ラノベブログDA王

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一千年間引き篭もり男・第07章・57話

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太平洋戦争の理由(ワケ)

「キミはボクに、独裁者になれって言うのか!?」
 21世紀生まれのボクにとって、それは常軌を逸した提案に聞こえた。

「民主主義だろうが、社会主義だろうが、独裁と同じでトップに立てるのは1人だぜ」
 プリズナーの言うように、日本の総理大臣もアメリカやロシアの大統領も、中国の首席だってその席に着けるのは1人でしかない。

「肝心なのは、その1人をどうやって選ぶかだ。大勢の人間が納得するコトが、大事なハズだ」
 1000年前に冷凍睡眠カプセルに納まるまで、未成年で参政権を持たなかったボク。
それまでに得た知識で、なんとか反論を試みた。

「民主主義が優れていると言いたいんだろうが、民主主義だって完全なシステムじゃねェぜ。参政権を持つ人間の数が、増えれば増えるホド、1標の価値は減って行くんだからよ」

 かつての少年兵が言う通り、10人で決めるのと1億人で決めるのとでは、1標の価値がまるで違う。
10当分したケーキなら有難いが、1億等分したケーキなんて誰も欲しがらないだろう。

「確かに、民主主義は完璧じゃ……」
「それにだ。多数の意見が、必ずしも正しいとは限らねだろ?」
 ボクの演説を、遮るプリズナー。

「民主主義ってのは多数の意見を、正しい意見てコトにスゲ替えてるに過ぎねェ。要は、少数意見のネジ伏せさ」
「そ、それは……」

「アンタの国だって、大勢の民意を得て、大国アメリカに戦争を仕掛けたんだろ。挙句がどうだ。圧倒的な国力差の前に連敗を重ね、国土は焦土と化し大勢の国民が命を落としたじゃねェか」

「戦争は、間違っていた。確かに当時の人たちの、民意だったのかも知れない。でも戦争に負けた日本は、それから……」

「アメリカの犬に、成り下がった。自分たちの起こした戦争が、間違いだったと洗脳されて……な」
 プリズナーは、ニヤリと笑った。

「今の時代じゃ、当時の大日本帝国はよくやったってコトになってるぜ。アンタの時代に世界に君臨した、アメリカやロシア、中国などを悪者にしたがってる、企業国家連合が書いた歴史(筋書き)だとよ」

「そんなコトに、なっているのか?」
 アメリカが悪の枢軸国になっていると、セノンから聞かされていたボクも驚かされる。

「歴史は、勝者によって書き換え(アップデート)られるのさ」
「死人に口なし……滅び去った国に、弁明権はないのか」

「プリズナーの言う通り、大日本帝国が再評価されているのは事実だよ。当時の大日本帝国が攻め獲った領土の多くは、それまでにヨーロッパ列強が植民地にしていた国々だからね」
 コミュニケーションリングで情報を得たのか、真央が言った。

「イギリスの植民地だったインドやマレーシア、オランダの植民地だったインドネシア、フランスの植民地だったベトナム……」

「大日本帝国は、これらアジアの植民地国を、欧米列強国から解放するとのスローガンで、領土を拡大して行った。もちろん、非難される部分も大いにあったケド、日本の侵攻が無ければ当時の列強諸国が、植民地を手放すコトは無かったとの評価が大勢だね」

 ヴァルナとハウメアも、1000年の時が過ぎた今の時代の評価を、ボクに伝える。

「思えば、第二次世界大戦の映像に出てくる戦場は、今の日本の領土より遥かに広い地域に広がっていた。そこまで戦線が、拡大していたってコトか」

「開戦当初の大日本帝国は、アメリカやイギリス、オランダなんかと戦闘をして勝って、次々に領土を拡大して行った。中国やインドからイギリス軍を駆逐し、オランダの提督が率いる連合艦隊も撃破しているぜ。もっとも、それが後に仇となるんだがよ」

「昔の日本は、アメリカとだけ戦争をしていたワケじゃ、無いんだな」
 1000年の時を経て初めて、第二次世界大戦での旧日本軍の戦いの呼称が、日米戦争ではなく太平洋戦争と呼ばれた理由を知る。

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