ラノベブログDA王

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王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

一千年間引き篭もり男・第08章・29話

最初の任務(ファーストミッション)

「ミネルヴァ……」
 メルクリウスは、テオ・フラストーのコックピットハッチを開けた。

 彼は宇宙服などは着てはいなかったが、コックピットには空気の流出を防ぐ機能が備わっており、短時間であれば宇宙線や宇宙空間の冷気すらも防いでくれる。

「貴女は本当に、時の魔女の下僕に成り下がってしまわれたのですか」
 メルクリウスの視線の先にある、ツィツィ・ミーメの異形な身体。
今は動きを停止していて、テオ・フラストーがさらに接近するのを許している。

「メル……」
 ミネルヴァの唇が、そう動いたように感じるメルクリウス。
実際には2人の間に真空の宇宙があって、音が伝播する媒体である空気すら無かった。

「ミネルヴァも、メルクリウスも、コードネームのようなモノで本名では無いですが、貴女は気まぐれにボクをそう呼んでくれましたね」
 ディー・コンセンテスに集った神としての役割を、演じなければならなかった2人。

「こんな最果ての宇宙で、貴女に殺されるのであれば、ボクは本望でしょうか?」
 自問自答する、金髪の優男。

 彼は、コックピットの中央に備わったシートから立ち上がって、首にあるコミュニケーションリングから、接続コードを外していた。

「ミネルヴァ……」
 下に開いたハッチに脚をかけ、外に出ようとするメルクリウス。

 フラガラッハによって大きく刻まれた、ツィツィ・ミーメの身体の裂け目の向こうで、ミネルヴァが妖艶にほほ笑んでいる。
クワトロテールが宙を舞い、無機質な蛍光ピンクの瞳でメルクリウスを見つめていた。

「ボクは、貴女をずっと……」
 ヘビに睨まれたカエルだとか、クモの巣に捕らえられた蝶のごとく、自ら死の運命を受け入れようとする優男。

 その時、宇宙の深淵から閃光が走り、異形のサブスタンサーの胴体に直撃した。

「なッ……!?」
 ハッと、我に還るメルクリウス。

 閃光は、ツィツィ・ミーメの上半身と下半身のつなぎ目に直撃し、両者を分断した。
頭を斬られたアリのように、しばらく無意味な動き続ける、肋骨のムカデのような下半身。

「一体ボクは、なにを……」
 慌ててシートに座り直し、コミュニケーションリングにケーブルを接続するメルクリウス。

『聞こ……るか……そこの……応答せよ……』
 コックピットに入った直後に、誰かの声を耳にする優男。
どうやら、ずっと呼びかけられていたのだと推察する。

「き、聞こえます。救助していただき、感謝します」
 コミュニケーションリングを接続したコトで、メルクリウスはテオ・フラストーと一体になった。

「救援ってのは、ちゃんと助かってから言うモノだよ。それにまだ、お仲間も居るのだろう?」
 聞こえた声は、野太い男性の声で、若くはない印象を受ける。

「ええ。貴方は誰です?」
 テオ・フラストーが首を上げると、鋭利な刃物のようなデザインの漆黒の機体が、ツィツィ・ミーメのちぎれた上半身と交戦中なのが確認出来た。

「それも生き残ってからで、問題ないだろう。今は目の前の敵を、せん滅するコトが最初の任務(ファーストミッション)じゃないかな」

「ええ、そうですね。まずは、艦長を助けないと」
 メルクリウスは、ゼーレシオンを取り囲んだ黒い球体へと向かう。
けれどもその進路を、肋骨の1段1段のパーツが分れた、骨の巨大バサミの群れが阻んだ。

「まったく、どこまで常軌を逸した女神なのでしょうか」
 テオ・フラストーは、両腕のガントレットから鞭を発生させる。
鞭は高速で回転していて、巨大なハサミを破砕して行った。

「メルクリウス、近づくな。そこを離れろ」
「ど、どうしてボクの名を……それも、助かってからですか」
「ああ、そうだ。お前も気付いただろう。その黒い球体の質量が、急激に増大している」

「ええ、この反応は……」
 テオ・フラストーが、黒い球体のある宙域を離脱すると、球体は凄まじい勢いで膨張する。

 宇宙の星々を映すホドに滑らかだった表面が、激しく波を打つ。
やがて大きくなり過ぎた黒いシャボン玉は、破裂して宇宙空間に四散した。

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