ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

一千年間引き篭もり男・第08章・34話

実験的・観測的

 1000年前の、あの日。
ボクは教室で、クワトロテールの少女が不良のチャラ男たちと言い争っているのを、真後ろの席から見ていた。

 愚かにもボクは、その争いに首を突っ込んでしまい、校舎の屋上に呼び出されてボコボコにされる。
案の定と言うべきか、そうなるコトは予見できていた。

「あなたの傷……舐めさせて……」
 屋上にやって来た、黒乃が言った。

 彼女も、ボクをチャラ男が屋上に呼び出すトコを、予見していたのだろうか。
それとも、窓から屋上の様子がたまたま見えただけなのか。

「……ヘモグロビンの味がするわ」
 彼女は、言った。
普通の女子高生には、似つかわしくないセリフだが、時澤 黒乃にとっては相応しい。

 恐らく彼女は、自分の傷を舐めて、血の味を知っていたのだろう。
彼女の視点はどれも実験的であり、観察的であったからだ。

「キミはとんだ『エリス』だな……」
 ボクは、言った。

 彼女のクワトロテールから漂う、シャンプーの香りを今でも覚えている。

「時澤 黒乃……ボクは今、エリスに向かっているよ」
 窓の外には、プラネタリウムのような星の海が広がっていた。

 ボクは、冥界降りの英雄から宇宙戦艦プロセルピナに個室を与えられ、窓の外を眺めている。

「失礼します、宇宙斗艦長。入らせて貰っても、よろしいでしょうか?」
 個室のインターフォンから、メルクリウスさんの声が響いた。

「ええ、どうぞ」
 ボクは金髪の優男を部屋に招き入れると、部屋に備わっていた紅茶を差し出す。

「どうも。ボクはコーヒーよりも、こちらの方が好みなんですよ」
「そうでしたか。ですがどこで、栽培されたモノなんですかね」

「海王星のラグランジュポイントの、コロニー群でしょうか。人はまだあまり入っていませんが、アーキテクターが先行して入植しているのですよ」

「海王星は、極寒の惑星ですよね。それと同じ軌道で、紅茶が栽培できるモノなんですか?」
「微弱なれど、太陽光は届きますからね」
 メルクリウスさんは、宇宙で栽培された紅茶を口に運んだ。

「太陽は、僅かな寿命しか持たない人類にとっては永久機関に等しく、自然の核融合炉からもたらされる太陽光は、無限のエネルギーと言って差し支えないでしょう」
「はい。ボクに時代でも、太陽光による発電とか始まっていましたよ」

「人類は、艦長の生まれた時代から、様々な困難を乗り越えて宇宙に進出し、多様な食物を栽培して来ました。そのもっともポピュラーなエネルギーが、太陽光だったのですよ」

「それは、予測通りですね」
「オヤオヤ、予測されてましたか。艦長も、宇宙や科学に造詣(ぞうけい)が深いようですが?」

「名前のせいでしょうか。自然と、興味を持っていたんです」
 子供の頃、自分に自信を持てなかったボク。
それでも、親が与えてくれた『宇宙斗』と言う名前だけは、好きになれた。

「まさか実際に宇宙に来られるだなんて、夢にも思いませんでしたケド」
 ボクも、宇宙産の紅茶を口に運ぶ。

「今回に関しては、その来かたが問題なんですよ。我々は、地球の旧北米大陸に居たハズです。それが時の魔女の手下によって、こんな太陽系外縁部にまで運ばれてしまったと言うワケですよ」

「ワープを経験するだなんて、それこそ思っても見ませんでした」
 ボクがおどけて見せると、金髪の優男はヤレヤレと言った顔で残った紅茶を飲み干した。

「艦長は、このままエリスに向かって、時の魔女に勝てると思いますか?」
 メルクリウスさんは、真剣な眼差しでボクを見ている。

「正直、勝てる気がしません。もっとも、エリスが本当に時の魔女の本拠地であって、時の魔女の部下が無数に居ると仮定すればの話ですが」

「火星の事変を鑑(かんが)みるに、無数に居ると仮定すべきでしょう」
「そうでしたね。火星では、クーヴァルヴァリア・カルデシア・デルカーダの乗る巨大サブスタンサーに率いられた、無数の立方体が出現しました」

「ええ。我々は巨大サブスタンサーをQ・vava(クヴァヴァ)、立方体をQ・vic(キュー・ビック)と命名したのですが、かの者らが火星から宇宙へと飛び去った方角も、エリスの現在の軌道と一致するのです」

「それじゃあクーリアも、エリスに向かったと!」
「確証は持てませんが、その可能性は高いかと」
 優男の言葉に、ボクはしばらく言葉が出なかった。

 前へ   目次   次へ