ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第13章・49話

円卓の親娘会話

「なあ。けっきょく、アレで良かったのかよ!」
 ティンギスが、同席した2人の船長に語りかけた。

 そこは宿屋の食堂で、星の瞬(またた)く夜空が広がる窓からは、月灯りが漏れている。
テーブルには、海で採れたばかりの魚を中心とした、海鮮料理が並んでいた。
ジョッキに溢れんばかりに注がれた酒を、あおる3人の船長たち。

「あのボウズだけ牢やに捕まっちまって、オレらは酒盛りやってて、いいのかって話だぜ」
 愚痴をまき散らしながら、ティンギスが空になったジョッキをテーブルに叩き付ける。

「よく言えるなあ、そんだけ飲んで置いて。だがまあ、あのボウズが望んだコトだ」
「あのボウズは、お前と違って頭が切れる。なにか、考えがあるのだろう」
 レプティスとタプソスも、ジョッキの中の酒を口に注ぎながら答えた。

「うっせえ。しっかしこの国も、わからん国だぜ」
「オレらのコトを、ちゃんと解放してくれた上にだ」
「高価な武具もそのままいただけて、その上……」

 3人の船長の視線は、それぞれが両脇に抱えた少女たちに移る。
少女たちは12人居て、誰しもがカワイイ顔を涙で濡らしていた。

「そんなに泣くなって。悪いようにするつもりは、無ェんだ」
「そうだぜ。オメーたちは、言わば自由な身なんだぜ」
「どこへなりと、好きに行くがイイ」

 少女たちは、闘技場で闘ったときの出で立ちのまま、黄金の胸当てにそれぞれのチームカラーのマントを纏(まと)い、ミニスカートを穿いている。
大柄な船長たちの間に、4人ずつが挟まるカタチで丸いテーブルに着いていた。

「わ、我らは、1人で生きる術(すべ)を知らぬ」
「アステさまの庇護も無く、どうやって生きて行けば良いか……」
「男に身体をゆだねるにしろ、まだわたし達ではそれも及ばぬ」

 イオ・シル、イオ・セル、イオ・ソルの3人の少女が、口惜しそうに呟く。
彼女たちに出された料理は、手付かずのままだった。

「オ、オレたちは別に、オメーらをおっぽり出すつもりは無ェんだ」
「そ、そうだぜ。なんなら、オレらの村の養女になんねェか?」
「オレたちの村は、津波に襲われちまってよ。女手も、不足している」

「敗者に、断る権利などない。お前たちの、好きにするがイイ」
「激務だろうが、男の相手だろうが、受け入れるつもりだ」
「アステさまの期待に沿えなかった我々には、もはや人ととしての価値など無いのだからな」

 ハト・ファル、ハト・フィル、ハト・フェルの3人も、涙をポロポロと落としながら強がっている。

「そう言うこっちゃ、無ェんだよ。オメーらの命は、そりゃあ大事なモンだぜ」
「ティンギスも、たまにはイイこと言うな。この国じゃ、敗者はゴミみてーに扱われちまうがよ」
「お前たちは、価値ある人間なんだ」

 3人の船長たちは、つい半日前まで自分たちの命を脅かしていた少女たちを、ギュッと抱き寄せた。

「わたし達に、価値があるだと?」
「そんなコトを言ってくれたのは、アステさまだけだ……」
「わたし達は、周辺の国々より集められた奴隷を母に持つ、最下層の存在よ」

 自分たちを卑下する、スラ・ビシャ、スラ・ビチャ、スラ・ビニャの3人の少女。
やけになったのか、目の前の食事をかき込み始めた。

「あのおっかない女将軍さまも、オメーらにとっちゃ大切な存在なんだな」
「強さが正義ってこの島の価値観も、わからなくはねェんだがよ」
「力以外にも、価値はたくさんある」

「力以外に、価値などあるのか?」
「アステさまもかつて、仰っていたコトがある」
「だが本当にそんなモノが、あるのか?」

 ロウ・ミシャ、ロウ・ミチャ、ロウ・ミニャの3人の少女は、再び箸を止めて考え込む。

「考え込むのは、後にしな。今は、メシだメシ!」
「たくさん喰って、イヤなコトなんざ忘れちまえ」
「ルスピナ、ウティカ。料理も酒も、ジャンジャン持って来てくれ」

「料理は持って来るケド、お酒はダメ!」
「もう、どれだけ飲んだと思ってるのよ!」
 宿屋に残り、合流を果たした少女たちは、小さな母親のようだった。

 夜が深まり、月が満点の空のテッペンに昇る頃、3人の船長たちは自分たちのベッドで、大の字になって眠っている。
その両脇には、それぞれ4人の少女たちも寝息を立てていた。

「まったく、よくこれだけのイビキで眠れるわね」
「フフ。でもみんな、安心した顔で眠っているわ」
 メイド服を着た2人の少女は、顔を見合わす。

「それにしても、疲れたわね。料理を作ってお酒出してと、大変だったよ」
「でも、船長さんたちとルーシェリアさまが、戻って来てくれて良かった」
 12人の少女たちに、毛布を掛けるウティカとルスピナ。

「わたし達も、お風呂入って寝よっか」
「そうだね。おやすみなさい、可愛い妹たち」
 ルスピナが、部屋の灯りを消した。

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