ラノベブログDA王

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一千年間引き篭もり男・第08章・16話

奪還作戦

 本来のセノーテは、美しい水を貯えた地下の泉である。
石灰質の岩盤が水によって浸食され生成された地底湖の、天井が崩落して地上に顔を出すのだ。

「キレイなトンネルだな」
 ケツァルコアトル・ゼーレシオンの優秀なカメラアイが、ボクの脳にフラットなトンネルの壁面や、底を流れるせせらぎを見せてくれる。

「ウチの掘削機が掘った、人工のトンネルだからね」
「自然のセノーテは、鍾乳石が何万年もかけて成長して造られるのさ」
「今の人類には、そんな悠長な時間の残されてないんだ」

 ゼーレシオンの後ろに従うサブスタンサーから、セシル、セレネ、セリス・ムラクモの、3姉妹の声が聞こえた。

「自然の鍾乳洞なんざ、地形が複雑過ぎてどこに繋がっているか、知れたモンじゃねェ。移動経路ってのは、人工物を使うに限るぜ」
 横を進むテスカトリポカ・バル・クォーダが、戦闘での経験則をボクに伝える。

「あと少しで、セノーテの設置予定地だよ」
「ここを曲がれば、あとは完全な直線だ」
「どうする。このまま進んじまうか?」

「アホ。遮へい物が無ェんだ。敵のライフルの集中砲火で、ハチの巣にされちまうだろうが」
 マレナ、マイテ、マノラ・ムラクモの3姉妹の短絡的な考えに、声を荒げるプリズナー。

「よし、ケツァルを飛ばそう。こんな時のために、予行演習をしたんだ」
 ボクが頭の中で念じると、ゼーレシオンの背中ら翼の生えた白い蛇が飛び立って行った。

「どうだ、宇宙斗艦長。アーキテクターは、居やがったか?」
「ああ。今、ケツァルで逆方向におびき寄せている」
 脳裏に浮かぶ、ケツァルの見た光景。

 敵のライフルを巧みに避けながら、セノーテを掘る巨大な掘削機の上空を舞う白き蛇。
口から発射した青白い火炎砲で、3機のアーキテクターを破壊する。

「今だ、プリズナー。敵が背中を見せている。娘たちを率いて、突入してくれ」
 遠隔操作に集中するボクは、プリズナーに重要な任務を託した。

「了解(ラジャー)、艦長。テメーら、付いてこい!」
 アステカの太陽の1つである、テスカトリポカの名を貰ったバル・クォーダが、ジャガーの頭をした9機のサブスタンサーを率いてトンネルの向こうへと突入して行く。

「ライフルは、艦長のペットに向けられてやがる。これなら、制圧できるぞ」
 一瞬で敵との距離を詰める、ドクロの顔をしたサブスタンサー。
両腕に持った巨大な戦斧で、ライフルを構えたアーキテクターの背中から斬りかかった。

「ウッシャァ、アタイらも続くよ」
「オメーらは、前衛部隊の仇だ!」
「容赦なんか、しねェからな」

 シエラ、シリカ、シーヤ・ムラクモの3姉妹の勇壮な声と共に、9機のジャガーグヘレーラーも、アーキテクターに槍を突き立てる。

「よし、突入は成功だ。ボクも、合流する」
 ケツァルを自動操縦に切り換えたボクは、トンネルを進んでプリズナーたちと合流を果たした。

「残念だったな、艦長。アンタの獲物は、残ってねェぜ」
 ボクが突入した頃には、セノーテの設置予定地はプリズナー率いる部隊に制圧され、敵のアーキテクターは残骸となって転がっている。

「これで、奪還作戦は完了だな」
「見なよ。前衛部隊のサブスタンサーも、けっこう破壊されずに残ってるぜ」
「アイツらの目的が、ここの制圧だったからだ」

「それならまだ、可能性あるんじゃないの」
「中にまだ、生存者が残ってるかも知れないよ」
「よし、手分けして生存者を探そう」

 セシル、セレネ、セリス、マレナ、マイテ、マノラの6人が、独断で壊滅した前衛部隊の捜索を始めようとする。

「イヤ、まだだ。完全に制圧が確認できるまでは、余計なマネするんじゃねェ」

「なんでだよ」
「コイツら、やっつけたジャン」
「仲間の命が、かかってんだ」

「甘ったれたコト、抜かしてんじゃねェ。戦場じゃ、一瞬の油断が命取りになる」
 反論するシエラ、シリカ、シーヤに、部隊を任せたプリズナーが言い放った。

「か、考え過ぎじゃね」
「そ、そうだよ」
「敵は全部、地面に転がって……」

「イヤ、プリズナーの判断が正しかったようだ」
 ボクは、セノーテの掘削された竪穴の天井を見上げる。

 そこには暗闇が広がっていて、赤い目がいくつも光っていた。

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