いコトをした。スマン……」
「いえ。結果がハッピーエンドなら、これくらいの傷なんて」
 舞人が笑顔を見せると、ミノ・アステと呼ばれた美貌の将軍も微笑んだ。

「行こうか、アステ・リア」
「ああ、待ってくれ」

 かつて剣闘士として、上を目指した2人の幼馴染み。
今は寄り添いながら、舞人の居る監獄を出て行く。

「パレアナ、ボクだってお前を……」
 ベッドに転がった舞人は、鉄格子の向こうの空に向けて手を伸ばしていた。

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