ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

キング・オブ・サッカー・第8章・EP024

魔法のアーリークロス

 左サイド側から、ペナルティエリア中央へと侵入する、オリビさん。
ボクに付いて来たヴァンドームさんと、イヴァンさんをマークするヴィラールさんの間に割って入る。

「また間を抜く気か。やらせねェ!」
 左サイドに流れたヴァンドームさんが、ボクのマークを外して中央をカバーしに走った。
同時にボクは、右サイドバックのべリックさんにマークされてしまう。

「見事なスライドディフェンスだね。だが、もう遅い!」
 オリビさんは、ヴァンドームさんが戻るより早く、キーパーと1対1を迎えた。

「ヴォーバン!」
 イヴァンさんのマークを外せないヴィラールさんも、キーパーに任せるしか選択肢がない。

「そう何度も、決められるかよ!」
 腕を左右に大きく広げ、シュートコースを狭めながら近づこうとするヴォ―バンさん。
それが、裏目に出た。

 フワリとボールを浮かせる、オリビさん。
ボールはキーパーの頭上を越え、ゴールネットを小さく揺らした。

「よし。ナイスゴールだ、オリビ!」
 ループシュートを決めた盟友に、駆け寄り抱きつくロランさん。

「喜ぶのは試合が終わってからだ、ロラン。最終的にウチが壬帝オーナーのチームより、1点でも多く取っていない限りなんの意味もない」

「相変わらず慎重派だな、オリビは」
「お前が楽観主義なだけだろう。さっさと、守備に戻るぞ」
「りょーかい」

 幼い頃からコンビを組んで来たと言う、オリビさんとロランさん。
気心の知れた2人は、なんでも言い合える仲なんだろう。

 思えばボクには、コンビを組んだ盟友なんて存在しなかったな。
そりゃ誰とも喋らなければ、とうぜんそうなるんだケド。

 再びボールはセンターサークルに戻され、今度は相手ボールでゲームが始まる。

「ロラン、今度はヴィラールさんが出て来たぞ」
「オレが付く。ヴィラールさんの方が、ヴァンドームさんより展開力があって厄介だ」

 相手センターバック2枚のうち、今度はヴィラールさんが出て来た。
技巧派のヴァンドームさんと違って、中盤に上がってゲームメイクをするタイプのリベロだ。

「アナタに、ゲームメイクはさせませんよ」
「そうかい、若き将軍(ジェネラル)。だったら、他に頼もう」
 ヴィラールさんは、華麗なヒールキックでボールを右サイドバックに渡す。

 ベルナール・フィツ・べリックさんがボールを受け取り、左のライン際を疾走し始めた。
日本に帰化申請をし、受託された元フランス人は、旧知の仲だった壬帝オーナーの要請で、3人のフランス人をチームに連れて来る。

 ……も、戻らないと、マズい気がする。
イヤな予感がしたボクは、フォワードとして前線に貼ったポジションから、左サイドに急いだ。

「中々に、素早い判断だ。だが、キミが追い付くまで待っている気は無いんでね」
 コーナーポストよりかなり手前で、クロスを上げるべリックさん。

 ぜ、ぜんぜん、間に合わない。
ランスさんに、ボールが……!

 正確なキックを繰り出すと評判の魔法の左脚が、アーリークロスをペナルティエリアに放り込んだ。
青いビブスの最終ラインから、オフサイドを見極めながら抜け出すランスさん。

「ナイスクロスだ、べリック。まずはこれで、あの野生児に追いつける」
 ボールは、この近代的サッカーの申し子のようなフォワードの頭に、合うかに見えた。

「やらせない……」
 けれどもその手前で、オリビさんがジャンプする。
べリックさんのピンポイントクロスは、オリビさんのヘッドでゴールバーの上にクリアされてしまった。

「クソッ、オリビめ。余計なマネしやがって」
「べリックさんがアナタに合わせるのは、読めてましたからね」

「だが、まだコーナーがある」
 苛立つランスさんが、コーナーキックを要求する。
けれどもその時、前半終了の笛が鳴らされた。

「な、なんだと。コーナーの前に、笛を鳴らすのかよ」
 憤(いきどお)る、ランスさん。
30分ハーフの紅白戦は、ハーフタイムに突入していた。

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