ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

キング・オブ・サッカー・第8章・EP026

サッカーIQの激突

『ピ―――ッ』
 紅白戦の後半戦のホイッスルが鳴り響き、ボールを受けたランスさんがドリブルを開始する。

「これ以上、お前たちの好きにはさせん。オレが自ら切り込んで、決めてやる」
 ボールを華麗に操り、ウチのゴールへと迫るランスさん。

 現役時代のまだドリブラーとして名を馳せていた頃の、壬帝オーナーにそっくりなドリブルだ。

「それは、こちらも同じでね。あなたに、これ以上前に進ませるワケには行かない」
 ペナルティエリアの前で、オリビさんが立ちはだかる。

「オリビ、前半の借りは返すぜ。オレの、得点によってな」
 前半戦の最後で、自分へのクロスをオリビさんにクリアされ、決定機を逃したランスさん。
怒りをぶつけるように、強引に抜きにかかった。

「クッ……」
 ランスさんの、いつに無いパワープレイに、ゴールへの進路を開け渡してしまうオリビさん。

「よし、これでゴールは貰っ……なにィ!?」
 オリビさんを抜いて油断して、足元から僅かに離れたボールを、狙っている男がいた。

「レギュラーだからって、控え組をバカにし過ぎではないですか」
 奪ったボールを保持(キープ)する、土御門 鈴鳴(つちみかど リナル)。
そのまま左サイドに抜け出て、ドリブルを開始した。

「ナイスだ、リナル!」
「カウンターを狙うぞ、オリビ」
 去年までのライバル同士が、短く言葉をかわす。

「ここは戻らないと、マズい!」
 危険を察知したアルマさんが、ペナルティエリア内に走り込むオリビさんをケアしながら、左サイドを走るリナルさんの動きをけん制した。

「オリビの裏抜けの動きと、リナルのサイド突破。1人で2人を相手に守れる守備能力……やはりお前こそが、ウチの中心に相応(ふさわ)しい」
 ベンチで、自軍のキャプテンのサッカーIQの高さを賞賛する、壬帝オーナー。

「パソコースを消しながら、オレのドリブルのケアまでするなんて、流石ですね」
「そうでも無いさ。ギリギリの判断だよ」
 アルマさんによって、リナルさんのドリブルが止められる。

 パスコースも狭まっていて、リナルさんに残された選択肢は少ないように思えた。

「ま、元々オレには、サイドを突破するスピードなんてありませんよ」
 ゆっくりと、ボールをキープするリナルさん。
前に立つアルマさんの背後で、オリビさんが何度も動き直しのプレイをしている。

「キミはどうやら、ゲームメイカータイプのサイドバックみたいだね」
 アルマさんが、相手のスタイルを言い当てた。
ボランチとして評価される理由は、高い判断能力にあるのだろう。

「流石は、レギュラー組のキャプテンですね。アナタを相手に、小細工は無意味でしょう」
 左サイドから中央寄りのレーンに進入する、リナルさん。
ボールをキープしながら相手に身体を当て、ジワリジワリと抜きにかかる。

「完全に、前線へのパスを狙っているな」
「やはり、簡単にはやらせてくれませんか」
 サッカーIQの高い者同士が、激しく読み合いをする。

「ウム。あのリナルと言う男、サイドバックにコンバートして正解だったな。アルマを相手に、ボールを奪われないキープ力は、中盤の司令塔をやっていたが故か。オレが目指す、考えて走るサッカーを具現化するのに、必要なコマになりそうだ」

 ベンチで壬帝オーナーがなにを考えているかなど、露ホドも知らないボクはもう1度動く。
今度は、中盤に降りて行く選択肢を取った。

 よし。
流石にヴァンドームさんも、中盤にまで降りたボクに付き合ってはくれない。

 ……と、思う間もなく、足元にボールが来た。
アルマさんを引き付けたまま、リナルさんが出してくれたんだ。

「来い、一馬!」
「オレに寄こせ、また決めてやる!」
 前線で手を挙げる、ロランさんとイヴァンさん。

 けれども、ロランさんにはヴィラールさんが付き、イヴァンさんにはボクをマークしていたヴァンドームさんが付いていた。

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