ラノベブログDA王

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キング・オブ・サッカー・第7章・EP047

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可能性の正体

「キミのお姉さんの1件に、シャイ・ニー事務所が本当に関わっているのか?」
 慎重に言葉を選んで、ロランに確認する倉崎。

「その真相を付き止めるのが、オレが名古屋に残った理由なんです」
 ロランの表情は、薄暗いマイクロバスの中では読み取れなかった。

「……名古屋になにか、手がかりでもあるのか?」
「炎上した番組に出てた、姉の同僚アイドルの何人かが、この名古屋近辺に住んでいるんですよ。まずは、地道な聞き取りからですね」

「だがアイドルグループは、すでに解散してしまっているんだろ。会ってくれるとも、限らんぞ?」
「まあ、そうでしょうね。そのアイドルの人たちにとっても、後味の悪い事件だったでしょうから」

 シャイ・二ー事務用による女性アイドルグループの運営プロジェクトを、結果的に中止に追い込んでしまった、ロランの姉である杏樹(アンジェ)の自殺。

「でも、会ってくれる可能性だってあります。彼女たちが、事件の手がかりを知っている可能性だって、あり得るんですよ」

「確かに可能性なら、どんなモノでもあり得るな」
「楽観的過ぎると、言いたいんですね……」

「ああ。可能性と言う言葉は、便利なモノだからな。可能性は無限大なんて言葉もよく聞くが、実際には無限大なんかじゃない」
「では、なんだって言うんです?」

「わかっていないだけだ。実際に可能なコトもあるが、ほとんど不可能に近いか、絶対に不可能なコトが大半だよ。それが、無限大の正体だ」

「不可能を可能にして来た貴方から、そんな言葉を聞くなんて意外ですよ」
 ロランはようやく、倉崎の顔を見た。

「そうでも無いさ。オレはサッカーに置いては、やれるコトとやれないコトを見極めて、やれるコトに最大限のリソースをつぎ込んで来たつもりだ」

「なるホド。貴方に敬語を使いたくなる理由が、ようやく解りましたよ」
「こっちは、ケッコウ迷惑なんだが?」
 2つホド年上の隣人に、苦い顔を向ける倉崎。

「そこは、貴方に学ばないと行けませんね。姉の自殺の真相と、サッカー。この2つだけは、絶対に譲れませんから」
 ロランは、敬語で返した。

「ロラン。キミが冷静でいてくれるなら、こちらも多少なりとも、協力できるかも知れんぞ」
 倉崎は、斜め後ろの席の2人に視線を投げる。

「改めてになりますが、オレはチームキャプテンを任されている、白峰 顕家(ゆきみね あきいえ)です。探したい情報があるのであれば、ネットである程度のコトは解ると思いますが……」
 黒髪に白い肌の、眉目秀麗(びもくしゅうれい)な男が言った。

「ボクは、紫芭 師直(しば もろなお)。占いなどを、たしなんでましてね。人の感情面などは、人並みよりは解ると己惚(うぬぼ)れているんですよ」
 もう1人の男は、甘いマスクに笑みを浮かべる。

「有難い申し出たケド、これはオレの問題なんだ」

「これだけ人を巻き込んで置いて、言えた義理ですか?」
「乗りかかった舟です。遠慮なさらずに、使ってやって下さい」
 デッドエンド・ボーイズの頭脳と言うべき2人は、言葉巧みにロランを納得させた。

「わかったよ、雪峰、柴芭。キミたちを、頼らせてもらうよ」
 少しだけ表情を緩める、ロラン。

「ではさっそくですが、ボクからいいですか?」
「どうした、柴芭。なにか、占いにでも出たのか?」

「ええ、倉崎さん」
 占い魔術師は、カードを起用にシャッフルしながら答える。

「占いの詳しい結果は省きますが、ロランさん。今のアナタが抱える問題は、アナタ1個人だけの問題では無いと思われますが」

「どう言うコトだ、柴芭。ロランの姉が所属していた、アイドルグループの問題だとでも?」
「それも関わっているに違い無いのですが、ロランさんに取ってもっと身近な存在のコトですよ」

 占い師の言っている意味が解らず、隣の席に目をやる倉崎。

「ヤレヤレ、柴芭。キミの占いと言うのも、大したモノだね」
 神妙な面持ちのロランが、答えた。

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