ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

キング・オブ・サッカー・第8章・EP004

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監視者だらけのデート

「雪峰くんと連絡を取った結果、録画データを持ってる奈央さんの元に、今日の放課後に人を向かわせるコトになったよ」
 ボクに経過を伝える、オリビさん。

「亜紗梨(あさり)と言う人が奈央さんと親しいらしいから、彼に向かわせると言っていたね」
「え、そう……ですか……」
 オリビさんは優しく、ボクは少しだけなら会話ができるようになっていた。

 亜紗梨さん……奈央とはまだ、付き合ってたりするのかな。
料理教室まで尾行してから、なにも進展がないかと思ってたケド、どうなんだろ?

「ン、どうかしたのか。浮かない顔をして」
「な、なんでも……」

 ボクが静岡で、浮かない顔を浮かべていた半日後、幼馴染みの奈央は名古屋のファミレスで、亜紗梨さんと会っていた。

「ゴ、ゴメンね、板額(ばんがく)くん。いきなりこんなところに、呼び出してしまって」
 女性かもと思わせる美男子が、板額 奈央に声をかける。

「い、いえ、気にしないで下さい。こっちこそ亜紗梨さんに、たくさん料理を教えて貰っちゃってるので。最近、レパートリーが増えたって、自分でも思ってて……」
 栗毛の少女も、顔を伏せ頬を赤く染めていた。

「さ、先になにか、頼もうか。ボクは、アラビアータとドリンクバーかな」
「で、ですね。わたしは、パンケーキと、ドリンクセットで」

 ぎこちない会話を交わす2人が、テーブルの呼び出し装置に同時に手を伸ばす。
すると、2人の指先が微かに触れ合った。

「あ、ゴ、ゴメン……」
「い、いえ。こっちこそ、すみません」
 顔を真っ赤にした亜紗梨 義遠(よしとお)と、板額 奈央。

 他の席の客からは、初々しいカップルがデートをしているように、見えてるのかも知れない。

「アラビアータに、パンケーキ、それにセットドリンクが2つ。ご注文は以上ですね。ドリンクバーは、あちらにコーナーがございますので、セルフでお願い致します」
 マニュアル通りの台詞を告げると、呼び出された店員は帰って行った。

「さ、先にドリンクバーでも、汲んでこようか」
「は、はい」
 店員が去ってからの沈黙を、亜紗梨 義遠がなんとか破る。

 2人は席から立って、ドリンクバーのコーナーの方へと向かう。
奈央を先に行かせ、エスコートするように付きそう亜紗梨が、チラリと通路横の席を見た。

「……ゲッ!」
 6人掛けの席には、ピンク髪のチャラ男や、黒く日焼けしたヤンチャそうな男、いかつい筋肉に覆われた男に、金髪ドレッドの男、色白のクールな男に、タロットカードをシャッフルする男が座っている。

「な、なんでお前らが、ここに……」
「どうしたんですか、亜紗梨さん?」
「イ、イヤ、なんでも無いよ。ハハハ」

「わたし、メロンソーダかな」
「それじゃあボクは、アイスコーヒーでも……」
 そう言いかけた亜紗梨の隣には、いつもバックラインを組んでる2人の男が立っていた。

「龍丸に野洲田(やすだ)……なんで、お前らまで!?」
「な、なにか、あったんですか?」
「イヤイヤ、なにも無いよ。ささ、席に戻ろうか」

 2人は、来たときとは違う通路を通って、自分たちの席へと戻る。
その過程で亜紗梨は、メタボリックな2人のオッサンの姿も確認していた。

「注文は、まだ来てないみたいですね」
「そ、そうだね」
 お絞りで冷や汗を拭く、亜紗梨。

「頼まれていた番組の録画を、何枚かの円盤にして来ました。流石に番組の録画全部は、間に合いませんでしたが……」
 奈央は、ポーチから取り出した3枚の円盤を、テーブルの上に並べる。

「有難う、助かるよ。無理をさせちゃって、ゴメンね」
「い、いえいえ。お役に立てて、嬉しいです。それにカーくんが静岡に行っちゃった件も、関わってるんですよね?」

「そうなんだ。雪峰さんから聞いた話だケド、御剣くんは一方的に巻き込まれた感じでね」
「わたしも、その雪峰って人から聞いてます。なんでも、ロランって他のチームの人と、すり替わって連れてかれたんですよね」

 奈央の背もたれの向こうの席から、ノートパソコンの打鍵音が聞える。

「さっそく、雪峰さんに届けて来ていいかな?」
 亜紗梨 義遠は、ため息交じりに言った。

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