ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

キング・オブ・サッカー・第8章・EP013

f:id:eitihinomoto:20191113233812p:plain

事件の深淵

「もう1つ、聞いておきたいコトがあるんです」
 ロランが、言った。

「わたしもアンがどうして死んじまったか、答えが欲しかったんだ。1つだなんて言わず、ドンドン聞いてくれて構わないよ」
「ご飯、おごってもらっちゃってるしねェ~」

 ウィンデとマルデが容赦なく注文した料理の皿は、大半が空になっている。

「皆さんが出演されてたバラエティ番組で、サッカークラブに潜入した回がありましたよね」
「そう言や、あったな。アレ、珍しくキセラが取って来た企画だよ」
「確かアイツ、アン姉と2人で潜入調査してたよね」

「ウィンデはんたちは、出演してなかったんか?」
「最後の、ネタばらしのときくらいだね。潜入先が、小さなサッカークラブだったらしくてさ」
「アン姉が経理で、キセラが宣伝スタッフって名目で入ったんだ」

「確かにウチに、大勢のスタッフの人件費を払う余裕なんて無かったからな」
 ポツリと呟く、ロラン。

「なにか、言ったかい?」
「い、いえ。それより、撮影は順調に行ったんですか?」

「まあ、自分で取って来た企画だしね。普段に比べりゃ、順調だった方さ」
「賀野(がの)さんも、胸を撫で降ろしてたよ」

「賀野さん……とは?」
「そのバラエティ番組の、ディレクターでね。最初はADだったんだケド、途中から昇格したんだ」
「ADって確か、アシスタントディレクターのコトやろ?」

「そうだよ。前のディレクターが、数字が取れずに飛ばされちゃってね。でも賀野ッチが就任してからは、人気も上がって行ったんだ」
「やり手の方なんやな」

「ま、キセラをレギュラーに据えたってのが、1番の理由だケドね」
「だから賀野ッチ、キセラには甘々だったワケ。周りにも、チヤホヤされちゃってさ」
「キセラが起こした問題も、全てアンに怒ってたよ……賀野さん」

 ロランは、ウィンデとマルデの会話を、険しい顔をしながら聞いていた。

「悪いんだケド、壬帝 輝世嵐(みかど キセラ)……狩野 時世流(かのう ジゼル)が今、どこで活動しているのかまでは解らないよ」
「ヴァーチャルアイドルは、身バレを嫌がるファンも多いからね。ウチらもそうだし」

「ケッタイな世の中に、なってもうたな」
「ですが皆様の秘密は、遵守するであります」
 杜都は金刺にヒジ打ちをしたあと、敬礼した。

「今日は姉のコトで、色々とアドバイスをいただき、ありがとうございました」
 立ち上がって、頭を下げるロラン。

「止してくれよ。アンのヤツには、世話になったしね」
「ウチらも、面倒かけたしね。キセラほどじゃ、無いケドさ」
 4人の元アイドルは、寂しそうな笑顔を浮かべる。

「アンのヤツは、どこで眠っているんだい?」
「静岡の、海の見える丘の上の墓地です。海が、好きでしたから……」

「そうかい。ウチらも、もう少し稼げるようになったら、アンの墓参りに行くつもりだからね」
「詳しい場所、教えといてよ」
 マルデに言われたロランは、2人のパジャッ娘に姉の眠る墓地の場所を教えた。

 ロランたちは、元アイドルたちと別れてファミレスを出る。
真上付近にあった太陽も、それなりに傾いていた。

「ケッコウ有力な情報を、得られたんちゃうか。ロランはん」
「そうだな。少なくともあの4人は、姉貴を死に追いやるような人たちじゃない」

「では一体誰が、怪しいでありますか?」
「そりゃ、キセラったヤツに決まっとるやろ」

「どうかな……もしかすると……」
「どないしたんや、ロランはん?」

「イヤ、なんでも無い。それより、名古屋に戻ろう」
 3人は、赤い色の私鉄に揺られて、名古屋の巨大ターミナル駅に戻る。
ロランと別れた金刺と杜都は、雪峰たちと合流した。

「こちらは、例の少女から新たな動画を入手した」
「こっちかて、収穫大アリやで。な、杜都」
「犯人は、ほぼ確定したであります」

「そうか。詳しく、聞かせてくれ」
 名古屋のファミレスに集合したデッドエンド・ボーイズのメンバーは、集めた情報を精査し始める。

 その頃、ロランがチェックインしていたハズの駅前のビジネスホテルの部屋には、誰の姿も無かった。

 前へ   目次   次へ