ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

ある意味勇者の魔王征伐~第13章・12話

f:id:eitihinomoto:20190914042011p:plain

高台の村の建設

 2人の優秀なアシスタントを得たリュオーネは、高台に建てられた簡易小屋を見上げていた。

「まさか半日で、事務所に家を3件も建てるなんて、流石の腕前だねェ」
 木組みのロッジ風建物の周りを、グルリと見て周る大魔導士。

「材料に倒木や流木を、使っているからね。耐久性までは、保証できないよ」
 山の民と翻意にしている、大工の集団の頭領が答える。

「アタイら流れの大工は、金さえ払ってくれんならどんな家だって建ててやるぜ。あっと、流石に材料は必要だがね」
 頭領は背の高い少女で、黒髪のポニーテールを大きな白い紐で結んでいた。

 切れ長の眼にオレンジ色の瞳をしており、目じりを紫色に塗っている。
胸元の開いた赤い着物を着ていて、靴と一体化したニーソックスを履いていた。

「しかし、大工の頭領が女だったとはな。驚きだぜ」
「女でなにが悪い。この祀里(まつり)サマをナメたら、痛い目見るぜ」
 大工の頭領は、大きな木槌をティンギスに向ける。

「わ、悪かったよ。そう怒るなって。アンタの腕前は、認めてンだからよ」
 ドレッドヘアの漁師は、後ずさりをして離れて行った。

「フン、まあいいさ。ところで海の王サマに大魔導士サマ。他にご注文はあるかい?」

「事務所と、作業員の寝る家以外か。どうだ、リュオーネ」
「拠点としては、十分だよ。今から村の設計図を書くから、意見をくれるかねェ」

「今からって……アンタ、図面が引けるのかい?」
「長年、研究者なんてモノをしているんでね。お手のモノさ」
 リュオーネは、切り株のテーブルに大きな紙を広げる。

「高台のこの辺りを、村の中心広場としたい。そこから山に向けて道を走らせ、なるべく木を残しながら民家を建てて行く感じでどうだい?」
 紙にペンを走らせる、リュオーネ・スー・ギル。

「それでも、何本かの木は斬らなくちゃいけないだろうね。今回の津波で、無事に見えても痛んでいる木もあるだろうから、見立ては長老にお任せするよ」

「ウム、任せるが良かろう」
 山の村の長老が、頷いた。

「あとは水源だね。ここは高台だから、水の確保が重要なんだ。ルスピナ、アンタの出番だよ」
「え、わたしですか、リュオーネさま!?」

「これも魔法の修行の1つだよ。ホラ、こうやって水を感じるんだ」
 リュオーネはルスピナの背中に立つと、手を重ねて目を閉じる。

「は、はい……リュオーネさま」
「どうだい、なにか感じるかい?」
「え、えっと、あっちに水を感じます」

「おやおや。修行もまだなのに、わかってしまうとはね」
 大魔導士は、見どころのある弟子に肩を竦(すく)めた。

「それじゃ、ホントに合ってるのか?」
「ああ。ちょうどあのデカい木の辺りさ。恐らく、地下洞窟に水が溜まっているんじゃないかね」
 バルガ王の前を横切りながら、魔導士は指し示した木の下まで歩いて行く。

「こっから、井戸を掘るんだろ。力仕事なら、オレたちの出番だぜ」
「船が陸に乗り上げちまって、漁に出られなくて鈍(なま)ってたところだ」
「部下たちも呼んできて、一気に掘り抜いてやるぜ」

 ティンギス、レプティス、タプソスの、海で鍛えられた大柄な身体を持った3人の漁師たちは、仲間を呼びに山道を駆け登って行った。

「仕事を得て、はりきってるね。まさに、水を得た魚のようだよ」
「悪いんだが、魔導士さま。アタイらにも、仕事を振ってくれないかい?」

「もちろん、そのつもりだよ。集落の建物の位置関係は、こんな感じでどうだい」
「なるホド。即席にしちゃあ、良くできているね。村の中の動線は問題無さそうだが、船を置く浜辺とをどう結ぶかが問題だよ」

「ふぉっふぉ。よもや魔導士サマのように、飛んで移動などできませんからの」
「これは、恥ずかしいミスをしてしまったね」
「地下洞窟への道を階段状にして、そこから真っすぐに彫り進めれば、浜辺に出られそうだよ」

「流石は、大工の頭領だね。祀里、アンタの案を採用するよ」
 リュオーネは、村の設計図に修正を加える。

 高台の村の建設は、こうして始まった。

 前へ  目次   次へ