ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

キング・オブ・サッカー・第9章・EP003

チーム格差

「食べモノの屋台も、メッチャ出てんな」
「アメリカンドッグに、ハンバーガー。ドネル・ケバブまで売ってるやんか」
 黒浪さんと金刺さんが、キョロキョロと辺りの出店を物色しながら歩いている。

「試合前にあんなの食べたら、試合で動けなくなるね」
 注意を促(うなが)す、セルディオス監督。
その手には、ドネル・ケバブとコーラが握られていた。

「チェ、監督はイイのかよ」
「そんなん喰っとるから、メタボな腹してんねや」

「ホントはビールでも飲みたいのを、ガマンしてるね」
「これから試合の監督が、ビールなんて飲もうとすんな」
 今度は紅華さんが、監督に突っ込んだ。

「お、誰か来るぜ」
「キレイな、お姉ちゃんやな」
 スタジアムの方から、栗色の髪を頭の後ろでまとめた女性が、男性スタッフ2人を伴って降りて来る。

「ようこそ、お越しくださいました。わたくし、フルミネスパーダMIEのチームコーディネイターを務めております、阿栗 陽那(おぐり ひな)と申します」

 丁寧なお辞儀をし、薄紫色の口紅を塗った口元に微笑みを浮かべる、阿栗さん。
グレーに白いラインの入ったスーツを着ていて、長身の身長を高いヒールでさらに伸ばしている。

「本日、わたくし供のチームと対戦していただく、デッドエンド・ボーイズのセルディオス監督ですね。お噂は、かねがね伺っております」
 完璧な動きで名刺入れから名刺を取り出し、セルディオス監督の前に差し出した。

「……ブバッ」
 コーラとを持ったまま、彫刻のように固まるメタボ監督。
ランニングシャツにデカパンと、対称的なカッコウをしている。

「ボクは、デッドエンド・ボーイズのキャプテンを務めている、雪峰です。よろしく、お願い致します」
「同じく、副キャプテンを務める柴芭と申します。以後、お見知りおきを」
 雪峰さんと柴芭さんが、監督を隠すように回り込んで名刺交換をした。

「ずいぶんとお若い、キャプテンさん達ですね」
「ええ。ウチは、高校生が主体なモノで」
「今日の試合は、胸を借りさせていただきますよ」

 ビジネストークって、ヤツだろうか。
何気ない会話を軽くこなす、雪峰さんと柴芭さん。
普段の会話さえロクにできないボクにとっては、うらやましい限りだ。

「早速ですが、チーム控室にご案内いたします。こちらへ……」
 阿栗さんはボクたちを、スタジアム横のトレーニングルームへと案内してくれる。

「それにしても、スタイルええ姉ちゃんやな」
「胸もお尻も大っきく揺れてて、腰はくびれてるし、大人の女性って感じだ」
 先を歩く阿栗さんの後ろ姿に、ため息を漏らす金刺さんと黒浪さん。

「フ~ン。やっぱクロくんは、ああ言う大人の女の人が好みなんだ」
「へッ……ち、違うんです、千鳥さん。オ、オレは……」
 言いワケを聞き流し、持っていたカメラで黒浪さんを撮影する千鳥さん。

「良かったな、クロ。カッコいいとこ、撮って貰えてよ」
「ウ、ウッセッ、ピンク頭!」
 慌てふためく顔を撮られたであろう黒浪さんを、からかう紅華さん。

「こちらが、控室となっております。この施設は、トレーニングルームも兼ねておりますので、ご自由に使っていただいて構いません」
 案内されたのは、真新しいロッカーの並ぶピカピカの控え室だった。

「こ、これは、素晴らしい装備であります。早速、使わせていただくであります」
 杜都さんは上着を脱ぎ捨てると、いきなりベンチプレスを始める。
ボクじゃとうてい持ち上がらないダンベルを、楽々と上下に動かしていた。

「これから試合だってのに、ハードな筋トレしてどうするんだよ」
「紅華の言う通りだ。そのくらいに、して置け」

「ゆ、雪峰司令の命令とあらば、従う他ないでありますが……こんな装備、ウチにもあったらいイイでありますな」
 羨望(せんぼう)の眼差しで、近代的なトレーニング施設を眺める杜都さん。

「ウチの予算じゃ、ダンベル1つ買えないですよ」
 柴芭さんが、絶望的な現実を告げた。

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