ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第13章・18話

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交渉決裂

 バルガ王は、本当の母親の恋の経緯(いきさつ)を知った。
事実を知った王は、晩餐の席に集まったマー・メイディアたちに語りかける。

「オレの母親ってのは、オレの母親ってだけあって、ずいぶんと自由人らしいな。そのせいで、マー・メイディアにも、地上の人間にも迷惑をかけちまってる」

 カル・タギアの王の発言だけに、マー・メイディアたちもナイフとスプーンをテーブルに置いた。

「ペイトー女王。メ・ドゥーサの1件が、地上の人間との交流を避ける、主だった要因なのか?」
「そうです。仮にも姉は、王族なのですよ。それが地上の人間との恋に破れた挙げ句、あのような姿にされてしまったのです」

「メ・ドゥーサが醜い姿になった原因が、地上の人間側にあるってワケでもあるまい?」
「わたくしは、そう思っております。姉が飲まされた、薬の副作用といったところでしょうか」
 オケ・アニスの女王は、蒼い瞳を褐色の肌の大魔導士に向ける。

「普通に考えれば、わたしの責任ってコトになるだろうね」
「だけどリュオーネ。メ・ドゥーサは、薬を試作品と承知した上で飲んだんだろ?」
「たとえ解かっていたとしても、それを処方したのはわたしなんだよ」

「解りましたか、バルガ。姉を醜い姿に変えたのは、この女なのですよ。万に1つ違ったとしても、地上の人間の誰かが手を降したに違いないのです。それでも貴方は、地上の人間たちと交易を始めよう言うのですか?」

「ああ、そのつもりだ。オケ・アニスがムリなら、近くの他の拠点を探すぜ」
「残念です。貴方は、地上の人間に騙されているのですよ」

「ソイツはどうだかな、ペイトー女王。オレにはアンタの方が、誰かに騙されているように思えるぜ」
 王は、席を立った。
2人の側近も、それに従う。

「バルガ王。女王陛下に対し、あまりに無礼な言葉ではありませんか」
 防衛隊隊長のステュクスが、3つ又の槍を王に向けた。

「お止めなさい、ステュクス。ですがバルガ王、交渉は決裂ですね」
「らしいな。オレたちは、夜の海に放り出されるのかい?」

「貴方は、親愛なる姉の息子なのです。そのようなマネは、致しません。ですが夜が明けたならば……」
「わかったぜ。太陽が水平線から離れないウチに、出航しよう」
 バルガ王は、ペイトー女王と約束を交わす。

 それから王と2人の側近、リュオーネはアドメーテーに案内され、サンゴで造られた海底のバンガローに通された。

「本日は、こちらでお休みくださいなのです」
 タツノオトシゴの鎧を着た、ふわふわとしたアイシクルピンクの髪の少女が、勢いよく頭を下げる。

「アドメーテーと言ったね。アンタ、親衛隊の隊長を任されているんだろ。ペイトー女王に仕えて、長いのかい?」
「ステュクス隊長に比べれば、ぜんぜんなのです。槍の腕も、まだまだ修行が必要なのです」

「ペイトー女王は、実の母親である先代の女王から、直接アトを継いだのか?」
「いいえ、バルガ王。マー・メイディアは代々女王が国を治めるのですが、メ・ドゥーサさまの1件が問題となってしまって……です」

「つまり、問題を起こしたオレの母親であるメ・ドゥーサの、実の妹であるペイトーに女王を任せるのは、相応しくないって意見もあったってワケか?」

「も、申しわワケございません。わ、わたしの口からは、それ以上のコトは……」
 アドメーテーは、逃げるようにバンガローを出て行った。

「なんだかあのコ、秘密を隠しているようにも見えたな」
「確かにな、キティ。でもペイトー女王は、どうしてあそこまで地上の人間を拒んでいるんだ?」
 バンガローのハンモックのベットに腰を降ろし、幼馴染みの少女に問いかけるベリュトス。

「そりゃお前、自慢の姉を醜い姿にされたんだ。恨んでも、ムリは無いと思うぞ」
「そ、そうか。そうだよな」
 自慢の姉であるティルスを失った少女の心を、慮(おもんばか)る幼馴染み。

「どう思う、リュオーネ?」
「さてね。ペイトー女王の話も、一応は筋が通っているよ」

 褐色の肌の大魔導士は、複雑な表情を浮かべた。

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