ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第13章・23話

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美少年のウワサ

「へへへ。あの真ん中の美人が、エレクトラさんなんだがよ」
「ペイトー女王とは幼馴染みで、だから女王に絶対の忠誠を誓ってるんだ」
 茹でダコのような顔をした、男のマー・メイディアたちの口が勝手に動いた。

「それにしたってよ。子供が何人もいるなんて、思えないくらいの若さと美貌だろ」
「親衛隊の隊長には、子供が居るのか?」
 紫色のドレスから覗く脚を、組み替えるキティオン。

「ああ、いるぜ。しかも驚きなコトに、アンタと同い年くらいの子供が5人もな」
「軍人気質を受け継いだそのウチの4人は、風の島クレ・アの女王として君臨しているんだ」

「わたしと同い年で、女王だと?」
 キティオンはわざとらしく驚くが、酔いが頂点に達しているマー・メイディアの若者たちは、それに気付かずに喋り続ける。

「ああ。クレ・ア島は、マー・メイディアの領土の飛び地の1つでよ」
「巨大な島の半分は、エレクトラさんの4人の娘たちが治めている」

「ならばもう半分は、誰が治めているのだ?」
「えっと、誰だっけ?」
「ミノ・リス王だったような」

「ミノ・リス王か。聞いたコトはあるな。強大な軍事国家を支配する、地上の人間の王だとか」
「ああ、クノ・ススを都とするラビ・リンス帝国だな。そこの将軍が、メチャクチャ強いんだ」

「だケドよ。ミノ・リス王は、ある美少年をめぐって、実の弟のサル・ペル王と戦争を起こした挙げ句、サル・ペル王を追放しちまったのさ」
「美少年が原因で、王たる者が戦争まで起こすとはな」

「オレも同感だね。やっぱ成熟した女性が、1番だよな」
「そう言う話では、ないのだがな……」
 キティオンは、バルガ王の母親であるメ・ドゥーサの事件を思い起こした。

「……その美少年、名前をなんと言う?」

「ケッ。けっきょくアンタも、美少年に目がないのかよ」
「これだから女ってのは、ドイツもコイツも美少年になびきやがって」
 美少年とは言い難いマー・メイディアの若者たちは、再びジョッキを空け始める。

「お前たちだって、努力すればまあなんとかなるだろう」
「ホントか?」
「ああ。それで美少年の名は、なんと言う?」

「ミトゥ・レスだっけかな。確か、そんな名前」
「なんでも当時は、ミノ・リス王たちだけじゃなくて、男女問わずあらゆる人間やマー・メイディアたちが、求婚しまくったらしいな」

 それからキティオンは、美少年ミトゥ・レスを中心に、若者たちから情報を聞き出す。
若者たちがテーブルに突っ伏して寝息を立て始めると、ベリュトスの居る席に戻った。

「どう言うコトだ、ベリュトス?」
「キティ、戻ったか。どう言うコトって、なにがだ?」
 周りに女性のマー・メイディアたちをはべらせた、幼馴染みが聞き返す。

「アラ。こちらのお嬢ちゃん、お知り合い?」
「ええ、ガキの頃からの腐れ縁ですよ」
「まあ、可愛らしいコト」

「フン、そうか」
 女性たちにモテモテのベリュトスに、テーブルにあったジョッキを投げつけるキティオン。

「おわッ。なにしやがる、キティ!」
「だったらせいぜい、愉しんでいろ!」
 紫色のドレスの少女は、酒場となったカフェを出て行った。

「ヤレヤレ、困ったコたちだねェ」
 その様子を、水晶玉に映して見ていた大魔導士が嘆く。

「アンタもイイ趣味だがな、リュオーネ」
「なに言ってるんだい。これも、アンタの母親の事件を解決するためじゃないか」

「母親の恋愛沙汰なんざ、今さら興味もないんだがな」
 バルガ王は、コテージのハンモックに揺られながら言った。

「そうかい。でもあのコたちのお陰で、かなりの情報は得られたよ。まずはクレ・ア島に、行ってみるべきかね?」

「オイオイ、当初の目的を忘れてないか。アンタは、カル・タギアとの同盟と交易ルートを開設するための、ヤホーネス王国の親善大使なんだぜ」

「そうだったね。すっかり、忘れていたよ」
 大魔導士は、シャポーでほくそ笑んだ顔を隠す。

 翌朝、バルガ王ら一行を乗せた波鎮め号(ウェーブスイーパー)は、ペイトー女王との約束通りに日の昇る前に出航し、オケ・アニスを後にした。

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